はじめましておねえさま
う~ん目が回って気持ち悪い。
ジェットコースターなんて大嫌いだ。もう一生乗りたくない。この柔らかいオフトゥンに一生籠ってたい。って、うん?お布団?
ぬくぬくと布団を堪能していると、少し離れた所から話し声が聞こえてきた。
「何考えてるのよ!こんな小さな子、それも弱ってる子を乱暴に扱うなんて!」
「す、すまん」
「すまんじゃないわよ!全く!」
この声ははジンさんだ。相手の人はもの凄く怒っている。
小さな子ってもしかしなくても僕のことで怒られているんだろうか。
それはいけない!僕の救世主が!今お助けしますよ!今後のためにも!
「あら、起きたのね。気分はどう?」
目を開けるとそこにはジンさんともう一人、イケメンがいた。
ジンさんはワイルドな男前って感じだけど、このお兄さんは王子様みたいなキラキラしたイケメンだ。サラサラ艶々の金髪が眩しい。
「!起きた「は~い、ちょっとお目々見せてね。お口あ~んしてくれる?うん。ちょっとお腹触らせてね~ゆっくり息してみて~」
ジンさんがこっちに来ようとしたのをイケメンが遮った。
というかジンさんがはね飛ばされたように見えたけど大丈夫かしらん…
そしてイケメンはどうやらお医者さんのようだ。テキパキと体を調べられる。
「はい、診察終わり」
「ありがとごじゃます」
「あら、ちゃんとお礼が言えるなんて良い子ね~」
お礼を言うとニコニコしながら僕の頭を撫でてくれた。
おお…イケメンのスマイル&なでなで。投げ銭してしまいそう。無一文だけど。
「アルベルトてめぇ」
「なぁによ文句でもあるの?」
イケメンドクターはアルベルトさんというのか。
ジンさんに睨まれてるのに何とも思わないようだ。ずっと僕の頭を撫でている。っょぃ。
「大丈夫よおチビちゃん。少し痩せすぎだけど、ご飯をいっぱい食べればすぐ元気になれるわ」
そのまま診察結果を告げられた。
え問題なほど痩せてるの僕?やだこわい。
いやでも逆に言えば病気なんかは無いということだよね。よかったよかった。
ただでさえ意味不明なこの状況で病気まで見つかってしまえばそれこそ詰みだ。内心ほっとしていると
くるるるる
「あん?」「あら」
「………」
なんてタイミングで鳴くのだ腹の虫よ!確かにお腹空いてるけども!
腹をなでているとジンさんとアルベルトさんに笑われた。生き恥だ!
「おいアルベルト」
「うふふ、お腹が空いたのね。いいわ、スープくらいなら問題ないから用意してあげて」
「分かった。すぐ厨房に頼んでくる。待ってろよチビ」
そう言うとジンさんは出ていった。
おお…早いなジンさん。
しかし気になるのはジンさんが出ていったその場所である。
あの壁の大穴ってたぶん普通の出入口だったんだろうな。割れた扉が脇に立て掛けてあるし。てゆーか壁にひびはいってるじゃん何あれ。
じーっと見ていると、アルベルトさんがクスクス笑いながら説明してくれた。
「見て分かるでしょうけど、あそこにはちゃ~んと扉があったのよ。けどジンが破壊したの」
「ジンしゃんが…?」
「そう。廊下の方が騒がしいと思ったらいきなりドカン!よ。あのバカが扉を蹴破って入ってきたの。扉は割れるし壁にひびまで入るしほんと何事かと思ったわ」
何それジンさん凄すぎない?鉄かなんかで出来てんの?
「ぶん殴ろうと思ったらぐったりした子供を抱いてるんだもの。ほんと驚いたわ。あの男があんなに慌ててるの初めて見たわ」
え、それってつまり間接的に僕のせいってことでは…てゆーか今ぶん殴ろうって言った?そういえばさっきもジンさんはね飛ばしてたよね。
武闘派イケメンドクターとかキャラ攻め過ぎじゃない?
「そう言えばまだ名乗ってなかったわね。アタシはアルベルト。ここ、国立研究所の医療班を仕切ってるわ。アタシのことは好きに呼んでちょうだい。お姉ちゃんでもいいわよ」
パチンと音がしそうな綺麗なウインクをきめながら自己紹介してくれた。
おお…イケメンのウインク頂きました。眼福。
けど、どうしよう?僕は一応記憶喪失の体の身だ。名乗る名など無い(キリッ)
てゆーかお姉ちゃんって。確かにさっきから言葉遣いが気になってはいたけども。
オネェ系武闘派イケメンドクターとかキャラ攻め過ぎじゃない?過剰摂取じゃない?おっと、返事をしないと。しかしお姉ちゃんでいいのか?…いいか、本人が言ってるんだし。
決して考えるのが面倒になったわけじゃないよ。
「あい、アルねえしゃま」
うまく回らない舌では「アルベルト」はスラスラ言えそうにないので略してみたら
「キャー!可愛いぃ!もう一回呼んでみて!」
大変興奮された。
姉しゃま呼びはおおいに気に入ってくれたようだ。
鼻息荒くリクエストされたのでもう一度呼ぶ。
そして呼んではもう一回というやり取りをひたすら繰り返した。
いつまで続くんこれェ…
ようやく森を出ました。が、また同じ場所での話が続きます。今しばらくお付き合いをお願いします。今日も皆様に感謝します。