大人の話2
「警備部隊隊長ジンです」
「どうぞ」
目の前の扉をノックするとすぐに入室の許可が出る。
「失礼します」
「早かったですね。では報告を」
入るなり部屋の主に嫌味と笑顔を向けられ頬がひきつりそうになる。
「外警任務中に子供のものと思われる足跡を発見し、侵入者の可能性を考えて捜索を行いました」
「ええ。そこまでは貴方の所の隊員から聞いてます」
「捜索の結果子供を発見、保護することが出来ました。今は医務室で休ませているところです。医療部隊隊長アルベルトによると命に別状はないとのことです」
「それは良かった。それで、肝心の子供から何か話は聞けましたか?」
「いえ、本人には記憶がないようです。自分の名前も森にいた経緯も分からないと言っていました。ですので今のところは何も。それと、個人的な所感ではありますが以前より虐待を受けていた可能性が高いと思われます」
「記憶喪失に虐待疑惑ですか。穏やかじゃありませんね。ふむ。所長もまだ戻ってきませんし、ひとまずは子供の回復を待ちましょうか」
ひとまずとはいえチビの滞在が許可されたことに安心する。
早くチビの所へ戻りたいと内心ソワソワしていると、それを見透かされたのだろう、副所長にため息をつかれた。が、その口元には笑みが浮かんでる。
クソ、面白がってやがる。こういうとこが苦手なんだよこのオッサン。
「もう戻ってかまいませんよ。警備部隊の方には私から連絡しますから、貴方は子供についていてあげなさい。但し報告書は明日中に提出すること」
「了解しました。失礼します」
頭を下げて副所長室を出ると、医務室へ戻る。
心配なのも確かだが、今はあのチビに癒されたい。
◇◇◇
「やれやれ全く。あの男がずいぶんと愉快なことになってますね。これからどうなる事やら。報告書が楽しみだ」
ジンを見送った部屋の主は面白そうに笑うと席を立つ。
「ふむ。隊員達はどんな顔をするでしょうね」
呟きながら警備部隊の詰所へと向かうその顔は非常に楽しそうだった。
ちょっとだけイイ性格のおじ様です。気に入っていただけるでしょうか。皆様、今日もありがとうございます。