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ハッピーエンド。
真夏の明け方。空はまだ薄暗く、生物の気配なんて全くしなかった。
人のいない校舎は昼間の騒がしさなんて想像もつかないほど静まり返っていて、廊下を歩く音がやけに大きく響いた。
私は今から旅へ出る。もう、絶対に帰ってこないし、来れない旅へ、世界でいちばん愛している人と共に。
古い4階建ての校舎の屋上、柵は普段体育で使うハードルと変わらない高さだった。
「ここを飛び越えて先に着いた方が勝ちね!」
私は彼にそう言い、口づけを交わした。
ファーストキスだった。
柵の先には駐車場のコンクリートが広がっている。
「よーいドン!」
私の合図で2人一緒に柵をめがけて走り出す。
彼は、柵を飛ぶ直前に転んだようだった。
「先に行ってるね!!」
届いたかどうかは分からないけど、私は彼にそう言い遺し、飛んだ。
彼を待つことは出来ず、目の前が真っ暗になった。