10話『《災厄の王》、降臨』
あと少し…
30秒だけなんだ!
「ファルカ!まだー」
「こっちも…大変」
待ってくれ…
こっちも…
だが弱点はわかった。
あと20秒
ウギャァァァァ
ドゥーラが吠える。
地が揺れる。
嫌な予感がしてきた。
「なに!?」
「地面から…何か!?」
轟音と共に、地面を突き破って現れたのは――
黒い、まるで柱のような一本角。
いや、違う。あれは――脚だ。
「え、まさか…ドゥーラって……!」
ドゥーラの身体が、ゆっくりと浮き上がる。
その巨体の下に、さらにもう一対の脚と、異形の胴体が姿を現す。
「第二形態……だと?」
(マズい。解析進行中だってのに、形態が変われば――)
(データが全部、リセットされる……!?)
【超越解析、進行度:2%に低下】
【新たな部位構造を確認。再構築中――】
「ふざけるな……!」
怒りが沸き上がる。
だが、冷静になれ。焦るな。今度こそ――超えてみせる…
いや、冷静になれるわけが…
そこに映るのはもはや絶望そのもの。
黒く染まった空を切り裂くように、四枚の翼が広がる。
雷のような音を立てて羽ばたくたびに、灼熱の風が吹き荒れる。
「でかすぎる……!」
「これが、ドゥーラの本当の姿……」
異形の胴体には、無数の目玉が浮かび、黒炎を纏った尾が地を焼いていた。
全身を覆う鱗はより硬質に進化し、もはや普通の攻撃では通じないことが明らかだった。
【新たな属性:重力・腐食を確認】
【ドゥーラ第二形態――“災厄の王”】
【対応難度:SSSランク以上】
「笑わせんなよ……」
膝が震える。
アリスは魔法の詠唱を止め、ただ呆然と空を見上げる。
オーディンの剣は、あまりの威圧に震えていた。
でも――僕は、諦めない。
(超越魔法は、まだ消えてない)
(あの3%のデータは、形を変えただけで消えてはいない)
「見つけたんだ。お前の核を」
「ファルカ……?」
「時間を稼いでくれ。次は、“本当に”決める」
アリスとオーディンが顔を見合わせ、うなずく。
「了解。こっちは任せろ!」
「絶対に決めてね、ファルカ!」
目を閉じる。世界が静寂に沈む。
そして――
「超越再構築――《ドラグ・ブレイク》」
放たれるのは、“核”を破壊するために最適化された一撃。
黒龍の心臓を、貫くための魔法。
これで…
なっ…
逃げ…た…
なぜだ、なぜそんな強大な力を持っていながら。
敵前逃亡を…