急襲せし彗獣の暴魔 第二幕
「……何が起きたってんだ」
突如として現れた四天王を名乗る魔物。あの悪樹を一瞬で破壊し、ネルファ並みに派手な登場シーンをお披露目した。
あまりに突然の出来事で、俺達は動揺を隠しきれずにいた。
どうやらそいつは喋れるようで、流暢な言葉で俺達に話しかけてくる。
「あれれ?派手にやりすぎてビックリさせちゃったかな〜」
派手にも程があると思うぜ……なんせこれから悪樹との最終決戦が始まろうとしてたのに突然クソデカ波動飛ばしてくるんだからな。そんな事よりも悪樹だ悪樹!
「ハッ、四天王だか何だか知らんが、アレは俺達の獲物だったんだ!よくも横取りしやがって……」
「あっはは!それはごめんね!……でも、僕の方がずっといい獲物だと思うんだけどなあ」
確かにコイツは四天王、それがもしハッタリではなく本当だとするならば……倒せばめちゃくちゃランクアップするのでは!?
「へえ、言うじゃねえか……ならお望み通り、獲物にしてやらあ!!」
「ストップストップ!!」
彗獣の肆・ロマリウスへと走ろうとした途端、二人に止められた。何だよ今いいトコだったのに!
「よく考えろ、『四天王』だ!!魔王軍の中でもトップクラスの魔物、今の俺達が敵う相手ではない!!」
「そうだよ!早く逃げようよ!!」
逃げる?敵う相手じゃない?
おいおい、せっかく苦労した悪樹との戦いも無駄にされた挙げ句、向こうから煽ってきやがったんだぜ?幹部だろうが、四天王だろうが……
「一矢くらい報わねえと、気が済まんだろうが!!」
「いいねぇいいねぇそこの少年!さっきは子猫ちゃん呼ばわりしてごめんね?」
子猫ちゃんはビジュ的にそっちだろうが。ってのは置いといて、奴はもうやる気のようだ、そもそも逃げようっつっても逃げられないだろう。
「クソッ、相変わらず…………確かに俺も気が済まない。倒せるとは思えんが、一矢報いるくらいはしてやろう……!」
「はぁ……そうだね、冒険者のプライドに賭けても、やれるだけやってみよう!」
準備は出来た、さあさあ漁夫の利マスターの四天王さんよ……ベテラン冒険者も唸るような派手なバトルしようじゃねえか!!
冒険のターニングポイントとなる戦いは今、幕を開けた。
「そう来なくっちゃ…………【氷壁】!」
ロマリウスの掛け声と共に、俺達の背後に巨大な氷の壁が作られた。
「なっ!?」
「おいおいマジかよ……!」
「逃がさないってことだろうね……」
その通り、と言わんばかりに杖をこちらへと突きつける。そして杖の先が光り……
「【炎球】!」
「うおおぉわあぁっ!?」
無数の炎の球が飛ばされた。
「コイツは……俗に言う……」
誰もが知っているようなあの有名な存在……!!
「魔法使いかぁぁぁぁぁっ!!」
叫びながら必死に炎の球から逃げる逃げる!!飛んでくるスピードがそこまで速くないから避けきれているものの、やけに数が多い!いつ止むんだ!?
「熱っつ!何℃くらいあるんだろうこの炎……!」
「100℃くらいあるんじゃね!?」
「熱っついなぁ!!」
木刀を背に納め、代わりに腰に納めた短剣を再度引き抜く。木刀は打撃で短剣は斬撃、上手く使い分けをするのが一流の戦士ってもんだろ?
ロマリウスへと接近し、短剣で力強く一閃を差し込む。
「へぇ、この状況で近付けるなんて中々度胸があるじゃん」
短剣の連撃は軽く全て避けられてしまったが、直後に出した蹴りはクリーンヒットさせることができた。そこで生まれた微かな隙に……!
「クチク!!」
「そこだァッ!!」
高い衝突音を上げながらロマリウスの腕が跳ねる。
ロマリウスは身体を捻らせて斬撃を回避しようとしたが、狙いはそこじゃない!
「ざまぁみやがれケモノ野郎……!ハナからお前が食らうなんて思っちゃいねえよ、狙いはお前が持つその杖!」
至近距離まで迫ったクチクの斬撃が杖にヒットし、ロマリウスから手放すことができた。うちのクチクを見くびってもらっちゃ困るぜぇ……!
最初に出した氷の壁も、次に出した無数の炎球も、見る限りはどれも杖を光らせて放った魔法。恐らく奴が出す魔法は杖から放たれる物、それさえ使えなくすればこっちに分が……!
「『風来坊』」
その言葉が聞こえたと同時、とんでもない速度で迫る刃──そう思える程の鋭い風が俺の頬を掠った。
一瞬思考が止まったが、少し考えりゃ分かる。これはマジでヤバい!! マトモに食らったら肉が裂けて死ぬ!!
最初に悪樹を葬ったあの技の小型バージョンって所か! 自分の心臓の鼓動が身体全体で感じる……アレは怖え……!
「何も魔法ってのは全部杖から出すワケじゃないんだよね」
ギリギリで回避したから頬の擦り傷だけで済んだ。常に油断はできない…………これが「四天王」か……!!
杖を使用不能にしてもほとんど意味を成さないどころかまた新しく厄介な魔法攻撃を仕掛けてきやがった……!さて、どうやって倒す……!?
「キミ達にいいコトを教えてあげよう」
ロマリウスは俺達が退いたのを確認して杖を拾い……
「一つ目の歴史は炎に飲まれ……【炎斬】」
横一線の炎の斬撃が飛ばされた。
が、一瞬の判断で地面に伏せてダメージは免れた! 早く体勢を整え──
「二つ目の歴史は涙で沈み……【氷雨】」
「まだ立ち上がれてないっつーの!!」
氷の雨……というか槍? いやどっちでも危ない! それが杖から無数に放たれる。正直これよりかは炎球のが幾分かマシだぜ!
「次来るよっ!!」
魔法のバーゲンセールかよ!! 次は何だ、炎? 氷? それとも風か?
「三つ目の歴史は願いで立ち上がる。【雷刹】」
雷かぁ〜〜、畜生っ!!
「それにしたって……何か意味のありそうな詠唱だな……! というかそもそもこれ詠唱なのか?」
「アハハ、まあ一つの伝承だよ。あるところでは予言って呼ばれてるけどねぇ!」
伝承の意味を考える暇は一切無いから悪いけど無視させてもらうぜ……!
天空から一閃の雷が落とされ、俺達がいる開けた空間の地面全体を侵食するかのようにゆっくりと広がる。
「ぐおおおああっ! 森に逃げ……いや後ろは氷の壁があって間に合わねえ!! 詰みだあああああ」
「あーもううるさいな……! 〝アンチフィルム〟!!」
雷のフィールドが俺達に迫る前に、サキが出した闘気由来のものであろうオレンジ色の膜を地面に広げた。
「きっとこれで影響されないはずだから、もっとコッチ寄って!」
その言葉通り、じわじわと広がる雷のフィールドはアンチフィルムの範囲を避けて広がった。
無傷でやりすごすことができた俺達はサキに礼を言い、体制を整える。
「ふぅ、さて……どうやって倒そうか」
幾度も隙のない魔法を繰り出す相手……やはり魔王に近しい実力なのは確かだろう。現状ヤツの魔法から逃げてばかりだ、杖の略奪も無意味…………じゃあもうこれしかないよな。
「一個試したいことがある、んでこれが効かなかったら勝機は無いから逃げるぞ」
「元々勝機など無いような物だが、何か策があるのか?」
つい一昨日のことだ。俺は王宮でミハエール王に闘気の必殺技を教えてもらった……いつも使ってるファイティングインパクトがその一つ。
その一つということはつまり……まだ披露してない必殺技もある訳で──!
雷刹が止むと同時に全速力でロマリウスへと走る。俺が習ったもう一個の必殺技……!
「〝闘争より穿て〟!!」
爆ぜる爆速の殴打は、彗星の如く魔を穿かんと進み、森に衝撃が走った。
・彗獣の肆ロマリウス
四天王の中で唯一拠点を持たぬ放浪者。
格闘系魔術師。獣人。
Q.ロマリウスの異名が「彗獣の肆」ってあるけど、序列は下なの?上なの?
A.肆が最弱、壱が最強。つまり最弱。ちなみに四天王によってそれぞれ二つ名が違う。彼は「彗獣」だけど後の三体はまた別の名を持つ。
ちなみに炎斬とか出す時になんか言ってるけど別に威力とか上がる訳じゃないしただのストーリー進行における道筋的な伏s




