13話『昇格試験:B』
悪の芽から何が生まれるか知ってるか?
それはまた、新たな悪だ。
どんなに目の前の災厄を断っても、根っこを枯らさなければ、悪は尽きることなく芽吹く――
俺たちは、まだその大本を知らない。
「僕はそこら辺の小さい生物を解析して情報を見てみるよ」
「了解!じゃあアリスは俺と探索だ!」
「はい!」
さて、久しぶりの1人だ。
この森も4日前とは大違いだ。
カサカサ
茂みの奥から生命の気配がする。
身構えつつ、茂みを観察すると…
カサカサ
リスだ、それもいつも僕の隣にいた。
「久しぶり」
少し嬉しかったが、その感情は不安へと変わった。
リスの体内から、ドゥーラの邪気を感じる。
おそらくドゥーラを倒した影響で、奴の魔力がこの森全体に広まっているんだ。
……風の音とは別に、微かな“脈動”を感じる。
森全体が、どこか呼吸しているような。
いや、まさか……森そのものが“生きて”いる?
「すまないな、僕のせいで」
全く、やはり僕は面倒事に巻き込まれる運命なのか?
ガサガサ
「なに!?」
グサッ
な…何が…
意識が…遠のいて…
♦︎
ガサッ
「なんの音!?」
「ファルカが行った方だ」
「何かあったのかも」
うう、何が起きた…
腹に温もりを感じる。
誰かに刺されたのか…
いや、ここには人はいないはずだ…
魔獣が…?
「ファルカ!?大丈夫か!?」
「今、治療するから!?」
アリスが来てくれたみたいだ…
僕が1人だったらと考えると…
「なんで木の根が刺さってんの!?」
「もしかしたらこの木が敵なのかもだぞ!」
木の…根?
なぜだ……まるで、意思があるみたいじゃないか……
「ファルカ!?大丈夫」
僕は体を起こした。
少し痛みは感じるも、だいぶマシになった。
全く、懲り懲りだよ。
なんて思っていると…
ギャオー
咆哮だ。
ふと後ろを振り返ると、そこにはドスカルチョが仁王立ちしていた。
「でた!?こいつがドスなんちゃら!?」
「ドスカルチョだ、忘れるな」
こいつを倒すことが、Bランク昇格の条件。
「行くぞオーディン、アリス」
「おー!いくぜー!」
さてと…
僕は傍観でもしているとするか。
「いや…」
「ファルカも戦えよー…ってうわー」
「メガファイガー!」
「油断しないで!オーディン」
「えへ、ありがとうなアリス!」
全く、やはりお前らは…
僕がいなくても十分戦えるじゃないか。