まおーさまこうりん
「リンクスてめぇ仕事はどうした」
ひっくい声で尋ねるジンさんの背後に雷雲が見えるよ。
ゴロゴロいってるのが聞こえるのは気のせいかな。
「いやいやいや、サボってないっすよ!俺も昨日の報告書書くように言われて午前中は内勤だったんすよ!それでパパっと終わらせて早めに昼休憩入らせて貰ったんす!」
「ならいい」
おお、静まった。ちょっと、いや、かなり怖かった。ジンさんは怒らせないようにしよう。プルプル
「医務室ではお静かにって何度言えばわかるのかしらぁ?覚えられないんなら脳味噌に刻み込んであげましょうか物理的に」
「すんまっせんす!!」
そこに音も無く現れたるは魔王様。
今度はブリザードが見える。急に部屋が寒くなった気がするよ。
それに物理的にってどういうイヤイヤカンガエチャイケナイ。ボクハナニモキイテナイ。
掴まれたリンクスの肩が変な形になってるけどそれもきっと気のせい。
「次に同じことをしたら…」
「肝に銘じます!」
青い顔で敬礼するリンクスにはちょっと笑えるがアルベルトさんの方は見ない。絶対に見ないよ。
折角助かったんだもの。命も下着も惜しい。プルプル
異世界2日目、ジンさんとアルベルトさんを怒らせてはいけないということを学んだ。教材に感謝。合掌。
「おはようノアちゃん。気分はどう?」
「おはようございましゅアルねえしゃま。おなかしゅきました。」
おっと魔王様はお帰りになったようですね。よかったよかった一安心。安心したのでご飯下さい。
「ふふふ。そう言うと思って、先に厨房に声かけてきたの。こっちに運んでくれるそうよ」
なんと。昼食の配達なんて、普通に考えて迷惑だろうに。
「大丈夫よノアちゃん。料理長の方から言い出したの。だから気にしなくていいのよ」
「料理長が?なんでまた?」
「小さな子供の食事だから気になるみたいよ」
ああなるほど、そういうことでしたか。仕事熱心というか、面倒見がいいというか。
ジンさんといいアルベルトさんといい、本当にいい人ばかりだなここは。
最初はどうなることかと思ったけど、ジンさんに拾ってもらえたのはかなりの幸運だ。
これなら今後は何の心配もなく安心して過ごせる。
だから早くご飯ください!
ありがとうリンクス、君の体を張った教育には感謝する。
来て下さる読者様には比べるべくもないが。
今日も読んでいただきありがとうございます