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第31話 残念!お見合いが決まりました!!

本日2話投稿します。

基本的に貴族や王族は10歳まで公式の場へ顔を出さない(ラルフは最近知った)。血のつながりがあるような貴族関係であれば話は別だが、基本的に貴族の子息や子女を今の年齢では見ることが出来ないのだ。ラルフより1歳年上でしかないアイゼルも第2王女も、その習慣に当てはまる。

だが、その習慣を無視して顔を見ることが出来るのが、お見合いである。基本的にアイゼルのように公爵家などの人間は政略結婚へ出されることになるのだが、身分が近いのであれば恋愛結婚でも構わない。どちらかと言えば夫婦仲が良好な方が家の運営は行いやすいので、そちらの方が良いくらいだ。


「……じゃあ、ちょっとお父様にお願いしてみようかな」


「ええ。頑張って下さい。アイゼル様に対等な関係の方が出来ること、心からお祈りしております」


「はははっ。……そっか」


アイゼルは笑みを浮かべる。少しだけ、悲しげな笑みを。


(僕とも仲良くなりたいけど、そうはできないって分かって悲しんでるのかな?身分差もあるし、僕も進んで距離を詰めようとはしないし。僕と対等な関係と言えるようになるのは難しいって気付くだろうね)


ラルフはアイゼルの気持ちを想像する。だが、そうだとしてもラルフは行動を起こさない。なぜなら、


(下手に公爵家から睨まれて、両親に被害が出るのは嫌だからね。友人より家族。これ常識!)


ラルフはこういう性格なのである。例え家族とそれ以外の全人類の命の重さを比べても、必ず即答で家族を取るくらいには愛が重い。最近では家族に会えていない分、余計にその家族への気持ちは強くなっている。ラルフにとっての家族は、成長に欠かせない物であると同時に彼の弱点ともなり得る。


「……さて、僕はそろそろ寝ようかな」


「そうですね。私も寝ます。そろそろ恥ずかしい気持ちでもだえることも無さそうですから」


「ああ。そうなんだ。それは良かっ………た?え?恥ずかしい気持ちでもだえる?」


アイゼルは困惑した表情でラルフを見てくる。それにラルフは清々しい笑みを浮かべて、


「ええ。なかなかビッティー様への変装は、心に来るものがありまして」


「あっははっ!それかぁ。たしかに、アレを真似するのは慣れないと恥ずかしいかもね。性格も似せるんだったらなおさらだね」


「そうなんですよ。……あぁ。もし第2王女様と仲良くなられたら、ビッティー様も呼んで下さい。練習したいので」


「いいよ。でも、ラルフ君もなかなか豪胆だねぇ。王族を練習代に使うなんて」


「そう思えますか?しかし、王族様の前でどうにかなるなら、それ以外の貴族様の前でもどうにかなるような気がするんですよね」


「まあ、確かにそうなんだけど。……ははっ。なんか、ラルフ君のことを誤解してた気がするよ。僕とは違う世界の超人的な存在なのかと思ってたけど結構普通の所もある子なんだね」


「当然ではないですか。私は平民の出なのですから。これでも公爵様にお声をかけて頂く前は、一生農家として生きていくつもりだったのですよ」


とはいうが、王族を練習台にするような子供が普通の子な訳がない。こういう所の認識も、公爵家ならではだろう。


(さぁて。寝よ寝よ。明日もどうせ、ビッティーの変装の訓練しなきゃいけないんだろうからなぁ。……明日は、スティラに乗せられないようにするんだ)


ラルフはフラグのようなことを考えつつ、自分の部屋に戻っていく。去って行く彼の背中を見つめるアイゼルの視線は、どこか柔らかかった。


「……ですわぁ~!!!」


「良いですね。次はもっと自信溢れる感じで行ってみましょう」


「ですわぁ!!!」


「素晴らしいです.才能がありますね」


結局、ラルフはスティラの術中に陥った。黒歴史を量産しまくったわけである。


数日後。


「あっ。ラルフ君。お見合いが決まったよ。……って、どうしたの?元気無さそうだね」


「気にしないで下さい、例の仕事で、黒歴史が積み重なっているだけです」


「あっ。……お疲れ様」


とても同情のこもった瞳を向けられた。ラルフはそれを忘れたいという風に激しく首を振って、


(アイゼルの方に集中しなきゃ!そうすれば黒歴史は忘れられるはず!第2王女とのお見合いの話だよね)


「それより、決まったんですね。とりあえずおめでとうございます。気の合う方であることを願っております」


「ありがとう。……どんな子かなぁ」


アイゼルは遠くを見る。まだ見ぬ第2王女に思いをはせているようだ。

因みに、ラルフは第2王女を知っている。しっかりとゲームに出てきたのだ。主人公のライバルキャラとして。


ほとんどの攻略対象のライバルキャラは悪役のビッティーだ。しかし、ビッティーの兄であるアイゼルだけそうはならない。流石に兄妹と言うことで、嫌がらせこそ有るものの争いは起きないのだ。そこでビッティーの代わりにライバルとなるのが、第2王女。ビッティーと違い性格も良く、主人公とアイゼルが結ばれるグッドエンディングであっても悲惨な最期を向かえることもない。グッドエンディングでない場合はお察しだ。

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