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スイーツかくめい☆しゅくふくのガレット・デ・ロワ4

『ガレット・デ・ロワ ほしまつりのためのスイーツ ひとりひときれとってください あたりをひいたおうさまは よいいちねんとなるでしょう おうかんをかぶってください おうかんをかぶってるひとをみたらおいわいのことばをかけましょう ちゅうい フォークをつかって、おちついて、ちょっとずつたべましょう 』


食堂に運び込まれた大量のガレット・デ・ロワ。

その横に僕が書いた説明文と紙の王冠を置く。

1人1切れ、と、落ち着いて食べるように、の文言は太字で書いて下線を引いてあるので、大丈夫だろう。たぶん。

よし!じゃあ僕も晩ご飯をいただきましょうかね。


「いたらきましゅ!」

『いただきます』


今日はジンさんとアルベルトさん、おじいちゃんとオリバーさん、リンクスとテオバルトさんの7人でご飯をいただきます。

フルーツソースのかかったお肉は柔らかくてとってもジューシー!とろとろに煮込まれたお豆のスープも、半熟卵がのった温野菜のサラダもふかふかパンも!全部美味しい!うまうま

皆で食事ってどうしてこんなに美味しいんだろうね。不思議だね。

それにしても、おじいちゃんもオリバーさんもかなりの健啖家だ。ジンさん達と変わらない量を余裕で食べてる。しゅごい

そして食事が終わるのを見計らって、イワンさんとクリスさんがこちらのテーブルまで来た。

クリスさんはホールのガレット・デ・ロワを乗せたワゴンを押している。


「イワンしゃん、クリスしゃん、ごちそーしゃまでした。おしごとおちゅかれさまでしゅ」


僕が労いの言葉をかけると皆も続く。それに笑顔で応えるイワンさん。クリスさんはテキパキとワゴンに食器をのせていく。


「よし!じゃあ切るぞ。って奇数か」


僕達7人とイワンさん、クリスさんで合わせて9人。包丁を構えるイワンさんが少し思案する。


「イワンしゃん、じゅっこにきってくだしゃい」


「10個?」


首を傾げるイワンさん。皆も同じようにしている。やだ可愛い。ってそうじゃなくて。

だって今日はあのイケメンにとって、きっと特別な日で。

このガレット・デ・ロワはあのイケメンのための特別なスイーツで。

でも、隠れたがりのイケメンのための言い訳は考えてある。


「おたんじょーびなんでしょ?」


そう言うと、皆きょとんした顔で僕を見る。一拍おいて声を出して笑いだした。


「そうだな。確かに今日は世界の誕生日だな」


「やだノアちゃん本っ当良い子なんだから!」


「ほっほっノア君は優しいですねぇ」


「ふむ。確かに、主役を忘れてはいけませんね」


「よし!じゃあ切るぞ!」


イワンさんによって綺麗にカットされたピースを、僕が指名する順にクリスさんが配ってくれる。

最後の1切れはイケメンの。ちゃんとお皿とフォークを用意してテーブルの真ん中に置く。

そして全員に行き渡った。それでは皆さんご一緒に!


「いたらきましゅ!」

『いただきます』


「おいちい!」

『美味しい!』


ん〜!サクサクのパイ生地に、火が通ってしっとりほろほろ食感になったアーモンドクリーム!なんてお似合いの2人なんでしょう!うまうま

皆もぱくぱく食べている。けど最初にちゃんとコイン(フェーブ)について説明してあるから、比較的ゆっくりと食べている。

じっくり味わい、ついに最後のひと口になった。

が、僕のピースからはコインは出てこなかった。王冠被ってみたかったな。残念。

だれが王様かなあと思ってじっと待ってみる。

ジンさんじゃない。アルベルトさんじゃない。

リンクスもテオバルトさんも違う。

おじいちゃんもオリバーさんもイワンさんも違う。

クリスさん…も違った。

あれれ?ってことは…


「おうしゃま、しぇかい?」


「…みたいだな」


ぷっ。くすっ。ふはっ。


『あはははは!』


誰からともなく笑い出した。

なんということでしょう。異世界初の王様は、異世界そのものということになりました!

仕込みかと言われそうだけど、僕が仕込んだのはコインだけです。

きっとあのイケメンも驚いてることだろう。

手つかずの1切れに王冠をそっと添えた。


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