第36話 残念!ハーレムはこっちでした!!
2話目です
「あら。今気づいてしまいましたわお兄様。良かったですわね。お兄様以外男性がいらっしゃいませんわ。ハーレムでしてよ。ハーレム。一体どんなことをされる予定なんですの?」
「ビ、ビッティー⁉」
ラルフの言葉に、アイゼルは焦った表情を見せた。まさか、ここで自分へ矛先が向くとは思っていなかったのだろう。コルイフの前だからなのか、その慌て方はなかなか見られないものだ。
だが、さすがはアイゼルと言うべきか。すぐに表情を取り繕って、
「ははっ。でも、勇者パーティーの3人はラルフが呼んだんでしょ.僕のハーレムにはならないんじゃないかい?」
「そうですの?では、王族ハーレムとはお兄様もすさまじいですわね。あと、3人に声をかけたラルフはおりませんわよ。ここでお兄様の毒牙に掛かるわけですわね。勇者から奪い取るなんて流石お兄様ですわぁ」
そんな言葉と共に、冷ややかな視線を送っておく。これで、新しくやってきたレアムにもブラコンのイメージを植え付けられたはずだ。
「やめて⁉ひどい風評被害だよ!コルイフ!違うからね!ハーレムとか全然考えてないから!」
「分かってる。安心してくれ。……ふふっ。普段は見れないアイゼルの表情だね。私もちょっと嫉妬してしまうな」
そして、アイゼルへの微笑ましい印象も植え付けられる。かなりお茶会に集まっている者たちは、アイゼルへの好感度が高まっていることだろう。
いじられキャラ枠だ。見事なまでの兄妹マッチポンプである。
「あのぉ。……遅れたから申し開きもないんだけどさ、自己紹介してくれないかな?」
「コルイフ様にでも聞いて下さいまし。1人のために自己紹介するなんて時間の無駄ですわ」
「ぐふっ!」
ラルフの言葉で、レアムは精神的ダメージを負ったようである。胸を押さえて、姉であるコルイフにもたれかかった。そして、泣き真似をしながら、
「うぇ~ん。悪いのは私だから、何も反論できないよぉ~。皆の名前教えてお姉ちゃ~ん」
と、説明を求めた。コルイフもそれに答えていく。面倒見の良い姉だ。
(もしかしたら、面倒見が良いってアイゼルにアピールしたいのかもしれないけどね。アイゼルもビッティーって言う妹がいるし、面倒見が良い雰囲気は出てるからね。共通の話題みたいのも狙ってるのかな)
などと思って眺めていると、全員の簡単な紹介が終わる。そして、
「さっきからツンツンしてるビッティーは、アイゼルの妹なんだね!お兄ちゃんが取られると思ってすねてるのかなぁ~?」
レアムはニヤニヤしながら尋ねてくる。この回答は非常に難しい。
(あんまりあっさり否定するのも問題だけど、あまりにもべったりしすぎてもおかしいかもしれないね。中間ぐらいを選んでいかないと)
「と、取られるも何も、お兄様は公爵家の長男!その辺の女どもが腰を振ってこびへつらうのは当然ですわ!妹の私は特別なだけですの」
「……ふぅ~ん。そんなこといってるけど、ライラ達はどうなのぉ~。やっぱりアイゼル狙いだったりする?」
レアムの視線が、今度は勇者パーティーの3人へ向けられる。その表情はどこか揶揄うような物だ。ライラ達も顔を赤くし、焦っている様子。
(性格悪いねぇ。アイゼルもかなりイケメンだし、優しくもされてるから惚れるでしょ)
と、思ったのだが、
「そ、その、すみません。私はアイゼル様ではなくラルフのことが……」
「わ、我もラルフが……」
「じ、実は私も……」
3人は恥ずかしがりながら、レアムの言葉を否定する。それを聞いて、
「………………え?」
女装ラルフの口から困惑の声が漏れた。何せ、好きな相手がアイゼルではなく自分だというのだから。
(ま、マジで?僕なの?)
「ふぅ~。ラルフの方がハーレムじゃん。……ねぇ。ビッティー」
先ほどのお返しだとばかりに、揶揄うような笑みを浮かべながらアイゼルが声をかけてくる。ラルフは極めて落ち着いた表情になるよう取り繕いつつ、
「驚きですわ。あんなのが好かれるとは。……ただ、3人には言っておきますわ。我が家の庇護下に入った時点で、勇者には我が家の選んだ相手と結婚させることになりますの。お父様はまだ何も言われてませんが、自由恋愛は認められないと思いますわ」
その言葉で、3人は少し落ち込むような表情を見せる。
「そっか。選んだ相手と結婚か」
「我らの誰かが選ばれると言うことにはならないのか」
「うぅ。悔しいです」
予想していなかったわけではないようだが、寂しそうな様子を見せる。そんな3人へラルフは何もかける言葉がない。自分で言っておきながら、かなり後悔している。そんな少し気まずい空気が流れるそこへ、救いの手が。
「ん?誰かが選ばれるって、3人同時じゃダメなのかな?ラルフはたぶん貴族になるから、全員と結婚できると思うけど」
「「「っ!本当ですか!!」」」




