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超越者はただ静かに暮らしたい  作者: りーく/Leak
燃えぬは、草木の魂か
4/28

4話『廃教会の主』

「ここ…か?」


「ここっぽいな」


ボロボロの外壁に、枯れた蔦が絡みついている。

中央には、例の鐘が鈍く光を放っていた。


「よし! さっそく調査するぞー!」


……はあ、めんどくさい。


僕は重たそうな扉を押し開け、中に足を踏み入れる。

埃が舞い、空気はどこか湿って重苦しい。

得体の知れない気配が、そこかしこに漂っていた。


「気をつけろ。ここ……ただの廃墟じゃないぞ」


オーディンが声を潜めて警戒する。

足元の瓦礫を踏み越えながら、奥へと進むと──


ガサッ。


「なんだ!?」


突然、獣のような魔物が祭壇の陰から飛び出してきた。

その姿は、この世のものとは思えないほど醜悪で、

鋭い牙をむき、瞳にはあからさまな殺意が宿っている。


「戦闘開始だ、油断すんな!」


オーディンが剣を抜き、一直線に突っ込んでいく。

僕は何も言わず、立ち尽くしていた。


……驚いたわけじゃない。

ただ、戦う気になれなかっただけだ。

こんな雑魚に、魔法を使うのは勿体ない。


「ファルカ!? 手伝ってくれよ〜!」


……仕方ない。基礎魔法くらいなら、くれてやるか。


「ファイガー」


火の玉が魔物に向かって放たれる──が、

命中しても煙すら立たなかった。


(効いてる気配はないな。まあ当然か。僕のレベルは1。基礎魔法じゃダメージにすらならない)


「ウギャアァァ!」


オーディンの剣が魔物を貫いた。

どうやら、彼が仕留めたらしい。


「えっ!? 倒したのか?」


数発の攻撃で崩れ落ちた魔物。

だが、これはまだ“始まり”にすぎない。

そう──直感がそう告げていた。


「こんな場所に魔物が潜んでるとはな……」


「廃教会、案外手強そうだ!」


僕たちはさらに奥へと進む。

そして──あの鐘へと近づいた。


「これが、例の鐘か……」


「妙に輝いてるな」


高価そうな見た目だ。触れてもいないのに、胸騒ぎがした。

その時だった。


──ゴーン。


鐘が鳴った。

僕もオーディンも、誰も触っていないのに。


「な……なんだ!?」


「ふむ……」


次の瞬間、思考が濁り、意識が霞んでいく。

身体が重い。まるで、空間そのものが鈍く濁っているような……

これは、鐘の音の影響か?


「後ろだ! ファルカ!」


バサッ──風を裂く音。オーディンの剣が宙を斬る。

廃教会の“主”が現れたようだ。


「気を抜くなよ!」


「貴様に言われる筋合いはない」


その姿は、異様だった。

蝶のように美しい羽を持ち、

口元には、まるで何かを吸うためのチューブのような器官。


「……おそらく、こいつが記憶喪失の原因だな」


チューブで、調査隊の記憶を吸い取っていた──そう考えれば、説明がつく。


「よし! いくぞ、ファルカ!」


「……ああ」


解析を開始する。


――解析開始。


(種別:魔獣クラスB/属性:炎/防御構造:花粉膜/弱点:羽)

(対応完了――超越開始)


「さてと……」


「消えてもらおうか」


僕は地面を蹴り、魔獣へと跳びかかる。

魔獣は反射的に防御膜を展開し、僕の体を絡め取ろうとしてくる。


だが、それは意味がない。


「無駄だよ。僕はすでに、貴様を超えているからな」


羽を狙って、渾身の回し蹴りを叩き込む。

魔獣の羽が砕け、体勢を崩して地面に落ちた。


そこへすかさずオーディンが剣を振り下ろす。

剣は見事に魔獣の体を断ち切った。

魔獣は叫ぶ間もなく、黒い霧となって消滅する。


……どうやら、主は倒したようだ。


「おい! 見ろよ!」


オーディンが何かを見つけたらしい。

僕は彼の元へ駆け寄った。


「これは……」


そこには、見るも無惨な家畜の死骸。

身体はしぼんだように萎れ、ハラワタは無惨に抉られていた。


「これが、家畜失踪の原因か……」


「まあ! ともかくこれで依頼完了だな!」


結果はどうあれ、事件の真相を突き止めた。

オーディンも、少しは自信がついたようだ。


それなら、まぁ──悪くない。

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