急転直下
短くてちょっと不満だが切りのいいところがここしかないので許してください
ザーザーと目の前で雨が音を立てている。
あの後、おっちゃんと別れて防具の耐久値の回復を防具店にお願いしに行って外に出で見たら結構な雨が降っていたのである。
生憎、これから試し切りのためゴブリンがいると聞いた平原へ向かおうとしていたのだが雨具は持っておらず…流石に雨の中特に急いでいるというわけでもないのに濡れるという趣味はないのでどうしたものかと考えてうなっているとふと数時間前に考えていた内容を思い出した。
「そういえば、下水道は今どうなっているんだ?仮にも水道って名前なんだし、それにこのブランの都市機構的に雨が流れ込む構造があってもおかしくはないだろうし。」
よし、ということで、俺は地下ならば雨に降られる心配もなく雨の時の下水道の様子を見に行くがてらゾンビどもを相手に試し切りをすることにした。
「おお。凄いな…。」
正直に言えば流石に大雪などの特殊な天候でもない雨で探索エリアの変化が確認できるとは期待していなかったのだが少々侮っていたようだ。
大雨というわけではないので通行できる箇所が減るほど水面が上昇してあふれているということはなかったのだが、前回見た時のように淀んだ水面がドロッとうごめいているのではなく結構な速度で水が流れている。
ちなみに、今気づいたことであるがブラン側の地下水道の水面の方が幾分か綺麗に感じる。まあ、先生が言うにはルージュ側から汚水が流されていると聞いているから離れているこちら側がきれいに感じるのが当たり前かもしれないが。
それはそうとして、多少なりとも透明さが見受けられ、かつ降水による水の循環の影響もあってさらに水が澄んでおり先生がかつてここはもっときれいだのなんだの言っていたが案外本当のことかもしれないほどの光景であった。
「にしても、音も凄いな。」
水の音が反響しているのかわからないが前来た時には聞こえなかったどこか澄んだ音も聞こえる。
そんな風に、普段との差異を楽しみながら進んで行きしばらくしてゾンビたちと遭遇した。
「うーん、人肉バーベキューを思い出す顔だなあ。それはそれとして、せっかく蛇腹剣なんだから剣で戦えた方がいいよな。」
後から考えると、そんな風に余裕かまして油断していたのがいけなかったのだろう。
新品ピカピカの異相の蛇腹剣を剣状態で構えてとりあえず大ぶりの袈裟切りをしようとしたのだが、いつもより水量が増して地面が滑りやすくなっていたのだろう。思いっ切り踏み込んだ足はズルりと滑り俺はバランスを崩してしまった。そのまま、バランスを立て直そうとしてわたわたしてしまいいつの間にか水面の近くへと寄ってしまった。
「あっぶな!落ちるとこだっt」
そうして、立て直しきる直前にゾンビが俺の方に突っ込んできて俺とゾンビは仲良くもつれた状態で勢いよくどこかへ流れている水面へダイブしてしまった。通路に上がろうとしてもゾンビが絡んでうまくいかずに流されていき、溺れそうになりながらも冷静さを取り戻しようやくゾンビの首を水中ではねて引き剝がすことに成功し通路へ上がろうとした次の瞬間、俺の身体は宙へと投げだされておりちらりと見えたのは下が暗くて見えず、あちこちから水が注がれ下が暗くて見えない巨大な大穴だった。
俺が咄嗟にできたのは、即座に武器だけでなくガスマスクを除いたすべての防具をインベントリにしまい込むことだけだった。




