金策の依頼にて、お嬢様が嗤う
場所は変わってデソロートのどこかに存在する冒険者ギルド。
ヒルド達に今後の予定とかを色々説明され、思った以上に厳しい状況になると思い、装備を整える……いやそれ以前に、そのための資金を稼ごうとしていた。
稼ぎ方はたった一つ。冒険者ギルドに載ってある依頼をこなす。素材収集とかのクエストもあるけど、簡単すぎる又は何日も掛かったり難しすぎるものばかりで、報酬もそれに見合う訳じゃない。……あんま戦えない人にとってはめちゃくちゃコスパ良いかもしれんけど。
手っ取り早く稼ぎたい、でも素材収集とかはしたくない。であれば一つしかあるまい!
「魔物討伐ゥーーーーッ!」
「わーかってるっての! しっつこいなぁ」
「フッフッフ……サキよ、俺達は冒険者……冒険者が依頼を受けて魔物討伐……めちゃくちゃファンタジーしてなぁぁい!?」
今更だろ、と言われたらそれまでだが、改めて考えてみるとマジで本の中にいるみたいだ。魔物に始まり王都、王宮、騎士に国王。四天王や魔王だってそうだ。
「ちくしょう! 冒険始めてからここ毎日が楽しくてしょうがねェぜ!!」
「……まあ、それは私も」
「……俺もだな」
ん? 二人とも何か言ったか?
周りを見れば現実では見たことないものばかり。剣や鎧、普通に考えて物騒なものがすぐそこに存在している。ロマンチストっぽい俺にとっちゃ楽園に近い。
命の危険があるのを加算すると普通に地獄になり得るけどな。
「う〜ん……この国に引っ越したってのは嘘で……俺ホントは転生したとか?」
「何を言っているんだ?」
「ああいや何でも……」
まあ転生した線は限りなく薄いがな。引っ越し前の俺と今の俺の姿は変わらない。ちょっと成長した程度……それに名前だって同じだし、この世界には海外もちゃんとある。
うん、たまたまこの国がファンタジーで、独立していて、海外との接点が無くて、魔物がいて、魔王がいて、魔王は────
(────っ!? 今一瞬世界の真理に辿り着いた気が……)
あー今ので全部吹き飛んだ。何か思いつきそうなところで一瞬脱線しちゃって全部忘れちゃうヤツ、あるあるですよね。
「ハァ……よし、気分転換も兼ねて、魔物討伐行くぞォ!」
「まだ依頼受けてないよ……」
早とちりレベル50!! MAXは何かって? 生まれてからすぐ自分の墓を注文することだよ。
………………
…………
……
「どれにしようか」
「報酬金額重視で選びたいが……」
「まァそれはみんなそうだけども……あ、銀等級以上推奨、『破滅化魔物:エビルケルタ・エクシティ』討伐依頼だってよ」
「無理!!」
「名前から漂う強者感が尋常ではないな……」
俺もこんなヤバそうな破滅トカゲに勝てる気せんから冗談冗談。
んじゃ他は……おっ。
「紅等級以上推奨、『スカルハンプ』討伐依頼……これいいんじゃね? 金額もなかなか」
「決まりだ」
「決まりだねぇ!」
返事早っ。そりゃこんな依頼冒険者の誰が見てもコスパ最高だろうしな。悪樹と同等っぽそうなのが厄介……ていうか何故か他の依頼書よりちょっとボロいんだよな……まあいいか受けよ。
だが、俺がその依頼を受けようとした瞬間……
「「「ちょっと待ったぁーーーーっ!」」」
「うわ何」
変な三人組がこちらの動きを止めた。
「僕「ワタクシ「余達」」」
「あ、あら? タイミングが合いませんでしたわね……もういち……」
「やらんでええ」
「あっそうですか……おほんっ、……せーのっ」
小声で合図すな。
「「「セレブファイトトリオが、その依頼書いただきますわァーーーッ!」」」
ハァ、なんか胡散臭いセレブみてェな奴らが来た……一人は女執事的なやつ、もう一人は冒険者お嬢様、もう一人は……魔法お嬢様少女? というかセレブって言ってるし、みたいじゃなくてガチセレブなのか? こういう奴らは大抵の話じゃ噛ませ犬ポジなんだが…………ん? サキが何か言いたげ……
「一人称ダブり回避のせいか一人だけ余達って言ってる人いたね」
「フガッ!! そういうこと本人の前で言うなよ! ……超小声で俺に対してだけ言ってくれ、面白いから」
「ブフッ……んんっ!!」
おいクチク今吹いただろ、バレてるぞ。俺も吹いたけど。
「んで、セレブ……ファイターだっけ、何でこれ受けたいの?」
「セレブファイトトリオ! ふぅ……ワタクシが説明しますわね」
俺の問いに銀髪縦ロールの見た目ほぼ完全……いやちょっとだけ冒険者らしい格好のお嬢様……便宜上「冒険者お嬢様」と呼ばせていただく……ソイツが説明を始める。
「アナタ達よりもワタクシ達のほうが等級が上でございますからですのォ〜!」
うわ〜またこのパターンか、ルターロ村の冒険者ギルドでもあったしボントール前でもあったし……そろそろムカついてきたな!
で、コイツらは全員紅等級……んっ? アレは。
「……あっそ、しゃーないこの依頼はお前らにやるよ」
「え?」
「は?」
多分誰も予想していなかった俺の返事。それにサキとクチクが唖然……んでもって仰天する。
「もともとコレ紅等級以上推奨だしな」
「あ、あら? 思ったより物わかりのいい方ですわね? それならありがたくいただきますわ」
「僕からも礼を言いましょう」
「余も感謝致しもうす……」
「ああ! 頑張れよ、スカルハンプ討伐、応援してるぜ!」
余の人キャラ濃っ。
………………
…………
……
「なに……やってんのさぁッ!!」
「ぎゃあああ飛び蹴りやめっ、ちゃんと理由はあるんだって!」
「聞かせてもらおう……俺も思ったことがある」
俺が理由無しにそんな目の前の宝をマグマに落とすようなことするワケねーだろ!
クチクと同じくちょっと気になったことがあるのと……
「めっっちゃ端っこ見てみ、ちょっと金額減るけどあの依頼書と同等のものがあるぜ」
「えっ……ほんとだ、一応全部見たはずなんだけど」
「俺も気付かなかった……よく気づいたな、ワロタ」
「実は……」
実は俺が冒険者お嬢様率いるセレブファイトトリオ全員が紅等級であることに気付いたと同時、よそ見していたら新しく依頼書が張り出されたのをたまたま見つけた。視力はそれなりにいい方だしな……バレないように凝視したら、難易度も金額もほぼ同じだった。それはつまりスカルハンプ討伐依頼を捨ててもアレがあるから大丈夫なワケで。
「……ってワケだ。んで……それとは別に疑問があったんだ、なんでスカルハンプ討伐依頼書だけ他の依頼書よりボロボロなのか……クチクもそれには気付いてるっぽいな」
「ああ」
「え、私もそれは気付いてたけど…………あ、それもしかして」
俺達全員はその答えを自ずと導き出した。
しかァし、答え合わせをしたワケじゃない! 未だ真相は不明……であれば!
「ギルドの……えっなんて言えばいいんだっけこれ、店員さん……? いや店じゃねェしな、お姉さ」
「受付嬢さん、ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど」
サンキュー……サキ……
「はい、どうされましたか?」
「あそこに貼ってあるスカルハンプ討伐依頼って、何日くらい放置されてるんですか?」
「あ〜……もう一週間は経ってますかね〜……」
「そんなに!?」
クチクが質問を継ぐ。
「依頼書は一日の夕方までに何度か新しく貼り出される……何度も新しい依頼が貼り出されているのにこの依頼だけ残っているのはどうしてだろうか」
「そうですね、率直に申し上げますと、『やりたくない』からでしょう」
俺達の予想は見事に当たった。
破滅化:エビルケルタ・エクシティ
長期間生き延びてしまったエビルケルタが常時放つ、徐々に威力を増す魔力がオーバーヒートして崩壊してしまった個体。
崩壊するほどに強力な魔力を常に噴き出しているそれに、並の冒険者は近付くだけで苦しむ。
多分本編で会うことはない…………
魔物の破滅化個体は後ろにエクシティの名が付く。
セレブファイトトリオの概要
ワタクシ:ちょっと冒険者っぽい服装の銀髪縦ロールお嬢様。冒険者:お嬢様で2:8。
僕:若い女執事。男装してるっぽい。
余:魔法少女服とお嬢様服を足して2で割った服装の少女。人前で喋る時はめっちゃ声が低い。動作が武士。




