酒を飲み夜を明かす。
「「かんぱ~い!」」
えっ?いったい何をしてるかだって?せっかく酒場に来ているんだ、酒盛りに決まっている。
何なら、このゲームにおいて酒は状態異常:酩酊にかかるだけのジュースも同然であり飲酒をしたって何ら一切問題などあるものか。
「意外と酒、いける口なんですね。」
先ほどまでの無表情が嘘のようにコロコロ変わっていく様は楽しいものがあるが…。残念ながら俺に幼女趣味は全くない。ノーマルである。
「ひいじいちゃんとこの神酒を一口飲んだことがあるだけだけど、果実酒ってあんまりジュースと変わんないし飲みやすいぞ?」
「ああ、そういう意味じゃなくてあんまり酔わないんですねぇ…。侵食に耐える人材は肉体的にも影響があるもんなんですかね?」
「俺が知るわけないだろ。」
「まあ、そうですね。お互いに生まれたてのガキみたいなもんですからね。」
「見た目的にも相違ねえや。」
「「わはははは!!」」
そんな風に俺たちはしばらく適当に作ったり買ってあった食料をつまみにしながら空き瓶を増やしていった。
「なあ、アナボスぅ…。そういえば何でそんなヤバい恰好をしているんだ?」
「半裸のあなたには言われたくはないですけど…。まあ、しいて言うなら着るものに頓着してないだけですね。酒飲むと熱が籠ってしょうがないし、案外快適ですよ。」
うーん、実に適当で頭の悪い会話だ。というより、服乾かしたまんま装備すんの忘れてた。他に見ている奴がいなくて助かったな。忘れないうちに装備しておこう。
「全く、私には姉と兄が合わせて12人いて私はその中で末っ子なんですよねぇ。みんな自分たちの仕事を誇りを持ってやっているようですけど真面目にやるだけあほらしいですよ。」
「うん?仕事ってこの店の運営だけじゃないのか?」
「あはは、この店の仕事なんてようやくできたばっかりですよ。貴方のサポートですねぇ。と言っても今できることなんてないですけど…。普段は中間管理職みたいな処理ばかりですねえ。いつか、すべて無駄になることをひたすら積み上げて虚しいだけですよぉ。それならわずかな未来の希望を見据えたりせずに今日1日頑張った!ってこうして酒でも飲んでいる方が有意義ですよぉ。」
「あー、俺はアナボスの苦悩を見てきたわけじゃないしこの世界のことに詳しいわけじゃないけど虚しいこと考えたって虚しいだけってのは分かるな。」
「そうですねぇ。」
時間を見てみるとそろそろ夜明けが近づいてきているようなのでかたずけをすることにした。にしても、リットル単位で飲んではいるっぽいが恐らく貪喰剛健のスキルのおかげだろう。酩酊の状態異常に掛かっていない。かかってみたかったのだが残念だ。
「じゃあ、また門とやらが開いたときは頼むわ。」
「ええ、その時は頼みますね。貴方の気に入った酒は今度入荷しておきますよ。」
何というか、こいつ徹底して酒のことしか頭にないじゃないんか?いやまあ、あのはちみつ酒めっちゃおいしかったけどさあ。
「まあ、そん時はもっと旨いつまみでも買ってくるさ。」
「ええ、それではまた。」
俺は後ろ手に手を振りながら酒場から離れていった。
「すまん、この空間からの脱出の仕方を教えてくれ。」
「あー…。」
何とも情けないことに、この空間からの脱出の仕方を教えてもらうのを忘れて直ぐに出戻る羽目になっりお互いに気まずい空気になったのは全くの余談である。
ちなみに、アナボスはクオンより何百倍も年上ですね。




