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第29話 残念!乗せられて黒歴史でした!!

「ま、まあ、お前が仲良くしたいというのなら構わないが」


「そう?良かったぁ~。僕、同年代の友達が少ないから困ってたんだよねぇ。……公爵の屋敷、年上のお兄さんお姉さんばっかりで」


ラルフは遠い目をする。3人も流石にそれには同情した視線を向け、


「は、話し相手くらいなら、なっても構わないぞ。年上ばかりは辛いよな」


「う、うむ。深淵について語ろうではないか。気まずいのは分かる」

「え、ええと。今度3人で集まるときに誘いますね」


「……うん。ありがとう」


3人の温かい言葉に、ラルフは割と真剣に感謝した。そして数秒3人を見つめる。3人はその視線の意味が分からないのか首をかしげていたが、


「じゃあ、次の命令いくね。次がとりあえず今のところ最後の命令だから」


「なっ⁉まだ命令があるというのか⁉」


3人の表情が変わる。先ほどの同情心は消え去り、警戒心も戻ってきてしまった。ラルフは折角集めかけていた信頼を、自分で手放そうとしているのである。


「ふふっ。そんなに警戒しなくて良いよ。こっちはどちらかと言えば、お願いみたいな物だから。……3人には、もう今回みたいに自分を売るようなことはして欲しくないんだよね」


「……どういうことだ?」


警戒しつつライラが聞き返してくる。ラルフはそれに笑みを返し、


「簡単だよ。3人が自分を売るような賭けをしたら、相手が卑怯な手を使うかもしれないでしょ。誰かさんみたいに」


「あ、ああ」


誰かさんがラルフであると言うことを察したのか、ライラは微妙な声で返してくる。どう反応したら良いのか分からない様で、ディアナとルルも微妙な顔。ラルフはそちらにも笑みを送りつつ、


「3人は可愛いんだから、もっと自分の身を大切にしなよ」


「なっ!」

「可愛い⁉」

「あ、あわわっ⁉」


顔を赤くする3人。


(可愛いって言われるだけで顔を赤くするなんて、3人とも初心だなぁ~。……いや。この場合は年齢的に、おませさんなのかな?まあどっちでも良いけど)


「じゃあ、今日はここまでにしとくね。仲良くしたいし、たまには遊びに誘ってくれると嬉しいかな。じゃあねぇ~」


3人が復帰しないうちにラルフは立ち上がり、部屋から出て行く。その顔には、どこか楽しげな笑みが浮かんでいた。



一方、ラルフに置いていかれた3人は、


「わ、私が、可愛い?」

「わ、我が可愛い、だと?」

「あ、あひゅ~~」


可愛いと言われなれてこなかった3人。その3人へ幼いとは言えイケメンなラルフの可愛い発言は爆弾だった。ライラとディアナは顔を真っ赤にしながらうわごと繰り返し、ルルに至っては口から湯気が出ている。

こうしてラルフは、原作とは形が違うがパーティーメンバーから好意を寄せられることとなるのであった。

そんなことになっているとは知らないラルフ。彼は、公爵の元へ戻るとそのまま屋敷へ。そして、


「私、ビッティー・セーナですわぁ!」


「良い感じですね。ただ、もう少しビの音を高くした方が」


「ビッティー・セーナですわぁ!」


「それですね。完璧です」


(あぁ~。ビッティーの演技とか最悪なんだけど)


ラルフはスティラから演技指導を受けていた。それも、よりによってあまり好きではないビッティーのである。仕事だからやっているが、そうでなければ怒りと共に暴言を吐いて変装セットを投げ捨てていただろう。

今の練習内容は変装ではなく変声なので、投げられるようなモノは無いのだが。それでも、ストレスは溜まる。唯一の救いは、


《スキル『声真似(入門)』を獲得しました》


スキルが手に入って、成果が出たこと。そして、


「素晴らしい。です。上手いですよラルフ君」


普段は厳しめのスティラが褒めてくれるところだろう。教育係のスティラも、流石にラルフがビッティーに向けて抱いていた気持ちは知っているようで、できるだけやる気を削がないようにしているようだ。


(はぁ~。スティラさん優しい。本心じゃないんだろうけど、ここまで褒めてくれるとやめようとまではならないね)


決して、操られているとかは言ってはいけない。これはあくまで、やる気が保つような措置を施してもらっているだけなのだ。スティラや公爵家の掌の上で転がされているわけではない。


「ラルフ君。才能がありますね」


「当然ですわ~。オホホホホッ!」


……そう。決して操られたりなんてしてない。

だが、その夜。


「……あぁ~。僕、何やっちゃってんだろぉ。調子のって、あんなノリノリでビッティーの真似をしちゃったよぉ!!」


ベットの中でもだえていた。羞恥心でいっぱいである。今日やってしまった数々の黒歴史がなかんか頭から離れない。そして、それの所為で、


「……寝れない」


眠りにつくことが出来ない。これでもベットに入ってから数時間経っているのだが、全く眠気が襲ってこないのだ。


「ちょっと水でも飲もうかな」


落ち着けるために水を飲みたい。そう考えたラルフは、ベットから抜け出して部屋を出た。向かうのは、夜の警備担当者などがいる広間。

の、つもりだったのだが、


「…………ぅぅ」


どこからか聞こえてくる声。この辺りに部屋はないので、誰かの寝言やいびきだとは考えにくい。


(侵入者が捕らえられたのかな?一応僕もいこうか)


もしもの場合も考えて、ラルフも音の発生源へと近づいていく。戦闘が行われているようであれば、ラルフも加勢した方が良いかも知れないから。

結果としてラルフの恐れた事態にはなっていなかった。ただ、ラルフが近づいたことは正しい選択だったと言える。


「ビッティー。……ビッティー……」

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