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異聞クトゥルフ神話探索記  作者: 変だ、損
朽ち果てる羊は楽園の夢を見るか?
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効率の果てに人間性を捨てる

こうして、俺とアトラ先生の二人における愉快な下水道攻略が始まったのだが....、もう全部あの人でいいんじゃないかな。そんな感想しか出てこない。

もとより、なんとなく先生が格上の存在でドラゴンも単独で討伐できる実力だとギルドで追加の情報を得ていたので初心者向けのフィールドであるこの下水道でゾンビたちが相手にならないとは知ってはいた。


しかし、目の前の光景は俺の想定した光景と少々違う。この下水道は不思議なことに横に広いだけでなく下にも広がっており下に行けば行くほど敵MOBが強くなっていく古き良きダンジョンの性質を今持つことを知った。なんでかって?目の前で明らかに武装をしているゾンビやスケルトンあとは幽霊な見た目をしているレイス?的な奴らがゴミのように蹴散らされているのだ。


ちなみに俺はなんかよくわからない液体を浴びせられ天井に吊るされている。なんかめっちゃ敵のヘイトを買いまくっている気がするがそのヘイトを向けている敵が何かをする前に細切れになって肉の山へと変わっていく。正直武装しているゾンビですら今の俺だと勝てそうにない速度で動いているのだが、先生はなんかもう残像しか見えていない。いやね、なんかこうも人間性を捨てた手伝いをするとは思ってもみませんでした。うーんそろそろ敵の死骸で道がいっぱいだぁ。










死んだ目をして宙に吊るされていると、いきなり浮遊感に襲われた。正直言ってもう結構なこと目の前の人外無双を見せられて、もうつかれちゃって~、全然動けなくてぇ~。とバカな考えが頭をしめて声も上げる気力がわかなかった。このまま地面にぶつかるのかぁと思っていたがお姫様抱っこされてぶつからずに済んだ。


「絵面が犯罪的だぁ。」


「何を言っているのかよくわからないが…。お疲れさま…。この腐肉どものアイテムで治療費分チャラだ…。」


「わぁ、なんて素敵な労働なんでしょう!」


「だろう…?お前は吊るされるだけで楽に治療費稼げて…私は楽にゴミ掃除ができる…。まさにWinWin...。」


ダメだ、先生には皮肉が通用しねぇ。基本無表情な先生のどや顔めっちゃ貴重でかわいいはずだけどガスマスク越しじゃ気配しか伝わらない。ああダメだ本格的に脳みそが解けていやがる。


「よし…。あとは()()()()()()()()


ん?なんかこの物理的屍山血河の中似つかわしくない単語が聞こえたぞ?そう思いダラダラと身体に巻き付いていたロープを外しながら視線を向けると凄く幻想的な光景が見えた。


さっきまで、天井、壁、床に至るまで飛び散っていたゾンビなどの血肉、脇にある水路にまで真っ赤になってしまうほどの凄惨な光景は先生の祈る姿に答えるかのように透明なしかし薄い水色の輪郭を持つ大量のポリゴンへと爆発的に拡散していった。その光景はさっきまでのグロデスクさとは真逆の方向性で、その中で祈っている彼女の姿は先ほどまでの光景を作り上げていた暴力装置だったとは思えないほど神聖的な姿だった。


俺がその光景に心を奪われていると、先生が祈りの姿勢をときこちらへと向き直った。


「どうした…。別に珍しいものでもないでしょ…?」


そんな困惑したような声色で声をかけてきた先生に俺は先ほどの光景に圧倒されてまともな言葉を返すことができなかった。






「落ち着いた.....?」


「ええ、おかげさまで。」


下水道の中、先生が案内してくれた安全地帯に辺りを清潔に保ってくれる香

「うん...?知らなかったのか…?レベルが上がっていたから知っているものだと思っていたのだが…。知らなかったのか…。それはすまなかったな..。」


詳しく話を聞くと、この世界で宗教は「星の智慧教会」という宗教派閥が1強らしく、祈りはその教義で一般的に周知されている行いで「壊れた神々」という存在に対して祈りをささげることで死したるものたちに安らぎを、祈り手には恵を還元するというものらしい。しなくても、自然と黄砂と呼ばれる形で生命の循環に還るらしいが祈った方が好ましいらしい。先生は別に強く進行しているわけではないが効率よく強く、アイテムを回収できるためやっているということだ。


「つ、つまり俺は.......。」


「どうした…?いきなり頭を抱えて...?」


「大量の経験値を無駄にしたってことかよぉ!!!!!!!!!ほにゃあああああああああぁぁぁぁああ!!!!!!!」


端的に言えば最初に下水道を彷徨ったときに倒しまくったゾンビなどのモンスターたちの経験値の多くは無駄になりアイテムドロップも半分以上をドブに捨てたということだ。正直言って、めっちゃ心に来るものがある。うボア................。


「まあ、今知れたからいいじゃないか…。今度からは無駄にしなくて済むんだから...。」


「畜生ぅ....…。」


このゲームの衝撃的な仕様を知り自らの行いがほんっとうに【ただのバカ】であったことを自覚した。

しばらく、悶える見た目中年を眺める見た目幼女という微妙な絵面なのだが俺は余りの喪失感に直前の感動とか諸々が吹っ飛んだせいで気にする余裕もなくしばらく落ち着くために時間を使うのだった。







「まったく...。気持ちは理解できるが...。」


「まことに申し訳ありませんでした。すいません。」


いやうん、本当に見苦しい姿だった。チュートリアルが何のためにあるのかが身に占めました。はい。

冷静になってみても本当に顔から火が出そうだ、なにより絵面があまりにシュールすぎる。少なくとも妹に見られなくてよかった。見られていたらむこう3か月は煽られる羽目になるからな。


「そういえば、先生はあれだけ動いてお腹とか好かないんですか?」


「そうだね…。流石に空いたからご飯にしよう…。」


そういうと、先生は防護服の腕の袖をまくったと思ったら、ほいっ。と何でもないように自分の片腕を切り落とし、その様子を眺めていた俺の頬に飛び散った先生の血が付着した。


「えっ?」

ちなみに、祈りを行う際にポーズとかは関係ありません。基本的にプレイヤーは両手を合わせる仏教スタイルが簡単かつ行い慣れているためこれが流行っています。


なお、パーティーで戦闘をした際余程のことがない限り均等に経験値が配分されます。何らかの理由で他の人が倒したモンスターの死骸を他人が祈りポリゴン化した場合5%程祈った本人に分配され残りは倒した人物に分配されます。

かといって、他人が群れ型のモンスターと戦闘して一部が倒されて野ざらしになっている一匹に割り込んで祈っても反応せずあくまで本人が権利を放棄したと判断されるまで本人あるいはパーティーメンバーにしか祈れません。


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