第38話 残念!襲撃でした!!
「どうしようかなぁ~。会ってみて良い感じだったら、婚約を申し出ちゃうかもね。公爵家も、王家との繋がりは欲しいでしょ~?」
「「「なっ⁉」」」
レアムの視線が、ラルフ達に向けられる。確かに王家との繋がりは重要なので、ラルフに縁談が降ってくればすぐに承認されるだろう。アイゼルもコルイフとの婚約があり得る(高確率)が、王家の繋がりなんて幾らあっても悪いことはない。公爵なら喜んで頷くはずだ。
「し、しかしですね。ここは早く好きになった私たちに」
「何言ってるの?恋愛は争いなの。早いか遅いかは関係ないんだよ」
「我が深淵が暴走するかもしれんぞ?」
「その時は王家の権力が暴走するかもね」
「そ、側室に入ったりすることは?」
「さぁ?公爵様次第じゃない?」
キャンキャンと吠え合う3人とレアム。ラルフはいたたまれない気持ちで苦笑いを浮かべた。取り合っているのが自分だというのがなんとも言えない気分にさせる。実に居たたまれない。
そんなときだった、
「キャアアァァァァ!!⁉???」
悲鳴が響く。王宮では非常に珍しいことだ。
「何ですの⁉」
「だ、誰か確認に!」
コルイフが騎士に指示を出そうとした、その時だった。ドンッ!と言う衝撃音と共に、近くの壁が吹き飛ぶ。そして、そこから現れるのは、
「その首もらったぁぁぁ!!!」
「「「ヒャッハアアアァァァァァ!!!!!」」」
数十人規模の賊。いや、賊と言うより敵、魔族だ。
「なっ⁉なぜここに魔族が!」
「ひっ⁉ま、魔族!」
「騎士達!姫様達を守りなさい!」
驚くコルイフと、悲鳴を上げるレアム。勇者パーティーの3人は、突然のことにまだ反応が出来ていない。その中で指揮をできるのは自分だけだと判断し、ラルフは素速く騎士達に指示を出す。
すぐに騎士達は指示に従い、コルイフとレアムの前へ立った。魔族の数も多いが、騎士と勇者パーティー3人がいればある程度持つだろうと考えられる。そこでラルフは、
「ライラ!ルル!ディーナ!お兄様達を任せましたわ!私はラルフを呼んで参ります!スティラ!着いてきなさい!」
「はっ!」
3人へアイゼル達のことを頼み、返事を聞く前に自分は1度離脱する。スティラもしっかり後ろを着いてきた。勿論走るときも貴族の子女としてスカートの端をつまみ、小走りになっている。
(バレたら困るから仕方ないんだけど、走る速度遅っ!)
「「「「…………え?」」」」
取り残されたモノたちは、ビッティーの姿をしたらルフが見えなくなってから正気に戻る。そして、顔を見合わせて、
「「「「え?逃げた?」」」」
そう呟いた。ラルフを呼ぶなどと行っていたが、ラルフの居場所など分からない。呼んですぐに来ることが出来る場所だとは思えなかった。唯一理解しているアイゼルも、それを払拭する回答は持ち合わせていない。ただ、すぐにラルフが戻ることを祈ることしか出来なかった。
「と、とりあえずルル!結界を張ってくれ!」
「う、うん。『結界』」
ビッティーを追うわけにも行かず、勇者パーティーの3人も戦闘をすることに。まずは結界騎士のルルが、周囲に結界を張った。これで、アイゼル達への公的はある程度防げるようになる。
それから、
「乱戦になる前に攻撃をしなければな。永遠と終焉、闇を司りし我が……」
「ふっ。では我は深淵を宿らせてやることにしよう。漆黒の体、禁忌の肉体、呪われた心。深淵を示せ!『身体強化』」
賢者のライラが魔法の詠唱を始め、聖女のディーナが全体へバフをかける。ディーナの詠唱に関しては明らかに変なのだが、それを気にしたら負けである。たかが身体強化の魔法で、そんな厨二病全開の詠唱を行う必要は無い。もう少し精神的ダメージの低いモノで良いはずなのだ。
「よし!聖女様のバフが掛かった!前衛は守りに徹し、攻撃は後衛に任せろ!」
「「「「おおぉ!!!」」」」
騎士達は前衛が盾を構え、後衛が弓を構える。完全に防衛体制だ。殲滅能力は非常に低いだろう。
だが、それでいいのだ。騎士達の目的は王女やアイゼルを守ること。しばらく守れば、援軍が駆けつけてくるはずなのだ。
「…………よし。詠唱完了だ!『サンダーポール』」
ここでライラの詠唱も終了。大きな雷の柱が敵の中心辺りに発生した。一瞬で周囲の敵は焼け焦げた。
「おぉ!さすがは賢者様!」
「このまま削るぞ!」
「「「「おおおぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」
ライラの魔法を見たためか、先ほど以上に気合いが入っている。だが、結局やることは変わらない。相変わらず守りに徹した陣形だった。
とはいえ、このまま拮抗していれば問題ない。それが騎士たちの目的なのだから。しかし、そう上手くいかないのが現実というもの。突然騎士達の一部が、
「「「「ぐわああぁぁぁ!⁉???」」」」
「なっ⁉吹き飛ばされた⁉」




