02.ごりごりコワモテの運転手の趣味は編み物らしい
前回のあらすじ!
怪しい組織が2つ出て来たぞ!
片方の組織には勧誘されて
もう片方の組織には殺されそうになったよ!
自分の人生の終わりを悟ったその時!
間一髪でタッキーが助けてくれた!
なんて優しくて強いんだ!
モブ「ありがとうございます。
その…来るの遅すぎません?」
顔色を伺いながら尋ねる
「いや元々おまえが06能力持ちって気づかれてた。
だからお前が入った瞬間にサッチャーの奴らが玄関を囲いやがったんだよ」
今気づいたがタツキの両手に紫色に光る炎がついてる。
マクロが言ってたように皆んな僕と同じで何かしら力を持っているんだ。
「熱くないんですか?それ.…」
自分の手を見て何食わぬ顔で答える
「熱くない。逆に冷たいぞ
俺には闇が宿ってる。
その闇を今拳に集中させてるんだ。
なんで炎なのかは分からんがな」
「これそのままでいいんですかね…」
周りの倒れているサッチャー達を見回す
「国に飼われている人間だ。
ロクな奴らじゃないさ」
そうだ。
この人達はさっき国が手を貸してると言っていた……
つまりそれは僕たちに希望がないってこと。
「おい早く出るぞここ」
タツキに急かされてこの治療室をあとにした。
部屋を出ると廊下のあちこちにサッチャーの係員らしき大人が倒れている。
「あの…警察にはいけないですよね…?」
恐る恐る聞いてみる
「いってもいいが事情聴取とか言われて奥に連れていかれるぞ。
そこで何分、何時間か待たされてカウンセラーに扮したサッチャーの係員が送られてくる。
その時点でアウトだ」
やっぱり希望はないんだ。
この人達はそんな国から逃れられて来たってことか…?
「今までずっとあのアジトに?」
この人歩くスピード早すぎ…
ついていきながら喋りかけるのにも一苦労。
「いや何週間か前に来たばかり。
そこでマクロがお前を見つけた。
でもこうやってサッチャーの支部を荒らしてしまってるからな…また違うところに行かないといけない」
そこにも僕は行くのだろうか?
義理とはいえどもちゃんと両親がいるのに…
でもこんな状態で家に帰ったら両親を危険な目に巻き込んでしまうかもしれない。
それは絶対に避けたい。
長い廊下を抜けると大きな広場に出た。
真ん中には大きな機械がたたずんでいる。
その周りには規格外のでかさのボルトやネジが落ちている。
「タッキー遅くなーい?手こずってた〜?w」
この甲高い声はコウさんだ…
このデカイボルトとかもコウさんがやったのか…?
「うるさい。コイツが捕まってたんだよ。
俺が行ってなかったらあともう少しでお腹に穴が空いてたぞ」
!?
…あの音は俺のお腹をエグるためのドリルか何かだったのか?
冗談じゃない…地面に倒れているアイツらには少し同情してたけど立場が逆転してたかもしれない…!
「こ、このでかいボルトとかってコウさんがやったんですか?」
コウさんはそのボルトを持ち上げる。
「呼び捨てでいいよ。
僕の力は指定した対象のサイズを意のままに操れるんだよ。
普段は小さい…それこそボルトとかナットとか
いざって時のために持ち歩いてる」
えーなんかかっこいいなぁ…
それに比べて"植物操る''ってちょっとダサくね?
「もののサイズは操れても自分の身長は操れないみたいだなw」
ちょうど思ってた事をタッキーが代弁
コウ「あれ体しか取り柄のない人がなんか言ってら」
モブ「フッ
不覚にも笑ってしまった…
タツキ「お?喧嘩?」
いや2対1でも負けるだろ。
この人は能力使わなくても素手で人殺せそう…
「おぉーい、早く帰ってこい」
どこからともなくさっきのオノさんの声がする。
「ほら行くぞ。
ジューダグは帰ったらセーターを編むらしいから
あまり待たせるな」
ジューダグって人は大人に見えたけど…
力は持ってないけど協力してくれる人か?
いや何よりも…
セーター編むってマ!?!?
あの見た目で!?
やっぱ人は見かけによらんわな…
そんな事を考えながら3人でバンに戻った。
バンにはすでに皆んな帰って来ていた。
マクロ「3人ともおつかれ〜…マジごめんモブ君!」
ほんとだよ
「いや大丈夫ですよ。
もう少しでお腹に穴空いてたけど」
皮肉を混ぜて答えて見た
「まさにアイツらがやりそうな実験だな」
マフラーを畳みながらオノさんが呟やいた
ジューダグ「早く乗りなタッキー、データ、…新人。
家の近くの手芸屋の毛糸が売り切れる」
3人ともバンに乗り込み、出発進行
「父さんと母さんになんて言おうか…」
この人達についていく以上、家にはいれない
「一人暮らしとか寮付き学校とかはどうかなぁ?
寮付きの学校は憧れだなぁ…
イケメンとルームメイトなったら…グヘヘ…」
もう二度と天然を名乗るな
「いや自分でなんでも決めれる年齢なら良いんだけど…あいにくまだ未成年なんだよねぇ」
未成年の嫌いなとこ
・何をするにも親の了承が必要
てかお前らも同い年だからな?
「なるほど!マクロ様さすがだなぁ…
ジャムがずっとこの車でお留守番してたのは
そのためなのね?」
ジャムは何かに気づいたようだ
マクロ「察しがいいねぇ。
無駄な戦いで体力消耗しても困るしね」
待ってまた仲間はずれ始まってるって!
モブ「また話が掴めません!
解説たのみます誰か」
ここは!と手を挙げたジャム
「あのね。僕の力は
"人に言うことを聞かせる"力なんだぁ」
ふーんなるほど
大体わかって来た
「だからメガホンマイクは必須アイテムだし
この力は連続して使いすぎると喉がカッスカッスに
なるんだよねぇ〜
だから頭のいいマクロ様は
僕をこの車にお留守番させたって話〜」
これまたチート能力きましたなぁ…
「その力を使って僕の両親を"説得"するわけですね」
うんうんと頷くジャム
「説得。は良い言い方だね
俺ならこう言う"服従"」
後ろで寝てたのか
急にプリンが会話に入ってきた
「"黙れ"」
ジャムの言葉は形となってジャムの口から出てきた
それは✖️印になりプリンの口に張り付いた。
「はぁもうやめてくれ。
なんのために車に残したか分かれよ」
まるで干支の猿と鳥と犬だな
いやプリンは猪か…?
アジトに着く頃には午後5時を回っていた
ジューダグ「その親を説得させに行くなら送るが?
どうするマクロ、ジャム、…新人」
誰かこの人に僕の名前教えてあげて?
マクロに押されたのもあり説得しに行くことになった
4人を乗せたバンは僕の家に向かっている
「本当にいいの?親に会えないかもだよ?」
マクロが心配してくれる
「いや、もともと両親は2人とも優しくて愛情たっぷり注いで育ててくれたけど…
いつまでもお世話になっていられないよ…
会えなくても電話はできるし」
肩身が狭かった。
それは虐待とかそんなのじゃなくて
両親はいい人だからこそこれ以上お世話になるのは
自分が許せなかった
高校には寮付きのところに行く予定だったし
まあもう高校に行くのは無理だろうけど…
「あの…両親には記憶を消すんですか?」
ジャムは顔をしかめて
「まさか!
君が全寮制の学校に通ってるっていう
記憶を埋め込むだけ」
それなら良かった…
ジューダグ
「さあ着いたぞ。さっさと済ませてこいよ
あまり暗くなると指に針を刺してしまうかもしれない」
バンを降りて3人で僕の家に向かう
僕の家は一軒家の二階建て
マクロ「うわなんか金持ち臭がする」
ジャム「書斎とかあったりする?」
早く中入るよと2人を急がすが
「あれ…ドア空いたまま…普段そんなことないの…
ーーーーッ!!!ーーーー
急いで中に飛び入りその光景にただ立ち尽くす
「あぁいやだよ…なんで…ッ」
そこらじゅう血だらけ
マクロ「うわぁ……先にやられてたか…」
ジャム「こんなのって…ないよ…」
リビングには父であっただろう遺体が横たわっている
襲われる前まで読んでいた雑誌は赤く染まっている
キッチンには母であろう遺体が床にひれ伏している
途中まで切られたキャベツにも血が付いている
「ジャムさん?…い…生き返れ…って言ったら
ワンチャン…ね?」
情けない震え声でたずねる
申し訳なさそうに頭を横に振るジャム
「生死に直接関わることは命令できない…」
くそ…くそくそくそ…
誰かを責めたい。
ここにきて両親を殺したであろう
あのイカれ科学者達を殺したい…
もうすぐ血臭さに通報を受けたのか
パトカーが音を立てて走ってきた
「モブ君…君の気持ちは計り知れない…
でも今はここを後にしよう…」
マクロの言う通りだが
なかなか足が動かない
それが両親を死なせてしまった悲しさからなのか
殺したやつへの怒りからなのか
それさえ分からずに混乱していた
結局その日はそこをあとにして
アジトに戻った