第7話 残念!襲撃でした!!
気力を流し込むことの効果は、耐久性上昇であった。それならそれで使い用はある。彼は効果を確認するため、何度か小枝を使っては木に斬りかかった。結果は予想通り、全て欠けることなく形を保ったまま。
(気力剣の効果は、剣の耐久力向上で間違いなさそうだね)
そんな成果を得たその日から、彼は素振りの時にも木刀に気力を流すようになった。最初の時とは違い、木刀が崩れ去ると言うこともない。
そんなことをしていれば、数週間後には、
《『気力剣』が(入門)から(初級)に進化しました》
更に数週間後、
《『剣術』が(入門)から(初級)に進化しました》
因みに、ニューニャはラルフが気力剣のスキルを獲得した辺りで、
「やったぁぁ!!!『剣術』ゲットォォォ!!!」
「おめでとうニューニャちゃん。楽しそうに木刀振ってたもんね」
「ほほほっ。好きこそものの上手なれ、じゃからのぅ。ニューニャが上達するのは当然じゃわい。もしかすると、1年以内に初級までいけるかもしれんのぅ」
剣術のスキルを手に入れたと喜んでいた。同じ時間訓練していた割には、手に入れるまでの日数に差がある。すでに剣術スキルを持っていることが知られると彼女を傷つけかねない、とラルフは判断。そうなることは不本意だったため、彼女が手にい入れた数日後にスキルを獲得したことにした。
そんな彼の気遣いがありつつも、剣術の初級を手にい入れて3ヶ月後に
《『気力剣』が(初級)から(中級)に進化しました》
また3ヶ月後に
《『剣術』が(初級)から(中級)に進化しました》
そして、その3日後に
《『気力剣』が(中級)から(上級)に進化しました》
剣術より、気力剣の方が伸びが早い。ラルフは最初こそその理由に悩んでいたが、すぐに理解した。気力剣の包囲が伸びやすい理由は、
(基礎が出来てるからだよね。気力の操作が上手いから、その分派生技みたいものは身につきやすいんだろうなぁ。まあスキルが成長しやすくて悪いことはないよね。本当は剣術も同じくらいのペースで伸びて欲しいけど、それは望みすぎって事かな。ペースは遅いけど、できる限りのことはやろうか)
そう決めたラルフは、今までと変わらず毎日欠かさず鍛錬に打ち込む。剣を振り、気力を操り、着実に自分を成長へと導いた。着々と迫っている脅威へ対抗するために。
そして、ついにその日がやってきた。
「た、大変だぁぁぁ!!!!」
「ま、魔物が襲ってきたぁぁぁ!!!!!!」
最初に村が魔物の襲撃を知ったのは、外に出ていた猟師達の報告によるものであった。慌てた様子で戻ってきた彼らに、村の者たちは不思議そうな目を向けている。まだ彼らは事の重大性を認識していなかった。
「魔物が襲ってきたってどういうことだ?」
村人の1人が代表して質問する。猟師達は身振り手振りを利用しながら、
「そのまんまだよ!村の近くに沢山の魔物がいやがったんだ!」
「しかも、こっちに向かってきてる!今すぐ逃げねぇと!!」
そこまで言われて、村人達の表情が変わった。数人はすぐに家へと駆け込み、逃げる用意を始めたようである。だが、それでももう遅かった。
「ギャァァァァァ!!!!?????」
「魔物が来たぁぁぁぁぁぁ!!!?????」
村の入り口の方。村の中でも森に近い場所から悲鳴のような声が聞こえてきた。直後、村人達の目に人で無いものの影が映る。
背が低く緑色のゴブリン。図体が大きく豚のような顔をしたオーク。村人達が見たのは、そんな魔物達だ。すぐに村人達は反対側の出口へと走って行くが、
「う、嘘だろ⁉こっちもかよ!」
「そ、そんな⁉」
全ての出入り口が魔物に侵入されていた。こうなるとやれることは1つしかない。防衛と抵抗だ。顔を青くしながら女性や子供達は木々を並べてバリケードをつくっていく。男性陣は、抗戦のために武器を取った。
(僕が出たいって言ってもダメだろうなぁ。でも、このままだとゲームの通りになっちゃうだろうし)
ラルフはバリケード作りに協力しながら考える。少しの焦りをにじませながら、武器を持つ男性達を見つめる事しかできない。焦りを感じているのは同じくゲームの知識を持つニューニャもだ。時折自分の腰に下げている剣をにぎったりラルフのことをチラチラ見たりして、落ち着きがなくなっていた。ラルフも何度か心が乱れそうになったが。、そこは精神統一のスキルで無理矢理落ち着かせていた。
そうしながら焦りに耐え忍ぶこと数分。男性陣と魔物達の戦闘音を聞きつつ待機していると、当然横から大きな音が響いた。音がした方に顔を向けると、隣にあった家の壁が破壊されていて、
「「「キャアアァァァァ!!!?????」」」
近くにいた者たちから悲鳴が上がる。壊れた壁の向こうから魔物達が現れたのだ。
(嘘⁉魔物が奇襲してくるの⁉)
魔物達に高い知能は存在しないというのが常識だ。だが、そんな常識をあざ笑うかのように魔物達は奇襲を仕掛けてきた。まるで、最初から弱い女子供を狙うつもりだったとでも言うように。
(って、壁際に母さんがいるじゃん!)
「ハアアアァァァァァ!!!!!!!!」
魔物達の近くに母親の姿を認識したとき、ラルフは全力で駆け出していた。ここに勇者になり得る存在がいなければ、ゲームの通り魔物達の虐殺が成功していただろう。彼らの奇襲は的確だったが、それまでだ。圧倒的な力を持つものがいれば、そして、その存在が本気になれば、




