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とうばつムチ!

「北の村付近にゴブリンの巣の発見報告があった。これより緊急での討伐を行う。討伐は全員が参加する。出発は十分後だ。遅れるんじゃねえぞ!」


昼下がりの休憩時間、団長の口から団員全員の動員が告げられたムチ。ムチちゃんも急いで支度しないといけないムチ。


「討伐かー、ひさしぶりやな」

「ティアは経験あるムチか?」

「ああ、2回ほどゴブリンとな。そんな心配せんでもええよ。我らがグレイル騎士団は王国でもトップの練度を誇るさかい」

「練度なら盾の騎士団も負けてないけどね」

「せやな、この2つが王国のツートップと覚えとけばええよ。ムチはん」

「なるほどムチなー」


荷造りの訓練で慣れたおかげか、お話しながらでも素早く支度ができたムチ。ムチちゃん、自分の成長が実感できてうれしいムチ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「点呼──」

「一」

「二」

「三ムチ」

「第十分隊、全員揃いました」

「よし、これで全員揃ったな。時間通りだ。出発するぞ!」


緊急時は徒歩ではなく馬車で移動するムチ。ムチちゃん達はここから100キロほどのところにある北の村に向かったムチ。


村長さんの話によると、さらに北の方にある洞窟付近でゴブリンを見かけるようになったとのことムチ。団の斥候で裏がとれたので、そこに向かうことになったムチ。



「全員傾注! 今回の相手はゴブリンだ。取るに足らない相手かもしれんが、油断せずしっかり殲滅しろ」

「この洞窟は複雑に入り組んだ作りになっている。そのため、分隊ごとにルートを分けて進んでもらう」

「ムチ坊、というわけで先輩方のサポートは期待できないぞ。──ブルったか?」

「なんのムチ! ムチちゃんの闘志は燃えているムチよ! メラメラむちよ!!」


ムチちゃん、初めての討伐でちょっと緊張しているムチ。でも、負けないムチ。やってやるムチ!


「それでは全員抜剣。──突撃!」


騎士団のみんなが一斉に洞窟へ向かったムチ。ムチちゃんたちも急ぐムチ!



◇◇◇◇◇◇◇◇



「えいっ!」

「どりゃっ!」


他の分隊と別れたら、さっそくゴブリンが襲ってきたムチ。ムチちゃんの出番かと思ったけど、前の二人があっけなくやっつけちゃったムチ。共に横なぎの一閃、見事ムチ。


「二人ともしゅごいムチ~」

「へへ、それほどでも」

「ウチも凄いやろ。どや、惚れてもうたか?」

「惚れちゃいそうムチ~ でも、次はムチちゃんもいいとこ見せちゃうムチよ~」


しばらく進むと、大きな空洞に出たムチ。まずいムチ。大勢いるムチ。しかもこっちに気づいているみたいムチ。


「散開ムチ!」


三人が散り散りになって、一網打尽にされるのを防ぐムチ。ここからが正念場ムチ。

丁寧に削っていくムチよ!


「あちょ~ムチ!」


あの日から打ち込みを続けてきたムチちゃんの必殺剣、受けるがいいムチ。


ぽこっ


「ガアッ」


ゴブリンは全然効いていないのか、お構いなしで殴りかかってきたムチ。ムチちゃんは攻撃を盾で受け流し、そのまま足を引っ掛けて転ばせ、間合いを取り直したムチ。


「大丈夫!? ムチちゃん」

「大丈夫ムチ。こっちは足止めに徹するから、レンも目の前に集中するムチ!」


そうムチ。必殺剣が効かなくてもできることはあるムチ。分隊は兄弟、分隊は家族ムチ。ムチちゃんは支援に徹するムチ。


視野を大きく持つムチ。敵を倒すのは二人に任せるムチ。ムチちゃんは"倒しやすい状況"をつくることに集中するムチ。


「ムチイイイイイイイイイイ」


挑発スキルでゴブリンたちの注意を引きつけるムチ。成功率は二の次、一瞬でも気が逸れれば、


「えいっ」

「せいっ」


二人がやっつけてくれるムチ。


「ゴアッ」

「ガアッ」


残った連中が向かってきても、囲まれないように立ち回るムチ。一体一体転ばせていくムチ。スライムに囲まれてボコられた頃のムチちゃんとは一味違うムチよ!


そうやって引きつけている合間にも、


「疾ッ!」


二人の相手へ石礫を投げて注意を引くムチ。視野を塞ぐムチ。一対多にさせないよう、タイミングをずらすムチ。隙の作りようはいくらでもあるムチ。


そうやって三人で削り続けて、とうとう親玉だけになったムチ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「グオオォオオオオオ」


一際大きなゴブリンが雄叫びをあげたムチ。あれはウォークライのスキルむちか?


「エルダーとは珍しいムチね」

「三人でやっつけよう。ムチちゃん、壁役をお願いできる?」

「──いいムチよ!」

「ほな行くで!」


レンとティアがヒットアンドアウェイで攻撃を加えているムチ。ここからでも斬撃の音が聞こえてくるムチ。一撃の威力はないかもしれないけど、塵も積もれば……ムチよ!


それに、


「グガアッ!」


どちらかに攻撃しようとしても、足元に貼り付いているムチちゃんを無視すれば、


「ムチっと」


ムチちゃんの崩しが入って大きな隙を作ることになるムチ。


「えいっ」

「やあっ」


正面からの袈裟斬りに背面からの切り上げ、見事に入ったムチ。


「ガアアアアアッ!」

「大振りになってるムチよ!」


ムチちゃんはエルダーゴブリンの振り下ろしを盾を使ってそらし、地面に打ち込ませたムチ。


「ムチっとな」


衝撃で握りが緩んだ瞬間、体当たりで武器を吹き飛ばしたムチ。


「おまけムチ!」


エルダーゴブリンの足元から駆け上がり、顔面めがけてムチ袋の催涙粉をぶつけってやったムチ。


「止めムチ!」

「疾風剣!」

「霞斬り!」


最後はふたりのダブルアタックでフィニッシュむち。ムチちゃんはすることがなかったから、エルダーゴブリンが崩れ落ちるまで決めポーズを取っていたムチ。欲を言えば爆発が欲しいムチね。



◇◇◇◇◇◇◇◇



討伐が無事終わったので、部屋でゆるめの振り返りをするムチ。今日の経験を最大限明日に活かす。ムッチムチの男になるためにがんばるムチ。


「今日は大変だったムチねー」

「そうだね。ムチちゃん、挑発なんていつ覚えたの?」

「団長が勧めてくれたムチ。二人を守るためのスキルだって言われたから、頑張って覚えたムチ」

「大助りやったで。おおきにな、ムチはん」

「ところで、ちょっと気になったんやけど、ムチはんの(つぶて)ってどこで習ったん? ウチらの印地と余りにも似とるんよ」

「ムチちゃんの師匠はムチ仙人様ムチ。ムチ仙人様は東方で修行したから、きっとそこで覚えた技を教えてくれたムチよ!」

「ムチ仙人! えらいビッグネームが出たな。それなら頷けるわ。ほなら、ウチとムチはんは同じ流派の仲良しさんってことやね!」

「えへへへへ……仲良しさんムチか。なんか嬉しいムチなー」


レンが目の前にやってきたムチ。


「ムチちゃん、無理してない?」

「ど、どうしてムチ ?ム、ムチちゃん無理なんてしてないムチよ」

「ムチちゃん、ウソをつくと体がプルプルするからすぐわかるよ」

「そ、そんなことないムチ。ムチちゃん今日は大活躍したムチ。大満足ムチよ」

「ウソ。ムチちゃん、無理しなくていいんだよ」


レンがムチちゃんに抱きついてきたムチ。体温があったかいムチ。


ムチちゃん、涙が出てきたムチ。我慢していた気持ちが抑えられなくなっちゃうムチ……


「ム、ムチちゃん……いっぱい頑張ったムチよ……いっぱい訓練して、いっぱい鍛えて、でもゴブリン相手に『ぽこっ』だったムチ。全然効いていなかったムチ……」

「ムチはん、全部吐き出しや。ここならウチらしか聞こえんさかい」


今度はティアが後ろからよしよししてくれたムチ。


「みんな強くてずるいムチ! ムチちゃんだけよわよわで悔しいムチ! ムチちゃんも強くなりたいムチ! えいえいって魔物をやっつけたいムチ!!」

「う、う……うええええええええええええん。うええええええええええええん」

「びえええええええええええええええええええええええええええええええん」


ムチちゃん、久しぶりに泣いちゃったムチ。大泣きに泣いて、泣きつかれて寝ちゃったムチ。


ムチちゃん……強くなりたいムチ。

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