第9話 残念!もっと強いのがいました!!
(弓矢持ちは早く倒さないとね。逃げてる人たちを狙われたら溜まったものじゃないし)
「ハァァァァ!!!!!」
「ゴブッ⁉」
適当に近くで倒れていた魔物にとどめを刺しつつ、その死体を拾って弓矢持ちに突撃した。弓矢持ちが近距離線に持ち込まれて対処できるわけもなく、そのまま死体と衝突して吹き飛ばされた。
「まだまだぁ!」
「「「ゴブゥゥゥ!!???」」」
ラルフは持っている死体を振り回す。次々に弓矢持ちが死体で殴られ、魔物達は遠距離攻撃を失っていった。だが、敵が落とした弓は地面に散らばったまま。拾われたらまた遠距離攻撃を使われてしまう。
(それなら、使われる前に)
「ほいほいほい!」
ナイフを振ると共に発せられる、プツプツという糸が切れる音。いや、糸という表現は正しくないだろう。彼がきっているのは、弓の弦だ。弦が切れれば、弓が本来の役目を果たすことは不可能となる。
《スキル『武器破壊(入門)』を獲得しました》
(へぇ。武器破壊ね。そんなスキルまであるんだ。……まあ、役に立つなら何でも良いけど)
スキルの幅広さに半ばあきれつつも、彼はナイフを振り続ける。すでに彼のナイフはボロボロ。それでも、彼の剣術と気力剣のスキルのおかげでどうにか刃物としての役割は果たせている。だが、寿命が近いのは間違いない。彼はその役目を終えさせる相手として最も適した相手を探る。周りを見回し、すぐに狙いを定めた。
「ブモォォォォ!!!!!」
狙いはオーク。ゴブリンより一回り大きく、威圧感がある存在だ。だが、これを倒すことが出来ればゴブリン達の士気が下がることは間違いない。それに加え、彼が目をつけた個体は棍棒を振り回し周りの魔物達を鼓舞しているようにも見える。
(指揮官的役割を持ってるなら絶対潰したいね。持ってる武器としては棍棒だから、遠距離からなら一方的に攻撃できそうだけど)
遠回りしつつその個体に近づくラルフは、オークを倒すための方法を考える。まずはすれ違いざまに1対。ゴブリンの首をはねた。
「ゴギュッ⁉」
「よしっ!成功!」
一瞬変な声がしたが、すぐに頭が身体にバイバイした。彼はそれには目を向けず、ゴブリンの持っている棍棒の方を見る。すぐに死体から棍棒を奪い取り、
「それっ!」
投げた。放物線を描きながら回転してオークへと向かっていく。
カンッ!
「ブオォ!」
だが、結果は芳しくなかった。あっさりとオークの持っていた棍棒ではじかれてしまう。そのオークの顔には余裕の表情が浮かんでいた。
だが、これも想定通りではある。ラルフは足を止める事なく今度は倒したゴブリンの頭の方を持って、
「えいっ!」
また投げつける。だが、これはあくまでも牽制だ。オークもそんなことは分かっているのか、手の棍棒で軽くはじく。ラルフはその間に死体の首から下の方を持ち、オークへと走って行く。目的は、
「ていっ!」
「「ゴブゥ⁉?」」
オークの周りにいるゴブリンをどけること。死体を前に構えて突撃し、2対のゴブリンを突き飛ばした。この段階でラルフはオークの攻撃圏内に入ることとなる。オークは持っていた棍棒をすでに振り上げており、
「ブオオォォォ!!!」
「うおっと!」
振り下ろされる棍棒を横に跳んで避ける。丁度その近くには1体のゴブリンが。ラルフは自然な動きで顔にナイフを突き刺し、
「ハアァァァァ!!!!????」
そのままゴブリンの身体ごとオークへと突撃して行った。頭を突き刺された影響で絶命したのか、ゴブリンが抵抗することはない。オークも棍棒を振り下ろしたばかりでまだ反撃の構えは取れておらず、
「ハァァァァ!!!」
「ブオォォォォ!!!????」
突撃を直接受けてしまった。ナイフはまだゴブリンの顔に刺さったままであるため、オークに何かが突き刺さることはない。だが、突撃の影響でバランスを崩してそのまま後ろへゆっくり倒れていき、
「はい。とどめ」
そこへラルフが容赦なくとどめを刺した。他にも数体オークはいたが、全て同じ流れで倒していく。そのおかげもあってなのか、
《スキル『盾術(入門)』を獲得しました》
《スキル『シールドバッシュ(入門)』を獲得しました》
《レベル18になりました》
《レベル19になりました》
…………
《レベル32になりました》
新しいスキルを手に入れ、急激にレベルアップを繰り返す。次々と倒されていく魔物達を見て村人達は勝利を感じ始めていた。そして、その作業を繰り返す彼もまた、勝利の階段を駆けているように思えた。
だが、現実はそう上手く行くものでは無い。このくらいであれば村が壊滅することはあっても、ラルフ達に剣を教えたヴァーム爺は倒せないのだ。つまりそれは、さらなる上位の魔物が存在する証しであり、
「ガアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!」
全身が震えるような叫び声。ラルフは即座に声の主へと目線を向けた。そこにいたのは、頭に2本の角を生やし、迫力のある顔をしたオーガ。ゴブリンは当然、オークでも足元にすら及ばない魔物だ。
「こっちのオーガは1体、か」




