【設定資料】
■【発端】赤道事変と不可視の壁
赤道事変:今(2077年)から50年前に突如発生した謎の現象。北半球では男性全員が、南半球では女性全員が同時に絶命した(染色体による区別)。この瞬間、航空機の墜落や原発のメルトダウンが各地で発生し、人類文明は崩壊の危機に直面した。
ゼロ・シェル:緯度0度の赤道直上に現れた、目に見えない不可視の壁。電波や光、人間以外の動物は通過できるが、人間だけが通過できない物理特性を持つ。軍事攻撃や爆破でも一切の傷がつかない。
■【復興と現在】事変から50年後の世界
無人貿易と復興:南の男たちが石炭などの資源を掘り、北の女たちが電子部品を製造する分業体制を確立。事変から50年をかけて、かつての高度IT水準まで文明を引き戻した。
赤道経済圏:現在は旧時代の国境概念が崩壊し、電力が豊富で物資交換の拠点となる「赤道」にいかに近いかで繁栄が決まる。北の半導体・医薬品と、南の資源・食糧を、ドローン等の自動輸送ルートで交換する「無人貿易」が世界を支えている。
通信と娯楽:物理的な往来は不可能だが、スマホや高画質動画配信は完全に普及している。AR(拡張現実)が進化を遂げ、画面越しの家族と「食事」を共にするのが日常となっている。
■【生命と家族】人類存続のシステム
人口比率:北半球(女性社会)は約16億人、南半球(男性社会)は約1億人。
生命の継承:南から北へ精子が送られる。南には町中に無料の搾精ステーションがあり、国が本人証明をした上で瞬時に凍結し北へ送られる。
男児返還の掟:北で男児が生まれた場合、1歳の誕生日までに「ゼロ・シェル」を超えて南へ送り出さなければ絶命する。別れのトラウマを避けるため北では着床前診断で女児を選ぶのが一般的であり、男児を出産して南へ送り出した女性には、国から特権(ステータス通貨「マザー・リワード」)が与えられる。
新しい家族観:日常生活を共にする「同性同士の生活パートナー」と、種の存続のためにAR越しに交流する「生殖パートナー」の二重関係が定着している。
■【社会体制】対照的な北と南
北半球(女性社会):巨大なAIや少数の技術エリートが管理する「計画管理型の社会主義」。ベーシックインカムが導入された高度に自動化された静かな社会であり、人間の労働はバイオテクノロジーの研究や芸術などに特化している。食事は効率的で清潔なバイオ培養食が中心。
南半球(男性社会):自由競争をベースにした「熱狂的な資本主義・民主主義」。働けば働くほど豊かになれる実力主義で、独自の通貨が使われている。肉体労働や建設ラッシュに沸いており、最大の雇用産業は北から送られてくる1歳児を育てる「巨大な国営保育施設」である。食事はワイルドで高カロリーなものを好む。
■【文化と価値観】触れられない異性への熱狂
異性への認識:直接異性に触れた経験を持つ世代は80代以上の高齢者のみ。現在の若者にとって異性は「画面の中にのみ存在する、決して触れられない神聖な存在」である。
ツイン・シェル・アリーナ:赤道直下にある世界最大のエンタメ施設。壁を挟んで北(女性)のステージと南(男性)の客席が向かい合い、照明や生声の音圧が直接届く狂騒のライブが行われる。
ウォール・ロマンス:「1歳の時に南へ送られた男児が成長し、壁越しに遺伝上の母親や双子の姉妹と恋に落ちる」といった、究極のすれ違いを描く小説が王道のベストセラーになっている。
【主人公の家庭環境】南半球の異端な家族
主人公の御手宮タケルは17歳の男子高校生である。南半球の旧インドネシアにある日本人街で、42歳の父である英明と、81歳の祖父である隼人と共に暮らしている。
北半球にいる38歳の母の玲子と父の英明は、事実婚契約を結んでタケルと15歳の妹の芽衣を授かった。南半球では北から送られてきた男児を巨大な国営保育施設でシステマチックに育てるのが一般的だが、英明は国の保育システムを利用せず、自らタケルを引き取って家庭で子育てをしたというケースである。
タケルの祖父である隼人は、赤道事変の数少ない生き残りの日本人である。事変時にインドネシアの南半球に出張していたため生き残り、事変から7年後に自身の冷凍精子を北にいるタケルの祖母の詩乃まで届けてもらい英明を授かった。




