第4話 残念!幼馴染も転生者でした!!
「ヴァーム爺が変なことしてるから一緒に見に行かないかと思って。なんか、長い木の棒を持ってブンブン振り回してるの」
「へぇ~。そうなんだ。……じゃあ行ってみようか」
ラルフは地面に手をついて立ち上がる。表面上はただの好奇心で動いているようだが、その中ではひどく打算的なことが考えられていた。
(ヴァーム爺。ゲームの中のラルフが尊敬してた剣の達人だよね。元騎士団長とか言う設定だったはず。この村が襲われたときは最前線に立って魔物と戦うんだっけ?)
なぜそんな重要人物がこの村にいるのかは分からないが、ラルフは主人公補正ならぬ攻略対象補正だと無理矢理納得していた。
ブォンブォンッ!
「はっ!そいや!!」
気合いと共に振り回される木刀。気合いだけ聞くとあまり格好良さはないが、剣の振り方は綺麗で何か感じるものがある。剣豪っぽさが白髪の男性からにじみ出ていた。
(ん~。いいね。この人から剣を習っておけば、ある程度戦えるようにはなりそう)
そんなことを考えながらニューニャと共に、ヴァーム爺と呼ばれる白髪の老人の剣を眺め続けた。暫く見ているとヴァーム爺は剣を止め、ラルフ達の方を見つめ返してくる、それから優しい笑みを浮かべて、
「そういえば、ラルフ達は5歳を超えたんじゃったのぉ。……そろそろ剣をやってみるか?」
「えっとぉ」「やる!その変なのやる!!」
ラルフが答えに戸惑う素振りを見せるが、ニューニャは参加の意思を示した。それからラルフにキラキラした目を向けてきて、
「ラルフも一緒にやろ!」
「え?う、うん……」
ラルフも半ば強制的に参加させられることが決まった。勿論内心では大喜び。
(ヴァーム爺に鍛えて貰えるなら、剣術のスキルとかも覚えられそうだね!これで生存率が更に上がりそうだよ)
ラルフも家族も生存率が上がる。願ってもいない状況だ。
では、なぜ彼は迷う素振りを見せたのか。それには当然理由がある。その理由は彼の目の前にいる少女、ニューニャの存在があるからだ。じつは彼女が異世界からの転生者なのではないか、ラルフはそう疑っている。
疑う理由は勿論あり、その最もたる理由が、
「ニューニャは前から剣を習いたがっておったからのぉ。ラルフにもかなり習わせたがっておったし」
「ふふふっ。ブンブンしてるの楽しそうだから!」
そう。彼女は剣を振りたがっていたのだ。ラルフにはそれが大きく引っかかっているのである。原作だと彼女は争いを嫌う傾向にあり、剣術を習うなど考えられることではなかった。そして、それに加えて無理矢理にラルフも参加させようとしてくる。まるで、何かに焦っているかの様に。
そう。この焦りに気付いてラルフは警戒感を強めたのだ。ここで焦るのは、これから何が起こるのか知っている者のみ。そして何が起こるのか知っていると言うことは、ラルフと同じくゲーム知識のある転生者の可能性が高い。
(で、問題は僕も転生者だって明かすかどうかなんだけど。………なしだよね。信用できる人だとも限らないし)
ラルフはかなり疑い深い性格で、ニューニャのことを信用することが出来なかった。
友人としては認めているが、親友としては認めていないと言う距離感である。それに、親友だとしても彼が転生者であると打ち明けることはなかっただろう。何せ、彼が今世こそ守りたいと思っている家族にさえその秘密は話していないのだから。
(家族に話してない秘密を友人に話すとかあり得ないよね。他の人がどうかは知らないけど、僕は家族が1番大切だから)
「じゃあまずは素振りを、………と、思ったが、楽しくないかもしれんのぉ。折角じゃし、2人と1回ずつ模擬戦をしてから基本を教えることにするわい」
「は~い!」「はぁい」
ニューニャはテンション高めに、ラルフは低めに返事をする。模擬戦と言うことで、2人には木刀が手渡された。その木刀を見たニューニャがぽつりと、
「木刀、修学旅行で買って以来かも」
しみじみした雰囲気で呟いた。そして、ラルフの中で彼女が転生者であることが確定したのであった。
(この子、修学旅行で木刀を買うタイプの子なんだ。面白い子だね……と、ここは転生者ってバレないためにも)
「しゅうがくりょこうって何?」
「え?あ、いや。何でもないよ!何でも……アハハハッ」
慌てて誤魔化すように首を振り、乾いた笑みを彼女はこぼした。その様子を見て彼が首をかしげると、表情にどんどんと焦りの色が表れてくる。そして、
「ヴァ、ヴァーム爺!私、先に模擬戦やる!」
「うむ。では木刀を構えるのじゃ」
模擬戦に逃げた。ラルフは内心苦笑しつつも、外側では不思議そうな様子を見せる。
そして、そんなラルフを視界に入れないようにしながらニューニャは木刀を振り上げ、ヴァーム爺へと走って行った。その後行われる数度の打ち合い。基本的にはニューニャが攻撃をして、ヴァーム爺が受けるという構図だ。最終的に十数回打ち合ったところで、
カンッ!
「あっ⁉」
ニューニャの木刀がはじかれ、手から飛んでいった。彼女は飛んでいった剣を見つめて目を見開き、自分の首筋に当てられたものを感じて首を振る。それから諦めたような表情と共に両手を挙げ、
「降参だよぉ~」