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超越者はただ静かに暮らしたい  作者: りーく/Leak
燃えぬは、草木の魂か
2/28

2話『街へ』

「でさでさ〜!」


うるさい。

いつもはクソ鳥の鳴き声で目を覚ますのに、今日はそれ以上にうるさいヤツがいる。


……なんで僕は、こんなヤツと一緒にいるんだろう。


「そういえば、お前さ、ギルドには入ってんのか?」


「いや、僕はそんなものには興味ない」


ギルド——冒険者に依頼を仲介し、報酬の支払いやランク評価を行う組織。

魔物の情報共有なんかもしてる、まあ面倒くさい場所だ。


もし僕が加入したら、依頼なんて山ほど来るだろうし、目立って仕方ない。


「なんでー?」


こいつは、どうして僕にこんなに絡んでくるんだろう。

他にも強いやつなんて、いくらでもいるはずなのに。


「うるさい。少しは静かにしてろ」


「えー、俺ら仲間じゃん!」


「もっと会話楽しもうぜー!」


……今さらだけど、こいつを同行させたことを本気で後悔してる。


「そうだな。お前はギルドに入ってるのか?」


「入ってるぜ! 俺が立ち上げたギルドにな!」


なんでだよ。

強いヤツがいるギルドに入ったほうが、よっぽど効率がいいだろ。


「もちろん、お前は俺のギルドに入ってくれるよな!」


「ああ、わかったよ」


反論するだけ無駄だ。

適当に相槌を打っておけば、満足するだろう。


「よっしゃ! じゃあ、俺の街に行こうぜ!」


「アイテムとかもいろいろ揃ってるしな!」


……めんどくさい。

わざわざ歩いて街に行くなんて、できれば寝ていたかったのに。


「はあ、わかったよ」


「よっしゃ出発だー!!」


オーディンの元気な声が森に響く。

そしてその十分後、僕はもうすでに後悔していた。


「なあなあ、そこの木、見てみろよ!でっけえよな!?」


「……」


「てかさ、魔物とか出てこねーかな? 俺、そういうの得意だし!」


「……」


「……なあ、聞いてる?」


「うるさい。黙って歩け」


——こうして、僕の平穏な日々は完全に終わりを告げた。


森の木々が開け、視界が広がる。

遠くに小さな城壁と、その内側に建ち並ぶ建物群が見えてきた。


「おっ、見えてきたな! あれが俺の故郷、『ベルツェ』だ!」


人の声、家畜の鳴き声、鉄と煙の匂い。

数年ぶりの“街”の空気に、僕は思わず眉をひそめた。


「ようこそ俺のホームタウンへ! さーて、まずはギルドに顔出すか!」


……頼むから、静かにしてくれ。

そう思いながら城門をくぐろうとしたそのとき。


「おい! そこの二人!」


城門の衛兵か?

できれば関わりたくないが、こいつらはなんで呼び止めてきたんだ?


「えっ!? 俺たち何もしてませんよー!」


バカ、それを言ったら逆に怪しまれるだろ。


「違う違う、さっき森の方からすごい轟音が聞こえただろ」


「君たちが森から出てきたから、無事かどうか気になってな」


……衛兵がまともで助かった。


「おう、なんか魔獣が暴れてたけど、俺が片付けといた!」


「……ああ、こいつに助けられた」


「え? あーそうそう、こいつが!」


衛兵の目が見開かれる。


「君が……ひとりで?」


……クソ、余計なことを言いやがって。


「ああ」


「す、すごいな……さすが冒険者……!」


「ただの一般人だ」


「えっ」


「じゃあ、通らせてもらうよ」


「ま、待ってくれ! もしよければ、ギルドに詳細を報告してくれないか?」


「最近あの辺りで魔獣が活性化していて、調査を進めているところなんだ」


「あーちょうど、今からギルドに行くとこなんだよ!」


オーディンが満面の笑みを浮かべて答える。


……まあ、そうなるとは思ってた。


僕らは門を抜け、街へと足を踏み入れた。


石畳の道、行き交う人々、威勢のいい商人の声、軋む荷馬車の音。

騒がしくて、でもどこか懐かしい——街の喧騒。


「いや〜、やっぱ街は落ち着くな! 森の虫の音もいいけど、この雑音が最高だよな!」


「……それを雑音って言うな」


「ほらほら、ギルドはこの先だぜ!」


やかましい声をBGMに、僕は中央通りを歩く。


すると、オーディンがふいに足を止めた。


「ん……あれ?」


彼の視線の先。

ギルドの建物の前で、数人の冒険者たちが言い争っている。


「なんだ、また喧嘩か?」


「いや……あれ、ギルド前だろ?」


オーディンの顔から笑みが消え、真剣な表情になる。


……面倒な予感しかしない。

そして僕の予感は、大抵、当たる。

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