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超越者はただ静かに暮らしたい  作者: りーく/Leak
燃えぬは、草木の魂か
3/28

3話『廃教会の鐘』

「俺が先に受けたんだ!」


「いーや違うね!俺たちが最初だ!」


全く、うるさすぎる。

最近はずっと森の中で暮らしてたから、こういう喧騒には慣れていない。


「なんだ、ただの依頼の取り合いか」


「おい!あんたら!」


オーディンが口論している冒険者たちに割り込む。


「なんだ?ちびっ子が」


「お前みたいなガキが受けるような依頼じゃねぇんだよ!」


オーディンはにやりと笑った。


「そいつはどうかな?俺、ギルドの認定ランクは【C】だぜ!」


「はっ、Cランクごときが調子に乗るなよ」


「そもそもこの依頼、危険度【B】だって話じゃねぇか」


「お前らじゃムリムリ。帰ってママの膝にでもすがってろ!」


「じゃあ、僕が受けるよ」


オーディンの背中から妙な気迫が滲み出る。

口喧嘩は得意じゃないはずだが、「勝負」となると別人のように変わる男だ。


……めんどくさい展開だな。

そう思いながら、僕はギルドの掲示板に目を向けた。



【依頼名】ベルツェ北東の廃教会調査

【危険度】Bランク相当

【内容】近隣の村で家畜の失踪が相次ぐ。現地では廃教会付近で異常音を聞いたとの報告。原因の調査および対処を依頼する。

【報酬】5000リル+成果に応じたボーナス



……ただの調査依頼じゃないな。


「どうする?やるか?」


オーディンが僕の顔を覗き込む。


「ああ、勝手にしろ」


どうせ巻き込まれるなら、早めに片付けたほうがマシだ。


「よっしゃ!じゃあ俺たちがこの依頼、受けまーす!」


ギルド受付嬢が目を丸くしてこっちを見た。


「え? 本当に……この依頼を?」


「俺、こう見えてギルド作ってるからさ。名義的には問題ないだろ?」


「た、確かに条件は満たしてますけど……」


「問題ない。こいつがいる」


僕を指差すな。


その場にいた冒険者たちは、オーディンと僕を交互に見て――


「……へっ、知らねえ奴らが潰されるところ、見物してやるか」


と捨て台詞を吐き、ギルドを出て行った。


「ふぅ〜危なかったな。でもチャンスだぜ、ファルカ!」


「何がだよ」


「ギルドに俺たちの名前を売るチャンスだ!」


……なんでこいつは毎回、やる気と元気だけは100点満点なんだろうな。


僕は静かに溜息をついた。


「よし!早速現場に向かうぞー!」


「いや、待て」


僕はオーディンの襟を掴んで止める。


「まずは情報収集が基本だろ。お前、本当に冒険者か?」


「えー、なんだよ、せっかくテンション上がってきたのに!」


「……突っ込むのは勝手だが、死ぬのは勝手じゃ済まないぞ」


「おっ、ちょっと心配してくれてんのか? もしかしてツンデレ?」


「黙れ、馬鹿」


僕は掲示板の隣にある、過去の依頼報告の閲覧用書類に目を通した。


「廃教会か……三年前に一度、魔物の巣として封鎖された跡があるな。以降は立ち入り禁止区域だ」


「なんだそれ。じゃあ、ほとんど人入ってないってことか?」


「ああ。魔物が巣にしていた形跡はあるが詳細は不明。封鎖して以来、調査の記録もない」


「じゃあ、ギルドの中の人に聞いてみようぜ。詳しい話、知ってる人がいるかもしれないし」


……まあ、珍しくまともなことを言う。


「受付嬢さん、さっきの依頼について詳しく知ってますか?」


僕が声をかけると、受付嬢の表情が少し曇った。


「ええ、あの地域……廃教会は昔から“呪われた場所”として有名でして。過去にも何度か調査隊が送り込まれたのですが……」


「戻ってこなかったとか?」


「いえ、全員生還しています。ただ……“何もいなかった”としか言わないんです。まるで記憶が抜け落ちたように」


……記憶障害系か。面倒だな。


「他に何かわかることは?」


「はい。最近、村人の間で“鐘の音”を聞いたという証言がいくつかありまして……それが廃教会の方向からだそうです」


「鐘……ね」


オーディンが珍しく真剣な顔で僕を見る。


「やべぇな。こりゃマジで“当たり”の依頼かもしれん」


「だったら慎重にいけ。今度はお前の骨を拾うのは僕しかいないからな」


「ハハ、安心しろよ。俺、タフだけが取り柄なんだ!」


「それが一番信用できねぇよ」


そうして俺たちは、再び街の外――廃教会を目指す準備に入った。


騒がしい街の喧騒を背に、僕の胸には一つの不安が渦巻いていた。


この依頼、絶対にただの調査で終わらない。


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