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第8話 残念!死体で防ぎました!!

魔物達の近くに母親の姿を認識したとき、ラルフは全力で駆け出していた。ここに勇者になり得る存在がいなければ、ゲームの通り魔物達の虐殺が成功していただろう。彼らの奇襲は的確だったが、それまでだ。圧倒的な力を持つものがいれば、そして、その存在が本気になれば、


「「「ゴブゥゥゥゥ!!!????」」」


小手先の作戦など、何の意味も持たないのだ。彼が走って行く中、首近くを切られた数体のゴブリンが悲鳴を上げた。すれ違いざまに持っていたナイフで切りつけたのだ。


(家から持ち出しといて良かった~。本当は真剣が欲しいところだけど、刃物があるだけマシかな)


彼は自分の手にあるナイフの感触を確かめながら、敵を切り裂いていく。できるだけ攪乱するように走り回り、敵の注意を引くのだ。バリケード内にいる村人達に逃げる時間を与えるのが目的である。


「えいっ!」


近くで聞き覚えのある気合いが聞こえてくる。敵を攪乱しつつ意識を向けると、そこではニューニャが木刀を振っていた。隙を見せていた敵の背中に殴り(木刀なので)かかったようである。だが、それは悪手であった。木刀で背中を殴るだけでは殺傷力が低く、


「ゴブゥゥゥ!!!!」


「え?きゃぁぁぁぁ!!????」


敵の反撃を受けてしまった。ゴブリンの持っていた棍棒で腕を叩かれ、彼女は悲鳴を上げる。


(ちょっ⁉せめて1体くらいは狩ってよ!)


ただゴブリン1体の背中を殴っただけに終わってしまったニューニャ。それにラルフは内心文句を吐きつつも、急いで駆け寄っていく。そして、ニューニャを向いているゴブリンの後ろから、


「はっ!」


ドスッ!と刃が首筋に突き立つ。それとともに、刺さった部分から赤い液体が噴き出した。これは確実に絶命しただろう。

ラルフが手に付いた血を見て若干顔をしかめた瞬間、


《レベル2になりました》

《レベル3になりました》

《レベル4になりました》

《レベル5になりました》


無機質な声が聞こえてくる。これが初めての殺しで初めてのレベルアップであった。ここまでは1カ所で足を止めなかったため、傷つけてばかりで殺すことはなかった。つまり、ここで初めて魔物を殺すこととなったのである。しかも、1度に4もアップしている。

彼はレベルアップによる変化を気にしつつも、ニューニャに、


「無理そうなら逃げて!無理して戦ってまた反撃されちゃうと困るから!」


「わ、分かった!ごめん。お願い」


ニューニャは走って行く。彼女は戦えないと判断したらしい。出来れば仲間がいた方がやりやすかったが、あっけなく殺されてしまうよりは良い。


(さて、また攪乱かな。でも、いつまでもそうしてるとジリ貧だし、殺せそうなのがいたら殺した方が良い?……判断に困るね)


そう思いつつも、魔物達に向かって走っていく。大ぶりに振り下ろされる棍棒を避け、すれ違いざまに肌を切り裂き、彼に反応できていない敵を蹴り飛ばす。


《スキル『回避(入門)』を獲得しました》

《スキル『蹴技(入門)』を獲得しました》


レベルが上がらない代わりにスキルは手に入る。おかげで動きやすくなった。蹴りは急所を捕らえるようになり、回避の動きもムダが少なくなる。彼は無限に戦っていられるような気がした。

だが、その思いは途絶えることととなる。戦いの流れが変わったのだ。


「お、おい!あのゴブリン達、弓持ってるぞ!」


「ほ、本当だ⁉離れなきゃ!」


バリケードにいたモノたちからこんな声が。ラルフが辺りを見回すと、確かに弓を構えているゴブリン達がいる。それを確認すると彼はすぐさま近くのゴブリンに飛びつき、


「ていっ!」


《レベル6になりました》

《レベル7になりました》


首へとナイフを突き立てる。レベルもアップし、身体が楽になったような気もした。だが、目的はレベルアップではない。倒した敵の死体を使い、こちらへ飛んでくる矢を、

ドスドスドスドスッ!


「あ、危なぁ~」


持っていた死体に大量の矢が突き刺さる。死体を盾にしたのだ。幸いなことに矢はラルフのいたところにだけ飛んできており、逃げているモノたちにケガ人はいない。先に戦えるものを排除してしまおうと判断したようだ。


(おかげで、周りの魔物に矢が刺さってるねぇ。今ならとどめ刺し放題かも)


ラルフは良いことを思いついたとばかりに盾として使った死体を持ち上げる。それから、


「せいっ!」


敵の集団に投げ飛ばした。大量の矢が刺さって瀕死となっている彼らに回避能力はなく、べちゃっと言う汚い音と共にはかなく散った。


《レベル8になりました》

《レベル9になりました》

………………

《レベル17になりました》


はかなく命を散らした魔物達だが、美味しい経験値にはなってくれた。自分の中の力が高まっていることを感じつつ、彼は次の敵へと狙いを定める。


(弓矢持ちは早く倒さないとね。逃げてる人たちを狙われたら溜まったものじゃないし)


「ハァァァァ!!!!!」


「ゴブッ⁉」

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