18話『月光の下の大魔導士』
やっとだ。
連戦で疲れたが、ようやく目的の白い塔に着いた。
見えてからが長かったな。
「ここが…例の塔ですか?」
アリスがぽつりと呟いた声も、夜の静けさに吸い込まれていく。
「なんかすげー神秘的だな!」
ローディンの声も、どこか抑えられていた。
大声を出すと、この“静寂”に怒られるような――そんな錯覚に陥る。
それにしても、妙な気配だ。
夜の砂漠は少し肌寒い。
だが、それ以上にこの塔の周囲には、「時間の流れ」が異なるような違和感がある。
「怪しい雰囲気だな」
僕がそう言うと、ローディンは肩をすくめて笑った。
「そうだな!何かお宝あるかな!」
彼の無邪気な声が、塔に反響する。
――そのときだった。
カァァン……
金属のような、しかし鈴のようにも聞こえる澄んだ音が、塔の上から響いた。
見上げると、月明かりがまるで塔の先端を照らすようにして降り注いでいる。
「……なあ、あれって」
アリスが指差した先、塔の中腹に“窓”のような空間があった。
そこに――人影。
白い衣をまとった細身の人影が、確かに月を背に、静かに立っていた。
「誰か……いる?」
「まさか……あれが」
「大魔導士、ルーザ……?」
僕の胸がざわめく。
彼の名はかつて、世界にその名を轟かせた伝説の魔導士。
だが、その生死は不明。数百年前に消息を絶ったはずだ。
では、あれは何だ?
幻か、残留思念か――それとも、本当にまだ“生きている”というのか。
「行くぞ、二人とも。塔の中へ」
「了解!」
「お宝も見つけるぞ!」
こうして僕たちは、
月光に照らされる白い塔――その扉の前に立った。
静かに開かれるその入口の先には、
二体の石像がこちらを見据えるように立っていた。
その表情は、まるで「試すように」微笑んでいるかのようだった。
「……ルーザの試練か」
僕は剣に手をかけ、二人に呼びかけた。
「行くぞ、オーディン、アリス!」
「魔人斬り!」
「ヘルファイガー!」
火花と魔力が交錯する。
ルーザの塔に足を踏み入れた時点で、僕らの運命はもう決まっていたのかもしれない。
――残酷な運命と、“超越”の真実が待っているとは、この時、まだ誰も知らなかった。