ざんねんなひと
「うおおお!何でなんだあああ!」
食堂に響き渡る声。それが誰かと申しませば
「ちょっと何事よアレ、アンタのとこのでしょ」
「ああ。どうせいつもの事だ」
いつもの事って、あれが?
「キースしゃんどちたの?」
「どうせまた女にフラレたんだろう」
なんと失恋でしたか。ん?また?いつもの事?
◇◇◇
警備部隊の主なお仕事は、研究員の調査に同行することと、研究所周辺の見回り。
でも全員が常に出払ってるわけではない。内勤仕事もある。
そしてその内勤仕事のひとつに、戦闘訓練がある。
そしてここはそのための訓練場である。その端っこに座り込んで休憩中のリンクスとキースさん、そして僕である。
「キースしゃん、げんきだしてー」
「ううう…」
「つーかキースさん今月で何人目っすか」
「5人目だよチクショー文句あんのかよ!」
5人目!?しかもいま今月って言った!?
「いや、ないっすけど。つーかキースさん惚れっぽすぎなんすよ。毎回おんなじフラレ方してるじゃないすか」
「なんてー?」
「『どうせ本気じゃないでしょ』、『あの子の代わりなんでしょ』って。惚れっぽいうえに切り替え早いから、すぐ次の人好きになるんだよ。で、それを繰り返すから、街の人はキースさんの告白は一切信用してないってわけ」
「うおおお!俺はいつだって本気なのに!花屋のローズも、雑貨屋のマリーも、本屋のソフィーも、食堂のアンヌも、服屋のケイトも!皆本気で好きだったのに!」
うわあ…。フラレる様子が目に見えるようだわ。
男泣きに泣くキースさんを見て思わずしょっぱい気持ちになる僕。
研究所で1、2を争う体格のキースさんが膝を抱えて号泣する姿は色んな意味で痛々しい。
普段は不憫担当でイジられ役のリンクスも、今回は呆れてるみたい。
しかし今月で5人目って、いったい今まで何人の人にフラレたのか…。聞きたいような聞きたくないような。
「うっうう…俺の何処が悪いっていうんだあああ!」
◇◇◇
あれから数日、第二託児所へ行ってみると、鬱々としたオーラを発するキースさんと、それを眺めるリンクス、テディさん、エリックさんがいた。
キースさんは、一応ちゃんと仕事してるみたいだけど、今にもキノコが生えそうだ。
「今回は長引いてるっすねー」
「鬱陶しい…」
「テディ、そんなことを言ってはいけません。いつも言ってるでしょう」
丸まった背中から漂う悲哀に笑いが、いやいや、涙が出そうになる。
いや、だって皆の反応がさあ、ねえ?ぷぷぷ
リンクスは珍しがってるし、テディさんは直球ストレート放ってるし、エリックさんも、心配してるんだか、してないんだか。
まあ、慣れてるからこそ、こんな反応なんだろうけど。
しかし、さすがにちょっぴり可哀想になってきた。
どうにかしてあげたいけど、さすがに色恋沙汰はどうにもしてあげられない。
となると、やっぱりスイーツ作りしかないよね!
ようやく出番がきたというのに不憫なキースさん
彼の恋が実ることはあるのかないのか…未定です←
今日も読んでくださる皆様に感謝します
ありがとうございます




