とあるだれかのバレンタイン1
番外編がはーじまーるよー
いつ終わるのかとは聞かないで←
「初めまして。本日の講師を務めますスイーツ研究チームのイワンです。よろしくお願いします」
「同じく、クリスといいます。今日は皆さんのサポートをさせてもらいます。よろしくお願いします」
『よろしくお願いします!』
ざわざわ ガヤガヤ ワイワイ
ここは街の集会所の一室。いつにない賑わいをみせている。
それもそのはず、世界に革命を起こした、いや起こし続けているスイーツ、それを開発しているスイーツ研究チームそのメンバー直々にスイーツ作りを習えるのだ。
その権利を得るための抽選にはこの街の人間全員が申し込んだという噂まで流れた。
あらかじめ申し込みはこの街に籍のある者だけに限定されていたが、それがなければ近隣の街からも人が押し寄せただろう。
それに対する嘆願が山のようにKOUJOUに届き国立研究所副所長であるオリバーが現場に立ち陣頭指揮をとることになったのだ。
話を戻して。スイーツ教室もいよいよ最終日を迎えた。
「それでは、今度は皆さんも作ってみましょう。私とクリスがテーブルを周りますので、何かあれば遠慮なく声をかけて下さい」
『はい!』
◇◇◇
「あ、あの、どうでしょうか、これでいいんでしょうか?」
「ええ、とてもお上手ですよ。大丈夫、そのまま続けてください」
「はい!」
良かった。若い方の先生に大丈夫だと言ってもらえた。
ー料理は鏡なのよ。暗い気持ちで作れば美味しくなくなっちゃう。だから料理を作る時は、誰かのことを想うといいわ。そうすればとびときり美味しくなるからー
料理上手な母はいつもそう言っていた。
チョコレートを混ぜながら頭に浮かぶのは穏やかな笑顔と優しい声。
顔に熱が集まるのが自分でも分かる。ぱたぱたと扇ぎ作業に戻る。
1年近く前の出会いをまるで昨日のように思い出す。
初めてのひとり暮らしに慣れない仕事、親しい友人もいない。そんな生活に心細さを感じるなか、慰めになったのは両親からの手紙だった。
その手紙を届けてくれる配達人。
彼は、この街へ引っ越してきて、籍を移すことを始めとした様々な手続きを手伝ってくれた。
鈍臭い自分に苛立つことも笑うこともせず、根気よく付き合ってくれた。
「ようこそこの街へ。貴女を歓迎します。何か分からない事や困った事があればいつでもご相談下さい」
笑顔でそう言ってくれた。ただの社交辞令、自分のことなど明日にでも忘れるだろう。
そう思っていた。なのに、手紙を届けてくれた時に彼は同じことを言った。
「何か困った事はありませんか?何でもご相談下さいね」
と。以来、彼とは挨拶を交わすようになった。でもそれだけ。
彼はとても親切で、街の人と話しているのをよく見かける。年配の方や小さな子供、男性や女性とも。
彼に特別な想いを持つようになるまで時間はかからなかった。
でも、そのことを伝える気なんて欠片ほどもない。
鈍臭くて、要領も悪い。根暗で友人もおらず、趣味と言えば料理と読書。
そんな自分が、彼を想うこと自体分不相応だ。そんな風に思っていた。
そんなある日、新しい出会いがあった。
あの人のお話です
もちろんハッピーエンドです
彼とは違って笑(酷い)
今日も読んでくださる皆様に感謝します
ありがとうございます




