いせかいはるのあんまつり1
ぽかぽか春の陽気に誘われて、中庭を散歩中の僕です。
日差しは柔らかで、そよぐ風が髪の毛をふんわりと巻き上げる。
花壇では色とりどりの花が咲いていて、小さな蝶々がひらひら飛んでいる。
空を見上げれば冬の冷たい青とは違う、伸びやかな青。
ピチチ、チュンチュン、とあちこちから小鳥の声が聞こえる。
ゆっくりと歩きながらリスさん達の住処である大樹を目指す。
「あしょびにきたよー」
キキッ
キイッ
「ひしゃしぶりー。げんきにしてた?」
キキッ
キイッ
呼びかけるとすぐに出てきてくれるし、お返事もしてくれるんだよね。
相変わらず賢くて可愛い子達だ。
今日は追いかけっこをしたり隠れんぼをしたりと、アクティブに遊んだ。
◇◇◇
お昼ご飯の時間が近づいてきたので、リスさん達とバイバイ。
来たときとは違う道を歩いてみると、見覚えのある花が咲いていた。
この花は牡丹じゃないかしらん。
フリルみたいな花びらがたっぷり重なったようなキュートでラブリーな花だ。
この間まで寒かったのに、もう咲いてるなんて。随分と気の早い子だなあ。
もしかして僕の知ってる牡丹とは違う花なのかな?
「ノア、何してるんだ?」
「テオしゃん」
しゃがみこんでじーっと花を見つめていると、テオバルトさんに声をかけられた。
「おはにゃきれいー」
「ああ、ピオニーか。俺も好きな花だ」
おお、さすがテオバルトさん。お花好きなだけあって、すぐに名前が出てきた。
ピオニーってことはやっぱ牡丹か。ん?芍薬だっけ?…ま、どっちでもいっか。どっちも綺麗なことに変わりはない。
すんすんと嗅いでみたけど、特に強い匂いは感じない。ということはやっぱり牡丹なのかな。
くるるるる
おっとお腹の虫さんが騒ぎだした。
「テオしゃんいっしょにごはんたべよー」
「ああ、喜んで」
◇◇◇
今日のお昼ご飯はお肉とお豆の煮込みです!
煮込まれて柔らかくなったお肉と数種類のお豆ちゃん達。
こってりした味付けだけど、けしてクドくはない。さすがイワンさん!うまうま
ご馳走様のあとは仕事に戻るテオバルトさんを見送って、僕は図書室へ。
今日のお目当てはお花の図鑑だ。
版が大きくて絵がメインの図鑑があったので、それを読む。
これって写真じゃなくて絵なんだよね。描いた人凄いな。あ、ピオニーも載ってる。
読書を楽しんだあとは医務室へ行ってお昼寝タイム。
そして愉快な仲間たちとお花畑を駆け回るという、なんともファンシーな夢を見たのだった。




