急襲せし彗獣の暴魔 第一幕
………………
…………
……
「また来るまた来る!!……どわぁぁっ!!」
あれから数分後、悪樹から伸びる四つの丸太に俺達三人は翻弄されていた。
「あれ斬れねえかクチク!?このままじゃいつか潰されちまうって!!」
「何を言っているんだ!無理に決まって…………いや、やってみる価値はあるな!」
ジャキッ、と剣を両手で構える。
「……さあ来い!」
ギュオッ、と一本の丸太がクチクへと猛スピードで伸びる。
そのまま上に剣を構え……
「ずああっ!!」
剣の重みを加えた袈裟斬りを悪樹の丸太へ落とした。
悪樹から伸びる丸太は伸びることを止めない。故に一部を切り落としたところで更に成長させるまでだ。
「なっ……がはっ!!」
一瞬だけ丸太の動きが止まったかのように思えたがすぐに高速で伸び、クチクの胴体に衝突した。
「ありゃりゃ……根元からじゃないと無理そうか?」
「ねえあの人吹っ飛んでったよ?大丈夫か!?くらい言ってあげたら?」
「大丈夫だ、アイツは俺よりタフだからな」
「どういう理論?」
実際身体能力は高い。王宮での修業でよーく分かった。
「まあそれもあるけど、一瞬動き止まったし衝撃はそこまでだろうから……ほらケロッとしてる」
「ほんとだ」
吹っ飛んだ直後に受け身を取ってすぐ立ち上がり戻ってきた。
「迎撃は難しい」
「だろうな、よく見てたよ。……俺の短剣なら尚更無理だな」
「でも、斬られたところは再生しないみたいだね」
「まあその分また伸びるから実質再生してんのと同じだ」
「やっぱり斬るんだったら根元かぁー……っと!」
喋っている間にまた別の丸太二本が襲いかかる。
「直線で来たり上から押し潰すように来たり……!ああもうウザッてえ!」
関係なしに本体にダメージを与えようとしてもまた別の丸太が飛んできてなかなか近付けない。こんなんどうやって倒しゃいいんだよ!!あと五人くらい居りゃダメージ与え放題だったかもしれんけど……!
こちら三人に対して相手は自在に伸ばせる丸太四本。手数が足りない……!
「最初の太い枝と違ってヘイトが別々で同時攻撃するようになったし隙がまるで無いな!ええい何か策は……!」
特に関連性はないのだが、ネルファとの戦いの記憶が頭に流れた。
「……これだ、こりゃやる価値しかねえぞ!!」
思い付いた策を伝えるため、そのままクチクの元へ駆け寄る。
「いい策思い付いたんだ!走りながらでいいから聞いてくれ……っと危ねぇ!」
「くっ!……っと、その策というのは?」
悪樹の攻撃を避けながら思い付いた策を簡単にクチクに話し、実行に進める。
もし成功したら後は楽だぜ……!
「手元が狂ったらすまないな」
狙ったかのようなタイミングで悪樹の丸太が俺達二人に伸びる。
タイミングを見極め……来たっ!
「はああっ!!」
先ほどと同じ袈裟斬り。とても綺麗に入った……と、思っていた通り動きが止まった!
「そこだァァ!!」
そのまま俺が予め用意して溜めておいた闘気を拳に込める。
「〝闘争より爆ぜよ〟!!」
動きを止めた丸太に爆ぜる闘気、ファイティングインパクトを食らわせ、丸太をぶっ飛ばすことに成功した。
「っしゃあ!計画通り!!」
今更ではあるがリュックを下ろし、万全の体制に整える。中身は水とお菓子あたりしか入ってないから別に重くはないが。
ファイティングインパクトの衝撃で丸太を跳ね返せることが発覚した以上、やることは単純だ。襲いかかる丸太攻撃を俺が全部弾き飛ばしてサキとクチクが猛攻撃を仕掛ける!コイツで討伐ってワケだ!
「行くぞみんな!!攻撃は全部俺が弾き飛ばしたらァ!!」
「頼むぞ」
「任せたよ!」
サキもまた手闘を発動させ、悪樹本体へと走る。
「っ!来た!」
早速丸太一本がサキの元へ……!分かった以上丸太の足止めは要らない、タイミングを見極め闘争より爆ぜよ発動!!
「っしゃオラァ!間に合った!!」
「助かった!そんじゃこのまま……!」
悪樹本体へと一緒に走る俺達。もはやただの濃い影にも等しい口からはとても発せるとは思えない雄叫びを上げ、一つづつ丸太をこちらへ高速で伸ばす。
「本気モードか……さあ来いよ、全部全部その丸太……俺が弾き返してやるよ!!」
一つ目の丸太は難無く。
二つ目も何とかタイミングを合わせ。
三つ目は上から俺だけを狙うからただ逃げる。
最後の四つ目。悪樹も疲弊しているし、コイツをやり過ごしたら当分攻撃は来ないだろう。これを弾いたら実質俺達の勝ちだ!さあ終わらせ……!
最後のファイティングインパクトを発動させた、その筈だった。
「──ヤバっ」
車に乗り続けたらガソリンが切れるように。電子機器を使い続けたら電池が切れるように。
闘気にもまた、エネルギー切れは存在する。
丁度サキがそれを手闘のエネルギー切れで体現していたのは知っていた……しかし俺はエネルギーが切れるまで闘気を使ったことが無いから実感できなかった。強いて言うならば紅制エビルウロス戦の時くらいか。
闘気を使っている時の闘争心がみるみるうちに落ちていく。この感覚は誰でもエネルギー切れだと分かるだろう。
再度発動させられるのにどのくらい掛かるかこの一瞬で考えてもみたが、丸太が目の前に迫っている以上、どれだけ早くても。
「間に合わな────」
丸太は俺をその質量で押し飛ばし、粉砕するだろう。
俺は最後の最後で闘気を放てず高速で我が身へと伸びる丸太と衝突し、そのまま森の奥へ押し飛ばされてしまった。
「ワ、ワロタがやられ……!」
「…………いや、アイツまさか」
クチクは分かった。この一瞬でワロタが何をしたのか。
「目には目を、木には木を……ってな」
残念でした!俺は無事だぜ!!ちょっと腕が痺れてるけどな!!
どうやって窮地を乗り越えたか、それは単純、まずはギリギリのタイミングで木刀の柄を丸太に全力で叩き込むことによって丸太が俺の肉体ではなく木刀に衝撃を加えた判定になる。腕は痛むが。
その後は俺の身体が丸太に押されている木刀と一体化して丸太と同じ速度で森にブッ飛ばされる……まあ要約すると俺の身体に対する質量攻撃だけは木刀でチャラにできたってワケだ……!
「コイツもれっきとした武器なんだぜ?しかも相手は同じ木と来た、そりゃあ使わねえとだろ!こっちの木の方が強いってのをその身に思い知らせてやるよ……ツリーもどきが!!」
すぐにもう一度悪樹がいる場所に戻り、仲間の元へ向かう。
「よかった、一瞬やられたかと思っちゃったよ!」
「まあ、無事なのは分かっていたがな」
「バカ言え、こんな簡単にやられてたまるか!」
もうヘマはしない。またまた闘争心は向上し、すぐに闘気を出せるまでに回復した。念には念をってことで今度はしっかり溜めとかねえとなぁ!!
「こんなモンかよ紅等級…………時間が経っちまったな! 次こそきっちり四発、受けてもらうぜ!!」
さあさあホントのラストスパート……!そろそろ飽きてきた頃だ、ハイテンポで終わらせ────!
圧。
右から感じたその圧。恐らく俺だけじゃない、サキとクチクも感じただろう。
身近に圧で思い浮かべるものと言ったら……それこそ闘気だ。あの闘争心、熱気、威迫。圧と言って不足無し。
しかし、またそれと感覚的には限りなく近いが、本質的に全く違う圧。
その正体が判明するまで、一秒も掛からなかった。
「────えっ?」
轟音と共に右から左へと、悪樹を通るようにして放たれたその波動。
それはあの時と同じような、竜巻を横にしたかのような渦を巻く波動。
ネルファが黄色なら、こちらは紫。
巨大なその波動で森の一部と悪樹は消滅した。
……尤も、波動の元を見てからは悪樹などどうでも良くなったのだが。
「やあやあ!たまたま来たけどこんなヘンピなトコロで衝撃を感じたのが珍しくってさ……!」
狼か猫か……いや、それを足して2で割ったような二足歩行の姿と言うのが近いだろう。それは紫色の艶のある毛並みを持つ。それは妖しく、蛇のような形状をした黒い杖を持つ。
その威風は、正に────
「僕は魔王軍四天王〝彗獣の肆〟ロマリウス……」
大いなる魔として、十分に相応しい。
「さあ、次は僕と遊んでくれるかな?子猫ちゃん達」
四天王・彗獣の肆、ロマリウス
討伐推奨等級…………最上級〝金〟




