凪払う舞台風 其の八
暫く巨大化したルティカの手のひらの上で揺られること一時間。
耳に届く情報は地響きや吹雪ゆえの風の音、そして十五メートルほどの巨体とカンストレベルのステータスや重量が重なり弾き飛ばされていくレベル百越えのモンスター。
そして何よりも、俺の印象に残ったのは…。
「うっぷ…。」、「おろろろろろろろ」、「.............。」
「........とりあえず、皆が回復するまでは会いに行けないから暫くここで休憩することにしようか。」
ルティカが俺たちの様子を見て、申し訳なさそうにそう提案する。ありがたい申し出だ、情けないというか俺自身も含めた三者三様の吐きかけている様相である。........いや、言い訳をさせてもらいたい。元々俺は乗り物酔いとかはない体質ではあるのだが、考えてもみてほしい。
人間の縮尺をおよそ十倍になったと想像したとき、普段は気にもとめてはいないのだが歩いた場合人はある程度上下に動くのだ。つまりその揺れが十倍規模で、なおかつカンストステータスで走っているのでそれはもう視界はぶれっぶれ。三半規管はぐちゃぐちゃに侵されまともに立ってはいられない。
短時間であるならばあまり気にはならないけれど一時間ノンストップは流石にキツイものがある。
「えっと、クオン君…。大丈夫ですか?気分がよくないならポーションでも…。」
「ありがと…。でも気にしなくていいよ、少し横になればすぐに治るし…。それにアティカちゃんと妹の方が重傷だからお願いできるかな…。」
「はっ、はい!」
俺がそう返事をすると物凄い勢いで方向転換して他のグロッキーになってるメンツの介護に向かってくれた。にしても、このアバターの身体吐き気こそ感じるけど吐かないんだな。流石に糞尿とかと一緒で描写する必要なしと判断したのだろう。
開発者には、ナイス判断と賞賛を送っておこう。でないと今ここはもっと酷い地獄絵図になっていたに違いない。
「すまない、最高高度周辺は揺れにほとんど気を払えるほど余裕がなくて揺れてしまった。」
「そういわれると運ばれている俺は何も言えないし、言うつもりもないから気にしなくていいぞ。ってかあれだけ揺れまくっていたのにけろっとしてる方がおかしい側だぞ。」
「そういってもらえると助かる。話は変わるがポーションを飲んでおく方が多少気はまぎれるし生理的反応が原因である状態異常は回復こそしないがほんの僅かだけ緩和されるから得だ。」
「まじで?」
状態異常に関してもだが意外な仕様が多いなホント。早速アドバイス通りに飲むことにした、こんなことなら素直にクレイハートさんの世話になった方がよかったな。申し訳ないことをした。
実際飲んでみたが、なんか若干ましになった気がする…。
「にしても、まさか頂上がこんな別世界だとは…。」
レベル百越えのモンスターどもがひしめきあい、凄まじい吹雪を抜けて頂上へたどり着いた先は全く風が吹き込まず寒いどころか温かくも思える真っ黒な穴がある窪地だった。
さらに横たわって回復に当たっているので顔を横に向ける必要もなく体に触れている芝のような草たちが余計この場所の異世界感が強く感じられるだけでなく、吹雪などを遮断しているであろう結界(多分)が芝が生えているかいないかではっきりと見えている。
「ふう、まさか巨人サイズの鎧に牽引されて迎撃することになるとは…。」
横たわっている俺に近寄ってくる姉さんがそんなことをこぼしつつ、俺とは違った原因でグロッキーになっているであろう部長たちを担いで話しかけてきた。
「........とりあえず、護衛ありがとう。それと部長たちおろして休ませてあげてね?」
「はーい!」
俺に感謝を告げられたのがうれしかったのか元気のよい返事を返しながらポイっとごみでも捨てるかのように部長たちを地面へと放り投げた。そのあと、俺にダルがらみを仕掛けてきそうだったので妹の方がいいよと生贄して俺は妹の方に手をワキワキさせながら向かっていく姉さんを尻目に地面とキスする羽目になったなんかここだと不憫な目にあっている部長たちに話しかけることにした。
「ぶちょー、迎撃お疲れさまでした。」
「ああ、全く本当に疲れたよ。乗せれるとこがないって理由であんなそり?に乗せられ、弾き飛ばされたり後ろから追いすがってくる奴らを打ち落とし続けるとかたまったもんじゃないよ。」
「必要な役割であるのは頭では分かっているつもりなんですけどね?つらいものが在りますよ、とは言ってもクオン君の姉さんの訓練よりはずっと楽でしたけども…。」
「本当に、姉が申し訳ありません。」
そんな風に各々誰かとしゃべったりしながらこの緩やかでどこか恐ろしくもある窪地で俺たちは休憩を取って十分ほどたちそろそろクエストを受注するために移動を再開することにした。




