等身大
短編小説を初めて書いてみました。
至らぬ点や読みにくい部分多々あるかと思いますが、どうか最後まで読んで頂ければ幸いです
ある所に、非凡でもなく、平凡でもない男の子がいた。
彼はいつも笑顔を欠かさなかった上に人当たりもよく、勉学に勤しむその勤勉な姿勢は周囲からの評価も高かった。
両親も優しく、彼の将来は明るい。
と誰もが思っていた。
ところがある日、少年の母が亡くなった。以前から患っていた持病が原因だった。
男の子はひどく悲しみ、周囲はそんな少年を哀れに思い、
「お母さんが天から見ている」
「君なら頑張れる」
と、口々に彼を励ました。しかし男の子は心を完全に閉ざしてしまい、自室に引きこもってしまった。
それから数年がたち、男の子は中学校へ進学し、少年になった。
この頃から、少年はまた明るくなり学校にも通い始めた。
周囲の大人は口々に彼を褒め称えたが、少年の様子は小学生の時とは大きく違っていた。
髪を染め、素行に問題のある友人との付き合いが増えた。当初こそその噂を信じなかった大人たちも、次第に少年を腫物のように扱い始めた。
しかし少年は優秀な成績を修め、難関高校に合格。少年は増長しつつ、本人から見れば順風満帆な青春を送っていた。
見目麗しい恋人や無二の友人を作り、幸せの絶頂ともいえる一年間を過ごした。
そんな生活をしていれば当然だが、少年の性根はねじ曲がり、偏屈な少年となった。
高校二年生になってから間もない頃、少年は不思議な夢を見た。
暖かな光を放つ慈愛に満ちた表情の女神像の目から一筋、涙の雫が零れる夢だった。
その日からの少年は、まるで人が変わったような堕落ぶりだった。
テストでは赤点の常連となり、彼女には振られ友人からは距離を取られた。
その様子はまさに『転落』であった。
少年の学校生活は更に変わり、今まで見下していたクラスメイトから虐められながらも学校へ通い続けた。
そんな彼はある時気付いた。自分が落ちぶれるのと時を同じくして、今まで目立たなかった一人の少女が、友人を増やし、成績を伸ばし、明るくなっていったのだ。かつての自分と同じように。
そのことに気付いた彼は、日々態度を大きくしていく少女と対照的に勉学に勤しみ、生活習慣を改めていき、かつての人間性を取り戻していった。
少年は高校三年生となり、人並みに真剣に進路ついて真剣に悩み、地元の国公立の大学へ進学した。
一方少女は、高校三年生のある時期から成績を落とし、志望校には合格できず、友人もなくし恋人には逃げられていた。
「母さんが僕を不憫に思って、助けてくれていたのだと思う。でも、僕は調子に乗った。そんな僕にお灸を据える意味で助けるのをやめた。今はどこかで僕を見守ってくれていると、そう思う」
久しぶりに会ってあの時のことを質問した俺に、真面目な顔でその青年は答え、小さく笑った。
ふと、あの少女は今どうしているかという疑問が脳裏をよぎり、話題程度に考えて話をしてみる。すると彼は頬を緩ませて言った。
「言ってなかったっけ?僕あの子と結婚したんだよ。それなりに幸せに暮らしてる」
親友のはずの俺に何も言わずに結婚していたことについては少し不満だったが、彼は彼なりに毎日精一杯過ごしている。目くじら立てて怒るほどでもないだろう。
誰でも失敗はする。時には調子に乗って痛い目も見る。
それでも人生は続く。俺も、彼も、あなたも
最後まで読んでくださってありがとうございました!
またどこかでお会いできましたら、その時も読んで頂ければ恐悦至極にございます!