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メシがまずいムチ!

「ムチー!」

「ぷんぷんムチー!」

「ぷりぷりぷームチー!!」


ムチちゃんの怒りが食堂にこだましたムチ。この怒りはだれにも止めることはできないムチ。


「どうしたの? ムチちゃん、すごい剣幕だね」

「ご飯がおいしくないムチー! メシがまずいムチー!」

「こんなことは許されないムチ──!」

「うるせえぞムチ坊、我慢して喰え! メシなんてこんなもんだろうが」


ぷつんっ


「こんなもの……こんなものムチか……」


団長に怒られちゃったけど、そんなことは関係ないムチ。

団長はムチちゃんの聖域を侵してしまったムチ。

これはぜったいのぜったいに許されないことムチ!


「団長!! 食は人生の要ムチ。これを疎かにしては、人は全うに生きられないムチ! ムチちゃんは騎士団の食生活の改善を強く要求するムチ!!」

「ほう、それだけの大口を叩くんだ、何か腹案があるんだろう?」

「もちろんムチ。手始めに明日の調理当番をムチちゃんにしてほしいムチ。同じ材料と調理時間で、ちゃんとしたメシってやつを食わせてやるムチ!」


その日は団長にタンカを切ったあと、しぶしぶまずいご飯を食べたムチ。まずいメシでは士気は上がらないムチ。ムチちゃん悲しいムチ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



一日たって、夕食の準備をする時間になったムチ。立会人として団長、配膳の助手としてレンとティアがいるムチ。


「さてムチ坊、あれだけ大口を叩いたんだ。今からできませんじゃ済まねえぞ」

「ムチフフフ……悪食に慣れてしまった団長たちの舌は、今日この日をもって生まれ変わるムチよ! 昨日はふかしたジャガイモと肉野菜のスープだったムチね。違いが分かるように、あえて同じメニューにするムチ」


さあ、調理開始ムチ!



◇◇◇◇◇◇◇◇



「おい、レン。ムチ坊の奴、手際よすぎねえか?」

「そりゃ調理上級持ちですから」

「アレ、フカシじゃなかったのかよ……」

「うわ、あれだけの芋の皮をもう全部剥きよった。それにしても凄い包丁さばきやなー」

「刃物を扱う技術はあるんだよ。力が伴わないだけで。それに、防御はホントすごいんだよ。ボクでも全然突破できないもん」

「ムチ坊の本気の防御となると、オレぐらいしか抜けんだろ」

「そんなすごい防御を持ってても攻撃はへなちょこ……難儀やなあ、ムチはん」

「あ、スープのほうもいい匂いがしてきた。そろそろできるみたいですね」



◇◇◇◇◇◇◇◇



食堂に人が集まってきたムチ。みんなこれまでと違う匂いに戸惑っているムチね。配膳をレンとティアに手伝ってもらい、全員揃ったところでいただきますムチ。


「ムチちゃん特製のマシなメシむち! 冷めないうちに早く食べてほしいムチ!」


いうや否や、みんな一斉に食べ始めたムチ。今のみんなは極上のえさを前にした野獣ムチ。舌なめずりどころかよだれが垂れているムチね。


「お、うめえ!」

「昨日と同じメニューなのに全然味が違うぞ」

「俺たちが今まで喰ってたものは一体なんだったんだ……」


ムチフフフ……評判は上々のようムチ。やっぱり食卓はニコニコしてないとダメむちね。


「団長、どうムチか? ムチちゃんのマシなメシ」


ムチちゃん、渾身のドヤムチ顔を決めるムチ。


「ああ、うめえよ。そばで見ていたが、特別な食材を使った様子もなかった。一体どんな魔法を使ったんだ?」

「難しいことは何もしていないムチよ。大量の料理を作るのはそれだけで難しいムチ。経験から得た正しい分量をちゃんと量って料理したムチ。火の通りを均一にするため、包丁で丁寧に素材の大きさを揃えたムチ。素材がおいしく食べられるよう、おいしくない部分を取り除いたり、面倒でも下処理をきちんとしたムチ。かまどの火力が一定になるよう火の番をまじめにしたムチ」


「成程なあ……基礎の積み重ねってやつかい」


団長は少しうつむいてから、


「よし、ムチ坊! お前は今日から調理部隊の隊長だ。ある程度のお駄賃はくれてやるから、俺たちの食卓を豊かにしろ!」


あれ、雑用の仕事増えてないムチか?


「ちょっと待つムチ。料理当番を全部押し付けようだなんて、そうはいかないムチよ。だいたい隊長といっても隊員はいるムチか?まさかムチちゃんの一人部隊じゃないムチよね?」

「大鉈ふるえるように権限をやろうってんだ。悪い話じゃねえだろ? まあ、細かいところは食後に詰めようや。今はメシだ、メシ!」


団長はムチちゃんの追求から逃れるようにご飯をかきこみ始めたムチ。ムチちゃん、自分の技術の安売りは絶対にしないムチよ!



◇◇◇◇◇◇◇◇



食後に行われた話し合いの結果、以下のことが決まったムチ。


一つ、調理部隊はムチちゃんが隊長をつとめ、隊員(作業員)については各分隊でローテーションすること。

一つ、隊長は食材の仕入れおよび料理の仕込みと指示を行うものとする。

一つ、メニューはムチちゃんに決定権があるものとする。但し、団員のリクエストは極力取り入れること。

一つ、食材は団長からのお駄賃でやりくりすること。お駄賃のおかわりについては、協議の結果に応じて認めるものとする。


ムチちゃんとしてはレシピの提供と仕込みの手伝いくらいを考えていたんだけど、思ったよりも大きな話になっちゃたムチ。でも、メニューの決定権は大きいムチ。憧れのトンカツ様も夢じゃないムチ!


乗りかかった船だし、いっちょ頑張るムチよ~

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