ごちそうムチ!
手伝いのお礼に簡単なまかないを振る舞っていたら、あっという間に夕食の時間になったムチ。団員のみんなが続々と大食堂に集まってくるムチ。
全員集まったところで団長が席を立ったムチ。
「全員傾注! 今日は我らが調理部隊長どのが特別な料理を振る舞ってくださる。王城のパーティでも出されるような本格的なコース料理だ。喰い方が分からん奴は俺が教えてやる。騎士になって出世すれば、嫌でもこういう場に出なきゃならん。恥をかかんよう、今のうちに経験しとけ。以上!」
話が終わったところで、ムチちゃん達が全員の配膳をしたムチ。いよいよ食事の始まりムチ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「突き出しは小エビのホットサンドむち。どうぞ召し上がりくださいムチ」
「うめーけどちいせーなー」
「こんなんじゃ腹が膨れねーぞ」
「コースはいろんな料理が出るから、ひとつひとつの料理は小さいムチ。すぐに次の皿を出すムチ」
予想通りの反応ムチ。でも、将来的には最初の突き出しからコースに思いを馳せるレベルに育ってほしいムチ。
「前菜は挽き肉と香草入りのラビオリむち。トマトソースとホワイトソースの二種類でお楽しみくださいムチ」
「こいつもうめーな」
「俺はトマトが苦手だから、こっちのソースで喰うわ」
「スープはジャガイモのポタージュむち。最近少し暑くなってきたから、冷たいスープにしてみたムチ」
「これが俺らが普段喰ってるジャガイモねえ……」
「おっ、こいつはいいや。飲みやすい」
「冷たいスープなんて初めて飲んだぜ」
みんなカチャカチャしているムチね。団長、がんばってマナーも教えるムチよ。
「魚料理はオーソドックスにヒラメを焼いて焼き野菜を添えたムチ。鱗は落としたし、骨も処理してあるので、そのまま食べられるムチよ」
「やっと腹に溜まりそうなのが来たか」
「味付けは塩コショウか。この酸っぱいのはなんだ?」
「ほんのちょっとだけレモンの絞り汁が入っているムチ。まだまだコースは続くから、あっさり食べやすくしてあるムチ」
「口直しはじゃがいものピュレむち。クリーミーでおいしいムチよ」
「うめえ」
「一口で口のなかに広がる濃厚な味わい。牛酪を贅沢に使ったな。ジャガイモも調理次第で化けるのだな……」
「お客さん結構詳しいムチね」
「ああ、これでもそれなりにいいところの出なんでね。一流どころの食事はそれなりに経験しているんだ」
「次はお待ちかねの肉料理ムチ!ちょっと奮発して、香辛料とともにキャラメリゼしたお牛さんのフィレ肉むち!」
「やっと肉が来たか」
「よくわからんが美味い」
やっぱ肉料理の反応はいいムチね。肉イズ男ムチ!
「次はサラダむち。添えたソースか塩で食べて欲しいムチ」
「このソースうまいな」
「野菜は苦手だが、この量なら何とか喰えるな。味もソースで誤魔化せるし」
「次はチーズの盛り合わせムチ。市場でいいのがたくさん買えたから、食べ比べてみてほしいムチ」
「うめーうめー」
「あ、この端っこのやつ、俺好きだわ」
「次は甘い菓子ムチ。なんとプチケーキむち!」
「久々の甘味だぜおい」
「結構腹もいっぱいだし、量もこれくらいで丁度いいかもな」
「次は果物ムチ。スライスしたりんごのハチミツがけムチよ」
「甘いものが続くねー」
「だいぶ腹が一杯になってきたな。最初は大丈夫かと思ったけど、これだけの料理が続くならあの量も頷けるわ」
「最後は焼き菓子ムチ。オーソドックスにクッキーを焼いたムチ。シメのコーヒーと一緒にどうぞムチ」
レンたちもこのタイミングでおかわり券を使ったムチね。二人共甘い物が大好きムチね。ムチちゃん覚えておくムチ。
「やっと終わりかー」
「いやー、美味かったわ」
「喰った喰った。ちょっと堅苦しかったけど、たまにはいいな」
「おそまつさまでしたムチ。今回のメニューで特に人気のあったものはレギュラーメニューにするから、あとで感想を聞きにいくムチ。レギュラーだとさすがにこの品質は出せないけど、そこはカンベンしてほしいムチな。ムチちゃんは片付けがあるので、失礼するムチ~」
みんなおいしそうに食べてくれたムチ。ムチちゃんうれしいムチ!
◇◇◇◇◇◇◇◇
「これは少々マズイな……」
「団長、あの料理がマズイって、頭か舌がおかしいんじゃないですか?」
「違うわ。料理自体は美味いんだ。いや、美味すぎる」
「安めの素材を使っただろうに、王宮で食べた料理と遜色ない味だった」
「こうも舌が肥えちまったら、遠征の時どうする?あのクソマズイ保存食──今、喰えるか?」
「あっ……」
「まあ、保存食もムチ坊が何とかしてくれるだろ。うまく行けば士気が上がるぞ」
「そうですね、料理部隊長殿の手腕に期待しましょう」
ムチちゃん聞いちゃったムチ。というか団長の声が大きいムチ。絶対ムチちゃんに仕事を積もうとしているムチ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
特別な料理は大好評すぎて他の騎士団にも伝わってしまったムチ。特別な日に「お客さん」がやってくるようになったムチ。
なんでも、ご褒美やマナーの練習にちょうどいいらしいムチ。その度に好き嫌いを調査したりするムチちゃんの身にもなってほしいムチ。
絶対、追加のお駄賃をもぎ取ってやるムチ!