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観覧車

作者: 歌川 詩季

 最近乗った?

 一度 乗り込めば一周という刑期を務めあげるまで

 釈放されることはかなわない牢獄みたいに

 ぼくのことを言うやつもいるかもね


 そりゃあ 周回とちゅうで

 脱獄されるわけにはいかないから

 厳重に施錠させてもらうけど

 それはきみたちを

 危ないめに会わせたくないからであって

 自由を奪いたいからでもない


 その証拠にぼくの名前を思い出してごらん?

 ちゃんとその意味を考えたことってある?

 幽閉車でも監禁車でもない観覧車

 うすぐらくて灰色の壁に閉ざされた小部屋じゃなくて

 おおきな窓を張った手狭なゴンドラ

 空の旅を楽しめるファーストクラスには

 ほど遠くたってさ

 この眺めを楽しんでもらいたくて

 きみたちを乗せたぼくは ぐるっと一周してみせるんだ


 おっと もう釈放の時間かい?

 ご満足いただけたかな?


 刑期を務めて終えて

 施錠を解かれたゴンドラから降りるきみたちに

「もう戻ってくるんじゃないぞ」なんて

 おきまりの台詞をかけてやることもない

 何度もくりかえすようだけど

 ぼくは牢獄でも刑務所でもないんだもの


 むしろあえて こう声をかけさせてもらう

「またのおこしをお待ちしております♡」

 名前からすれば、景色を観るためのアトラクションなんですね。

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― 新着の感想 ―
最後に乗ったのはいつだったか…という感じですね。 観覧車にどことなく“牢獄”を感じてしまうのは、分かる気がします。
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