曇天を前にして地下へ潜行す
アトラ先生の後を追うようにして俺は初めてこの世界の空を見上げたのだが、辺り一面のどんよりとした曇り空であり恐らくその原因も見ることになった。なんじゃありゃあ?
「あのぅ、アトラ先生質問いいですか!あの滅茶苦茶に煙を吐き出して異様に真っ白な塔は何でしょうか!さぁ!遠慮なさらずに早く答えてください!さぁ!」
「なんだ見習い...。暑苦しく詰め寄るな...。ちゃんと答えるから落ち着け....。あと敬語はいい...、似合ってない...。」
おっと、いかんいかん。俺の悪い癖だ。一回落ち着こう、息を吸ってーーー、吐いてーーー。
先生の視線がビシビシ刺さっている気もするが気にしない気にしない。よし、改めて。
「おほん、ではそうさせてもらう。改めて、あれは何だ?」
あれ?と指さされたものを見てアトラ先生は何やら納得したようにほとんど感情が見えなかった声色に忌々しさが混ざった声で答え始めた。
「あれが少し前に説明した「灯台」だ...。この国のありとあらゆるインフラ諸々のエネルギーを作り出している発電所のような場所だ....。「灯台」に住む贅肉揺らす豚どもがそのエネルギーを独占して「外郭」には回してはいないがな...。そして、その廃水があの下水道に流されている....。昔、あの下水道は通路のためのものでとても綺麗だったらしいが今ではあのざまだ…。」
「先生、疑問なんだがその「灯台」っていうニュアンスだと何か燃料が必要だと思うんだが…。」
「さぁ…。燃料かどうかはわからないけど、たまに「外郭」の人間に依頼を出して中に招き入れているみたい...。基本的にその依頼を受けた奴らはそれ以降見なくなっているから大方「灯台」のなかで使いつぶされたか、見習いの言うとうり薪にでもされたんじゃない....?そんな噂があるくらい...。だから基本的にこの国に拠点を構えている奴らには「灯台」からの依頼なんて受ける奴はいない..。例外は外からやってきた間抜けか、見習いのような好奇心旺盛で無謀なバカだけ...。」
「そ、そこまで言わなくても…。」
この国が秘密にまみれているタイプであるとわかってテンションが高くなり始めたのだが、突然の罵倒にクリティカルヒットしてテンションが下がりまくっている中で先生が物騒なことを言い始めた。
「言い忘れたけど、あの豚どもはたまに狩りをすることがある。狩りといってもマンハントだがな...。恐らく中にいる奴らが足りなくなって補充でもしているんだろう...。最近は間抜けが多いせいか行われていないが...。私の知り合いも何人かやられた...。純粋に卑しい豚どもは強いんだ...。憎々しいほどにな..。」
もしお前がここにまた来ることになったら気を付けとけ。ここの脅威はそれ以外もいっぱいあるからなと吐き捨てると先生は再び移動を開始してそれ以降は黙ってしまった。これ以上聞くのも何だったので俺も黙々とついていくことにした。
しばらく、街はずれを歩くこと数分ほど何やら関所のような建物が見えてきた。先生に尋ねてみるとあれが入り口だそうで、俺は気合を入れなおした。
近づいていくうちに詳細が見えてきて、この辺りは道中とは違い結構人通りが活発のようだ。先生に先導される形で予想どうり関所と書かれた看板ともう一つ別の看板を見つけた。
「冒険者ギルド、不浄迷葬の地下水道ルージュ側出入口支部?」
冒険者ギルドって何ぞや?そんな疑問が沸いたが以前読んだ小説とかにあるようなものだろうと検討をつけて建物に入っていくと俺たちと似たよな恰好をした恐らくNPCとちらほらプレイヤーである装備がちぐはぐな連中がそこそこいた。NPCたちとは違い満身創痍な様子がプレイヤーたちにおおく見られる。地理的にも敵MOBの強さ的にも俺とあまり変わらない初心者だろう。
言い忘れていたがこのゲームプレイヤーの名前が基本的に頭上表示されるので判別は容易なのだが設定の深ーいところに非表示に設定できる項目があるので俺は非表示にしている。人によっては晒し対策などでやっているらしいが俺はこの世界に没頭したいためそうしている。
閑話休題、俺がそんな風に建物をきょろきょろまるでというよりまんまお上りさん丸出しの行動をしていると先生が俺の腕を掴んで人がほとんど並んでいない受付らしきとこに引っ張って連れていかれた。
「ん、ガンツ....これが前言っていた袋の中身...。これからこれをブランの方に届けてくる...。たしか六年位前に追加された規則にあった事例...。それに該当するはず…。」
なんか無性に悲しくなるようなことを先生がいうと、ガンツと呼ばれた大柄なスキンヘッドのナイスミドルなおっちゃんがなんか珍獣を見たかのような表情でこちらを見てきた。なんとなくイラっとしたのでにらんでみたらなんかすごい勢いで目をそらされた。
....…俺、そこまで目付きわるくねぇっての…。....…やめよう、自分から傷口をえぐる必要はない。
「は、はっはぁ!なるほどな、前検査を免除してくれといったのはその目つきの悪い奴が原因か!どうしてお前が急いでいたのかと思ったら運がいいじゃあねえか!嬢ちゃん!」
「嬢ちゃんはやめろと何度も言っている...。私はもう立派な大人だ...。あとうるさい…。」
なんか俺をおいて盛り上がっているようなので抜け出そうとしたのだが、ガシッと捕まった。
「おいおい、坊主!どこに行こうってんだい!お前のために嬢ちゃんがこの俺の前に連れてきているってのによう!」
「いや~、お二方が盛り上がっていたし暇だったので。」
「まったく、目付きだけじゃなく態度も悪いとは。」
「あ”?」
「すまん、謝るからそんな目をこっちに向けないでくれ。頼む。」
そんなこんなでわちゃわちゃして時間を取られたが先生がせっついてくれたおかげで話が進みそうだ。もとはといえば先生が始めた奴なんですけどね?言わぬが花というものでこれ以上だべるつもりはないのだ。
どうやらここで俺のギルド登録を行うらしい。ギルドに入ると討伐報酬やらなんやらでお金が稼げるし個人に適したJOBなどの斡旋も行ってくれるそうだ。うん、テンプレだな。
んで、身分証明書になるカードを発行してもらった。カードの説明もあり階級が働きに応じて変わるらしく俺は当然ながら一番下のブラックランク。先生のランクが気になったので聞いてみたが上から三番目のブルーランクらしい。
いまいち、凄さがわからなかったのでザックリ説明してもらったがドラゴンなら単独でしばくことのできる戦力だそうだ。ドラゴンいるんだ...見てみたいと思ったが場に合わない発言だろうから黙っておいた。
あとこれより上は何というか災害とかそういうレベルらしい。なんでも話が通用しない狂人がほとんどらしく、絶対に会いたくないと思った。
「気をつけて言って来いよ!」
そんな声に手を軽く上げて返答をし、ギルドの建物の奥の方にあった通路を通ってギルドを後にした。
ふと、先生とあのガンツとかいう受付の関係を聞いてみたのだが
「私が小さいときに世話になっただけだ...。」
そうぶっきらぼうに答えただけだった。正直今も小さいだろうと言ってしまい場の空気が完全に死んだので土下座をした。そんなコントをしつつ関所を通り過ぎ俺たちは下水道こと正式名称:不浄迷葬の地下水道へと足を進めた。
ちなみにギルドのランクは黒→赤→黄→緑→青→紫→白の順番になっています。
ギルドカードには身分証だけでなくいろいろな機能がくっついていますがそれは次の機会に。
ん?見たことあるだって?貴様さてはコミーだな?!ZAP!!ZAP!!ZAP!!ZAP!!




