喉元過ぎた爆発オチ
現在俺はブランで寝泊まりしていた宿にいる。一応、もう一体の岩の巨人を討伐し終えた状態であるのだが正直止めとけば良かったと心底思う。
「まさか、コアをブッ叩くと自爆するとか聞いてねぇ…。」
俺は、やるせない気持ちに包まれながらそんなことを呟く。
岩の巨人の最後っ屁を超至近距離で食らった俺は耐久型のビルドとはいえ、流石に耐えられる訳もなく木っ端微塵にされていまい結果としては相討ちということになってしまった。
一応、暫く待ってみて経験値が入ったので倒せたことを確認したので相討ちという結果が分かっている状態だ。
ちなみに、このゲームデスペナルティが存在し一時的にステータスが割合で低下するというものである。アイテムロストとか、経験値の没収とかでなかったので結構ほっとしている。
「くっそ、妖怪イチタリナイに怯えすぎて死ぬとか。情けねぇ~。」
でも結果的に見れば、最低限のドロップは回収済み。かつ、結構時間のかかるエリア移動をデスルーラで省略出来ているのだ。結果としてはプラスだ、そう思うことにしておこう。うん、そうしよう。
全身に残っている身体を吹っ飛ばされた感覚が残って痺れて動きずらいのはご愛敬だ。
「にしても、あれだけの火力を食らって破損していないこの防具本当にスゲェな。耐久値が三割しか削れてない。」
爆発が、衝撃というよりはナパーム弾形式の燃焼系だったのが要因にもあろうがそれでもである。
「フレーバーテキストにも書いてある素材となったスライム系列はそれだけ物理耐久に優れているのか。先生が処分に困るというのも納得?」
いやでも、ドラゴンも単騎で倒せるランクについている人なんだ。あの爆発程度の火力なんて容易く上回れそうなものだが…。
「それは、それとして今度から遠距離で…。少なくとも中距離からコアを攻撃する方法がいるなぁ。」
流石に二体とも特殊個体とかどんな確率って言うものだ。あいつら岩の巨人系列はコアを攻撃される際には近距離攻撃に対してカウンターとなるギミックを持っているに違いない。
「とにもかくにも、デスペナ解除を待つのに何もしないというのもあれだから武器屋のおっちゃんとこに行くのが合理的だな。」
そうと決まれば、俺は早速おっちゃんの所に手に入れた成果を見せびらかしに行くことにした。人間、成果を褒められるのが結局メンタル回復にはいいものだ。
ゴロゴロゴロと、鈍い音をたてながらおっちゃんの用意してくれた素材置き場に俺はとりあえず確保してきた鉱石を並べることにした。
「おいおい、随分採ってきたな。どれだけ倒してきたんだ、お前さん?」
「なんか、呆れられている気もするが…。そんなに多くは倒してないぞ?デカブツ一体弱と細かいのを五、六体だ。」
「よく生きて帰って来れたなぁ、お前さん。それにこの量確保してきたってこたぁ、コアぶち抜いてきたのか。命知らずだな。」
「えっ?」
詳しいことを聞いてみると納得した。本来おっちゃんが想定していたのは、ちっこい奴等のことであの巨人の方は遭遇したら基本的に逃げるんだとか。
何でも、純粋に強い上にコアを潰さないと倒せない程にしぶとく、何ならコアを露出させてもコアの原料となる鉱石次第では純粋に硬すぎて砕けずに倒せなかったやつ。
何からのガスを噴射するものもあれば過去に一度だけ青白い光を放つ個体が降り遭遇したものたちは皆惨たらしく死んだそうな。
そういう事情もあり、基本的に巨人にあったらすぐ逃げろが一般的な常識なのだとか。
「無知って怖いなぁ…………。」
毒ガスは遭遇したし何なら爆殺されたし、青白く光るやつとかほぼ間違いなく放射線だろ。俺がそんな風に遠い目をしていると全くだとおっちゃんの説教をくらう羽目になった。
正直、正論ばかりでぐうの音もでねぇや。
「ったく…。これで死なれたら俺が殺したみたいになるじゃねぇか。」
いやはや、全く持ってその通りで何ならもう死んでここに来てるんですけどね?凹むわぁ~。自業自得でもあるけど、やっぱ凹む。
「でも、結果としては上々どころじゃねぇぞ、お前さん。こんだけありゃ殆ど何でも出来るぜ。特にこれなんて鍛冶やった奴なら間違いなく垂涎ものの鉱石だ。売れば、単体で10万は下らん。」
うん、なんかそうやって下げて上げられると凄くメンタルに効くわぁ。我ながらチョロいな。
そうして、結構量が多くて整理するのが面倒でアイテムテキストを見ていなかった差し出された透き通って真っ黒な鉱石を改めてみる。
・コロラドアイト純魔結晶
希少鉄鉱と有毒な流体銀色魔鉱が複雑に混ざりあい奇跡的な比率で形成されている結晶体。
未熟な腕のものが扱えば担い手すら殺しうる諸刃の武具となり、一流が使えば如何なる状況に適応しうる柔軟な武具となるだろう。
なんかすごいこと書いてんな。
「それと、これもだ。丁寧に扱えよ…。衝撃を与えりゃすぐさまここは地獄になるぞ。」
そうして、物騒な物言いと共に何故か鉱物にあるまじき拍動している赤黒い鉱石を渡してきた。
・赤燐黒琥珀
恐らく古代期に生成された琥珀。
琥珀は本来過去の記憶を内包しているものだがこの琥珀の中は黒ずんだ硝煙が渦巻いているように見えるだけでその正体はよくわからない。
しかし、確かなことがある。これを雑に扱おうものならば辺りを焼き尽くすだろう。
「これらって、もしかしてあいつらのコアの鉱石か?」
「おう!コアの鉱石は滅多に採れるもんじゃないから、二つも手に入れたお前さんは本当に強運だと思うぞ!」
ちなみに、他の鉱石たちは可もなく不可もなく普通の鉄鉱石と変わらないようなものばかりらしい。
「いやはや、ホントにすげぇことなんだ。正直に言ってこれをまともに扱える奴すらそうそう見つかんねぇレベルのもんだ。」
え?それじゃあせっかく手に入れれたのにお預けってこと?
「そして、俺はそれをこのわずかな量ならばギリギリ扱える。」
どうする?そう、おっちゃんは俺に提案してきた。今、おっちゃんに任せて力の一端を引き出せる武器を作るか、どれくらい時間がかかるかわからないがもっと腕のいい奴を見つけたうえで十全の力を引き出した武器を作るか。悩むまでもないな。
「おっちゃん、一番いい装備を頼む。」
おっちゃんは想定外だったのか目を見開いて俺を見てきた。
「理由は?」
「俺の勘。」
俺の返答を受けてしばらく下を向いて黙っていたと思ったらいきなりおっちゃんは、はっはっはっはっは‼と、おかしそうに爆笑した。
「ほんとに面白いなぁ!お前さんは!いいぜ、一番いい奴を作ってやる!」
そう、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべていたので俺もなんとなくニヤリと笑い返した。
ちなみに、もともと堅々轟々の廃坑回廊では小さな村が入口辺りにいくつか点在して鉱石を回収してはブランで売りさばくといった時期があったのだが青白く光るコア持ちの影響で村が全て惨たらしい結末を迎えたため現在では村はすべて破棄されている。




