サンタさんの落とし物と、お空の散歩道
僕はお空を飛びたかった。
風船のお船で、大きな雲の海にプカプカと浮かびたい。
まぶしいまぶしいお日さまや、おっきなおっきなお月さまをお船の上から眺めるんだ。
お母さんはハイハイ、いつか行けるといいねって笑う。
へへーん、お母さんはきっと僕が子供だからってバカにしてるんだよ。
でもね────僕は知っているんだよ?
教えてほしいかい?
仕方ないなぁ、本当は秘密なんだよ?
あのね、サンタさんはね、お空をトナカイさんのひくソリに乗ってやって来るんだ。
だからウソじゃないんだよ。僕もサンタさんのように、みんなが喜ぶプレゼントを配ってみたかったの。
でもね、サンタさんのお仕事は大変だから邪魔しちゃいけないんだって。
いい子にしてないとプレゼントがもらえないから、サンタさんになるのはあきらめたんだよ。
そうしたらね、風がビュービュー吹いて、サンタさんの靴が落っこちて来たんだ。
ふわっふわ軽くて、わたあめみたい。でも空飛ぶ靴がないと、来年使うときにサンタさんが困るよね。
おまわりさんの所に行ったけど、パトロール中でいなかったの。
だから僕が落としものを、届けてあげようと思ったの。
「空飛ぶ靴で歩きたいのなら、神社の虹の橋を渡るといいわ」
どうすればいいか考えていたら、弁天様さまが教えてくれた。
僕は、お父さんとお母さんに頼んで、お正月に神社へお詣りに来た。
二人とも不思議そうだったけれど弁天様のいる神社へ連れて行ってくれた。
僕は神さまに御参りすると、虹が現れた。
僕はさっそくサンタさんの靴に履き替えるとフワッと身体が軽くなるのを感じた。
飛ぶ事は出来なかったけれど、お空をお散歩する事は出来たよ。
これならどこまでも歩いてゆける。僕はお空の冒険に旅立った。目指すはサンタさんの暮らすお空のお城。
虹の橋は踏む度に、パリンッパリンッと綺麗な音を響かせて消えてゆく。
迷子の風船さんを割らないように気をつけながら僕は虹の橋から飛行機雲の橋を渡り歩く。
寒い。息も苦しい。歩き疲れた僕は、震えて動けなくなってしまった。
お父さんとお母さんも見えないくらい小さい。僕は怖くなって泣いた。助けてと叫んでも、誰にも聞こえない。
「あら、せっかくお空の散歩に来れたのに、もうおしまい?」
「ごめんなさい。お家に帰りたい」
弁天様は宝船で僕をお父さんとお母さんの夢の中へ帰してくれた。
僕の脱いだ靴を抱えて泣いていた二人は、僕よりもっと泣いて、僕をギュッと抱いてくれた。
お読みいただきありがとうございます。
サンタさんの落とし物は、お空を飛びたいと願う僕への、クリスマスプレゼントだったのかもしれません。