家事妖精の憂鬱
短めです。十の倍数の話はなんか外伝みたいな感じにしていくつもりです。
あと、そろそろ名前を最終決定しようと思います。一週間後に変更する予定なので、この作品を探すときは作者の名前にしておくといいと思います。
「♪~」
現在、この家の住人たちがベッドで電脳世界に旅立ち夏の暑さのためにつけられている扇風機やエアコンなどの家電の音そして外からの人の声以外に水音と鼻歌が聞こえてくる。
その歌の主は朝に発生したわずかな食器を手際よく食洗器に放り込みながらクルクルと楽しそうに動いている。
そんな、平和な夏の午前中ふと窓の外にへばりついているドロドロと沸騰して煮詰まった赤黒いジャムのような何かがいや、一部の人の死体を解剖したことがあるものならば直ぐに理解できるであろう醜悪なる死にぞこないはバンッ!バンッ!とガラスを零れているうえに今なおただれているくっついているだけの自身の一部を訴えかけるかのようにたたいて窓を汚しているのを見て彼女は実にめんどくさい客がやってきたと言わんばかりの嫌そうな雰囲気を醸し出している。
もし、この状況を客観視できる人間がいたのならば彼女の雰囲気が場違いなものであることがわかるだろう。
何せ、その何かが現れた瞬間午前中だというのに何かの周りが夕暮れのように薄暗く変色しておりこの家だけ隔離でもされているかのように薄汚れ、先ほどまで聞こえていた一切の音が消えていたのだから。
何よりもそのすでに死んでいないとおかしいがしかしなお死にながら生きているそぶりを見している矛盾の姿は見たものに嫌悪や吐き気よりも、憐れみを抱くものがいてもおかしくない。しかしながら、彼女は本当にただただ面倒だという毅然とした態度を表に出しているからである。
いかにも、おどろおどろしく濁り切った腐敗。窓をたたくたびによくわからない汁があたりに飛び散り焦げ付いた匂いがわかる。窓にもう一度衝撃が加えられる前に影が差した。
次の瞬間、上から降ってきた大量の包丁がズタズタにその死にぞこないの肉塊を縫い留めたと思えば一瞬にしてすべての包丁が矢鱈滅多らに動き回り数えきれないほどの肉片へと変わった。
肉片たちはびくりと震えたかと思うと直ぐに消えていき、いつの間にか景観も何もかも始めから何もなかったかのように平和な様子が戻っていた。その様子を見て満足げに彼女は鼻をフンスと鳴らすと、先ほどまで死にぞこないがいた場所に塩を巻いて何事もなかったかのように家事の続きと、絶妙に音程が外れている鼻歌が再開され、平和な本城家の家の中に静かな音が響いている。
「♪」
オカルトに関わっているのに何事も起きなかったね。ああよかった、なんてことはありえないんですよねえ。誰かがおっかぶっているというのに。




