第22話 残念!協力は無理でした!!
「面を上げよ」
前の方から声が掛かる。王の声だ。ラルフはそれだけでは顔を上げず、3回ほど顔を上げるように指示が出されてから顔を上げた。位の低いものは何度か呼びかけがあってから顔を上げるものなのなのだ。
が、少女達はラルフとは違って1度目で上げていた。
(あんまりそっちの教育は行き届いてないみたいだね。職業を変えるための訓練が忙しくて、そっちまで手が回らなかったのかな?)
ラルフは冷静に評価する。そんな彼を見る貴族や王の目は好意的なものが多かった。女の子3人の作法がなっていなかっただけに、セーナ公爵家の教育の高さを貴族達は感じ取っているようである。
それからそれぞれ王から声がかけられ、返事をして抱負やらを述べていく。これは事前に言う文章を公爵から考えておくよう言われていたので問題はない。少女達も問題なく述べていた。
……ディアナが厨二病全開だったのは言うまでもないが。
「……では、これより就任の儀を執り行う!」
それぞれの抱負を述べ終われば、正式な就任が始まる。ラルフを含め勇者パーティーとなるモノたちの周りに神官のようなものが集まり、手に持った杖を掲げた。光がラルフ達を包み込み、
《職業『勇者』になりました》
《スキル『勇者流武術(入門)』を獲得しました》
《スキル『鋼の心(入門)』を獲得しました》
職業が勇者に。そして、2つの新たなスキルを獲得した。続いて、
《ワールドアナウンス。ラルフが勇者に就職しました》
《ワールドアナウンス。ディアナが聖女に就職した》
《ワールドアナウンス。ライラが賢者に就職しました》
《ワールドアナウンス。ルルが結界騎士に就職しました》
世界中の全ての存在へと流れアナウンス。それがワールドアナウンスである。ラルフが勇者となったこと。また、少女達がそれぞれの職に就いたことも世界中に知れ渡ったわけだ。ワールドアナウンスを聞いた王は、満足げに頷くと、
「それでは、次に神器選定の儀を執り行う」
そんな言葉が発せられたかと思えば、王の前にいくつかの武器や防具が運ばれてくる。合計で7つ。それぞれが圧倒的な力を持つとされる伝説の武器や防具で、七美徳の神器と呼ばれる物である。4人の勇者パーティーは、それぞれ神器に選ばれる。
ラルフ達が神器に近づいていくと、7つの内4つの神器から光があふれ出しラルフ達に引き寄せられるようにして飛んでくる。ラルフが得たのは鎧だ。
「さて、神器を得た君たちは人類の希望である。その感触を確かめてもらうためにも、最初の任務を与えよう」
「はっ!」
「「「は、はっ!」」」
王の言葉にラルフは即座の返事。少女達が遅れて返答を返した。王は満足げな笑みを浮かべつつ、任務の内容を説明する。
「其方らの最初の仕事は、四天王の1人の討伐である」
「「「「っ⁉」」」」
この王の言葉に驚いたのは勇者パーティーの少女達だけではない。集まっていた貴族達も息をのみ、目を見開いた。
(初っぱなから四天王かぁ~。無茶な要求をするねぇ。……ゲームだと、この任務の達成に3年くらい掛かるんだっけ?3人と仲が悪い今回だと、どれだけ掛かることやら)
ラルフは原作知識で達成に時間が掛かったことまで知っていたので、驚きの感情は抱かない。それよりも、無茶な要求をする王にあきれる。
「4人で協力し、我が前に四天王の首を持ってくるように」
「謹んでお受け」「その必要はない!」
王からの命を受けようとしたラルフの言葉が遮られる。遮ってきたのは、
「四天王の討伐など、私たち3人でどうとでもなる。そこの軟弱な勇者など、魔王戦闘以外では使い物にならないだろう!」
大声で宣言するのはライラ。脳筋な賢者ちゃんである。彼女に続いて残り2人の少女達も、
「ふっ。我が覇道の前に敵はいない。勇者の出る幕はないだろう」
「え、えと。勇者君はいらないです」
散々な言われようである。ラルフは苦笑を浮かべるほかなかった。この光景を見ている王は興味深げに笑みを浮かべ、貴族達は困惑した表情。
「……お三方がどの程度強いのかわかりませんが、安全性の観点からも考えまして共に行動するべきだと思うのですが」
ラルフはできるだけ刺激しないように発言する。だが、それが逆に臆病なように捕らえられてしまったようで、
「ふむ。勇者は自信がないようだな。ならばせいぜい安全な場所で指をくわえて待っていると良い。私たちが勝利を勝ち取ってくるからな……もし勇者が四天王を仕留められるようなら、私たちのことは奴隷にしても構わないぞ」
ニヤリと笑ってラルフを見るライラ。彼女を支援する公爵が、表情を変えているような気もする。だが、それには気付いてないのか分からないが、ライラに続いて、
「ふははっ。それは面白いことを言うな。まあ、万に一つもありえんし、我より先に四天王を仕留められるというのならそれも構わないぞ」
「え、ええと。まあ良いですよ。勇者君、弱そうですし」




