キャラクリ終われど我、泥水を啜る
今日は、体調が芳しくないので一話投稿で勘弁してください。
『かつて、人は世界を「スキップ。」プロローグをスキップします。』
壮大な音楽とともにプロローグ的映像を見せられそうになったのだが、正直言って既に見ているのだ。
何と言っても公式直々にその映像を大手動画投稿サービスに投稿しており、当時は世界中の人々の注目を集めたものだ。
かく言う俺も例外でなく師匠に注意を受ける前に下調べとして映像解析を投稿者でもあるインターネットのお友達に委託したのだが結果を受けとる前に泣く泣く中止の指示を飛ばす羽目になったのだ。
まぁ、それはそれとして一緒に焼肉店に行き解析した一部を教えてもらったのだがどうやら「手蹴り」なる音声が小さく入っていたらしい。だからどうしたというものではあるのだが。
そうして、遂に!まあ厳密にはキャラメイクの際に一回体験していたのだが。
フルダイブした意識にキャラクターの身体の感覚が殺到する。身長などは操作性を考えていじってはいないのだが.....。やはり、なんとなく伸びをしたくなり目をつむったまま思いっきり息を吸いこんで、
俺は、思いっきりえずくことになってしまう。
「えっほ!、ゔぇっほ!!、おぇえええ!」
あんまりな悪臭のあまり、この世界での初めての行いがゲロを吐くというこのゲームの使用的に可能かどうかわからないが恐らく実装してるであろうなかなかどうかしている行為になるのはごめん被るのでせりあがってきたものを無理やり飲み込み、涙ぐんだ視界で辺りを見渡してみたのだが....。
なんということでしょう!先ほどまでいた清潔な空間から様変わりした、汚物や悪臭挙句の果てにはネズミまで伺える下水道ではありませんか!
いや、うん、覚悟はしていたんだ。なんか 出身:裏路地 のフレーバーテキストに不穏なものがあるから最悪初期スポーン位置がスラム的なものになるんじゃないかなとは考えてはいたんだ。
でもまさか、実際そうなってしまうとは。しかも、その想定よりも事態は悪化して下水道になるとは。
「これ、潔癖症の人ここに放り込んだらショック死するんじゃないか?」
そんなことを考えながらまず俺がしていたのは息を止めるのではなく、今度はゆっくりと鼻呼吸を意識してこの下水道のにおいになれることであった。先ほどはいきなり深呼吸なんかしてしまったから吐きかけたのであって、動物園のにおいになれるようにしばらく呼吸をしていけば不快ではあるが吐くようなことにはならないし気にならなくなっていくだろう。
「あー、うん。だいぶ慣れてきた、というより鼻が利かなくなってきた。それよりも、現状ステータスの確認をしておこう。」
ステータス画面を呼び出す。
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PN:クオン
LV:1
JOB:探険家
5,000マネー
HP(体力):67
MP(魔力):6
SP(持久力):64
STR(筋力):10
AGI(速度):20
VIT(耐久):5
DEX(器用):15
POW(精神):20
INT(知力):5
CON(生命):25
TEC(技量):10
LUK(幸運):20
スキル
・生存戦略
・キャプチャーウィップ
装備
左:探険家の鞭
右:探険家のナイフ
頭:なし
腕:なし
胴:古ぼけた厚着
脚:探索者のズボン
靴:古ぼけたブーツ
アクセサリー:なし
称号:なし
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言うことなし。なかなかいい感じのステータスに仕上がっていると思う。とにかく、生存重視の回避タンク型だ。HPやMP、SPの数字のキリが悪いのはしょうがない。
どうやらこのゲームそれらのステータスはポイントで割り振る以外に別途追加の計算式があるようで、一切割り振らなくても30以上の数字になるようだ。
あっ、ちなみに俺は魔法系統の能力は取るつもりが一切ないのでむしろMPに関してはマイナスにして
余ったポイントをHPやSPにまわしてある。
ちなみに、マイナスにできるのは先ほどの最低保証のあるステータスだけでSTRとかはできなかった。
恐らくだが、オワタ式のようなプレイヤーもいるのだろうな。流石に、そこまで尖った構築には手は出さなかった。それでも、俺自身が満足しているので問題ないのだが。
とはいえだ。流石現代のオーパーツのあだ名を持つゲームだ。先ほどの吐き気やその際の生理的反射による涙の感覚まで現実のそれにおとらないものだった。現実にはないステータスの影響もあってか、細かな動作に差異こそあれ自然に動かせる。
「にしても、どうしたものか。」
恐らくだが、システム上こんなところにスポーン地点があるわけでなく一度死亡すれば本来の初期スポーン地点に飛ばされるはずだとはおもうのだが.....。
「新しい世界で、見たことのない場所。探険しないとナンセンスだろ!」
そう意気込んで、俺は早速行動を始めた。しかしながら、ここは地下で目印と呼べるようなものがないのだ。
そのため、初期装備であるナイフで苔に後をつけて探索を開始したのだが....。
最初の曲道を曲がってすぐ目の前にそれがいた。
「ゔぁあぁー」
探険家であるクオンはかび臭くかつ腐り果てた肉の香りを漂わせて何かを、いや初期装備の服装からして間違いなく自身と同じである探索者の死体を貪る悍ましい人の形をした動く肉塊を見た。1d2/1d4のSAN値チェックを......
はっ、意識が別ゲーにとんでた。いやまあ、とは言ってもこんな風にふざける余裕ができてるしなんで恐らくプレイヤーの亡骸がそのまま残っているとか気になることはいろいろあるのだが。
ゾンビかぁ。記念すべき初遭遇のモンスター、ゾンビかぁー。
「ないわー。頑張れば近しい見た目のものが現実で見れるのに.....ないわー。」
しかも、倒したところでゾンビのドロップって売れるものなのか?まったく、メジャーオブメジャーなゴブリンとかスライムとかじゃなくてゾンビかぁ。グチグチ言っても仕方ないし幸い意味あるのかわからん食事に夢中だから気づかれていないから不意打ちしてボコろ.....。ん?
ジーーー
「あっ、どうも。失礼しましたー。」
「ゔぁぁああああ!!!!」
「ですよねぇ!!!」
そうして、ちょっとした追いかけっこが始まったのだが....。いやー、序盤の雑魚MOBかと思ってたけど結構早いねぇ!あと、思ったより迫ってくるゾンビ怖いぃい!しかしだ。走り回って迷子が悪化するのは困るし正直言って自身のステータスのおかげか思ったよりも冷静でいられる。な、の、で!
「転べオラァァ!!」
鞭の初期スキル:キャプチャーウィップ!そう、スキルを発動する意思を込めて鞭を振るうと鞭がエフェクトを纏い素早くゾンビの足に絡みついた。
当然ながら、走っている最中に足がもつれるとどうなるか..。結果はこうなる。
「ヴぁっ!?」
どごべちゃあ。効果音に直すとこんな感じだろうか。そんな盛大に湿り気を帯びた音を立てながらゾンビはすっころんだ。
ゾンビは突然のことで混乱しているのかわからないがもぞもぞと起き上がろうとするが、流石にそんな隙を見逃す俺ではないのだ。勢い良くゾンビに向かっていき正直気持ち悪くて触りたくないがあいにく鞭はゾンビの足にまだ絡まっているのでこうするのだ。
「ほっと」
倒れ伏しているゾンビに馬乗りになり右手にナイフ、左手は拳骨を作りぃ、ゾンビの首を一点集中して滅多刺しと滅多打ちをかますのだ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ.....あらぁ?」
そうしているうちに首が取れてゾンビが動かなくなった。レベルアップのアナウンスがなかったので倒せたかわからないがとりあえず無力化には成功したようだ。恐らくだが、このゲームはドロップアイテム型ではなく剥ぎ取り型らしい。そう思って、初戦闘の戦利品としてとりあえずゾンビの死体?を引きずって出会った場所に戻ることにした。
そういえば、推定プレイヤーの死体から装備剝ぎ取れるのかな?そう思いながら。