2.首都エルグランデ
少年が遂に学校へと通うときがやってきた。
生まれた小さな町を離れて1人、いや5人で首都エルグランデへと向かう。
「遂に俺の伝説が始まったな」
「マリアが面倒おこさなきゃいいけど・・・」
「可愛い女の子たちが僕を待っている」
「眠い・・・」
馬車の中で1人にぎやかに盛り上がりながら首都への道のりを往く。
わずかな荷物を手に少年は期待に胸を膨らませていた。
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首都エルグランデは大陸で最大の都市だ。隣国に繋がる交通の要所でもある首都は多くの国から文化、技術、産業が集まっている。
そして、最大の特徴は奴隷制を用いていないこと。
首都エルグランデでは亜人も能力によって重用されている。
出自が特別ではない少年の中の1人、マリアが世界最強を目指すにはまさにうってつけの場所と言える。
ところでマリアが学校に通うことを提案したのだが、怠惰なデルフ以外の2人は賛成した。
アルマは大量の書物を読みたいがために、ベントは可愛い女の子に出会うために、もう1人はどちらでもいいと結論を任せた。
結局3人の票が集まり学校へと通うことになった。
彼らが通う学校は通称マギスパーダという魔法と剣の学校だ。
首都エルグランデには存在するだけで運営は各国が互いに金銭を出し合っている。
そして、優秀な人材を自国にスカウトするのだ。
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「おお!ここがマギスパーダか!でっけぇ!」
大きすぎる正門の前で現在の体の操作主マリアは感嘆の声をあげる。
道行く人にくすくすと笑われているが彼はまったく気にする素振りを見せない。
軽やかな足取りでマリアは門をくぐる。
来るものを拒まないマギスパーダは入学するために特別な試験などはないが、クラスを分けるために試験がある。
そこには身分の貴賤はない。ただ上位から順番に分けられていくだけだ。
とは言っても貴族は優れた血統の上に、幼少の頃から専門的な技術を教えられている場合がほとんどで上位クラスは彼らで埋められることがほとんどだ。
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マリアは広すぎる校内をさまよって、やっとの思いで寮へとたどり着いた。校内は1つの街と言ってもいいほどに広かった。
無駄に大きな受付で自分の名前の木札を受け取って指定された部屋へと向かう。
景気よく階段を2段飛ばしでのぼり、206と扉に記された部屋に入る。
部屋の中は非常に簡素な作りだった。
ベッドと小さなテーブルと小さな椅子。それ以外には何もない。
それこそ笑いがこみあげてくるくらいだ。
マリアは勢いよくベッドに飛び込む。薄すぎるシーツは衝撃をほとんど吸収せずに彼に返す。
「はは!いてぇ!」
マリアは楽しんでいるが他の3人は不満そうだ。
「本棚もないの?作らなきゃ」
「鏡もないじゃないか」
「ベッド硬・・・。最悪・・・」
「いいじゃねぇか。成績残せばいろんな国から良いもんもらえるんだし。お前らも協力しろよ」
優秀な成績を残す生徒は自国に招きたいと考えるのが普通だ。そういった生徒には賄賂が贈られる。昔は金銭の殴り合いに発展してしまったがために現在では金銭は禁じられている。
つまりは、今では立場や技術が最大の賄賂といえる。
しかし、彼らの欲しいものは本棚、姿見鏡、柔らかなベッドと実に子供っぽいものだ。
「楽しみだなぁ」
ベッドに寝転がって天井を見上げてマリアはにやにやと呟く。
明日はクラス分けの試験が行われる。
5人の内で1人は協力してくれないが、4人で協力すれば上位クラスに入ることが出来るかもしれない。
そうなれば、この部屋を豪華に出来る算段が付く。
「はやく明日にならないかなぁ」
不安など欠片もなく、ただマリアは長旅の疲れからぐっすりと眠った。




