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霊感少女の助け舟  作者: 夜桜ルナ
2/2

曖昧女性への助け舟 (1)

「おはよう。春樹」

「おはよう」

結衣は少し眠そうながらもコーヒーを入れて言った

「なんかこう…簡単に依頼は来ないものか…」

「無理じゃないかな」

「君って結構辛辣だねぇ…あ、君もコーヒーいるかい?」

「別に普通だと思うけど…コーヒーはください」

「はいよ。砂糖はどれくらいかな?佐藤君…?」

「…え?」

「忘れてくれ。というか忘れろ」

結衣は顔を赤くしていた

「あ、はい」

春樹は(自分で言ってなんで顔赤くしてんだよ)と思いながらもグッとその言葉を飲み込んだ

「で、砂糖は?」

「2つ入れて欲しい」

「わかったよ」

そう言うとコーヒーに角砂糖を2ついれて春樹に渡した。

何の変哲もないのんびりとした朝のこと

唐突にノックが聞こえた

「すいませーん」

「おや?お客かな?」

結衣はおもむろに立ち上がり玄関へと向かい、それについて行くように春樹も立ち上がった

「はいはい」

玄関のドアを開けると、ドア前には20代前半に見える女性が立っていた

「あの…ここで死んだ人と会えると聞いたのですが…」

結衣は見ることは出来ても会わせるなどといったことは出来ない。なので結衣は少し申し訳なさそうに

「すまないね…私はあくまでも見えるだけで会わせたりといったことは出来ないんだ…」

すると女性は悲しそうに

「あぁ…そうなんですね…朝早くにごめんなさい…」

そんな女性を見て春樹は結衣の耳元に小声で言った

(会うことは出来なくても伝えることは出来るって言ったらどうです?あの女性の方もその方がいいでしょうし)

(あ、あぁ。それもそうだな)

「そのだな…会うことは出来ないが何かを伝えることは可能だ。それに私たちは〈助け舟〉だ。手助けできるならやらせてもらいたい。」

すると女性の顔が少し明るくなった

「本当ですか…?」

「本当さ。何か証明でもして見せようか?例えば今日のそこの男のパンツの柄でも…」

春樹はその言葉を聞いた瞬間に手で下半身を隠した

「何で証明しようとしてんの!?本当にやめて!?」

「冗談だよ」

結衣はクスクスと笑いながら女性との会話に戻った

「すまないね。変なところを見せて」

「いえ、大丈夫です。ですが霊が見えるのを少し証明してもらってもいいですか…?」

「あぁ、構わないよ。霊を見えるから信じろという方が難しいからな。」

そう言いながら結衣は何で証明するか少し考えた。

(春樹もいるからさすがにバックの中身とか下着の色はあれだよな…)

「よし、じゃあ住所を聞いても?」

「は、はい。分かりました」

女性は困惑しながらも住所を教えた。

この女性に警戒心は無いのだろうか。そんなことを思いながら結衣は近くにいた霊に住所を見せ、家具を覚えてもらった。

「それじゃぁ私はあなたの家の家具が何色でどこにあるかを当てて見せよう」

「…それは超能力の類では?」

「いや、霊に今あなたの家まで行って家具を覚えてもらった」

「あ…そうなんですね…」

女性は少し困惑しながら結衣を見ていた

あと若干引いていた

「それじゃあ証明して見せよう」

そう言うと結衣は女性の家具を全て当てて見せた

「凄い…全部あってます…!」

「だから言っただろう。私は〈見える〉と」

「え、えぇ…」

女性はまだすこし疑っていたがそれも少しの間だった。

そして女性か信じてくれたのを確認し、結衣は本題に入った

「さて、そろそろ依頼内容を聞いても?」

「あ、すいません…」

「いいんだ、とりあえず中に入ってくれ。玄関じゃ話しにくいだろう」

女性は少し遠慮しながらも中に入った

「コーヒーは好きかい?」

「あ、お構いなく!」

「いいから、ブラックと砂糖入りどれがいい?」

「じゃあ…ブラックをください」

「わかった。ブラックだね」

「あ、俺入れるよ。結衣は依頼の話をしてて」

「そうかい?ありがとう。悪いね」

春樹は女性のコーヒーを入れに行き、結衣は女性と依頼の話を始めた。

「2ヶ月前に…車に轢かれそうな私を庇って…親友が死んだんです…」

「ほう?庇って死んだ…それまた珍しい」

「珍しい…ですかね?」

「あぁ、珍しいよ。人間のほとんどは自分の命が1番だ。それなのに人を助けるために自分の命を投げ出すなんてそう出来ることじゃない。中には自分が助かるために親友を代わりにする奴もいるくらいだ」

―私はそうやって死んだ霊をいままでたくさん見てきたからね…

「そう…なんですね…」

「ところで君は助けられた訳だが、助けられたことをどう思っている?」

「どう思っている…?」

女性は質問の意図が分からないようで少し困ってしまった。その表情を見て結衣は言葉をつけ加えた

「どう思っているというのは、例えば助けてくれたことに感謝している。助けさせてしまったことを後悔しているとかだよ」

それを聞いて女性は10秒ほど考えて言った

「多分…後悔しているんだと思います…」

「多分…?それはどういうことだい?」

結衣はその曖昧な言葉に少しの苛立ちを覚えた

「その…後悔をしているんだとは思います…でも…」

「でも?でもなんだ。」

結衣は煮え切らない様子の女性にとうとう限界を向かえたのか、それとも女性の横にいる〈声が聞こえてるであろう親友と思しき霊〉の表情を見て限界を向かえたのか。どちらにせよ結衣は女性に言い放った

「なんだその曖昧なのは?そんなので霊に会いたいだの伝えたいだの言ってるのか?それは霊に失礼にも程がある。それくらい考えてきたらどうだ。霊に伝えるにしてもそれ相応の気持ちと態度があるんだよ!そんな曖昧な気持ちなら帰れ!親友の霊を馬鹿にしているのか!」

「あの…その………」

女性は結局何も言えず帰って行ったそれを見ていた春樹は終わったのを見計らい結衣に話しかけた

「結衣って霊に関しては厳しいよな。いや、厳しいというか霊に対して優しいというか。多分近くに親友の霊でもいたんでしょう?」

「…君は察しがいいな。その通りだよ、親友の霊にこれ以上彼女の曖昧な気持ちを見せたくなかった。それにどうやら彼女〈聞こえてる〉ようだったからね」

その言葉を聞いて春樹は驚いた様な表情を浮かべた

「え…!?結衣が霊にだけど優しい…!?」

「お前失礼にも程があるからな?クビか?クビがお望みか?そうか叶えてやろう」

結衣は真顔ながらも低い声で言ったので、いつもより威圧感があった

「じょ、冗談だって…それで〈聞こえてる〉ってどういうことだ?霊は声が聞こえないんだろ?」

「あぁ、基本的にはそうだ。だが例外はある。強い意志を持って死んだ場合、その願いが叶うことがあるんだ。例えば声の出せない少女が死んで、喋りたいと強く願えば稀に見えない人にも声が聞こえる霊が生まれる。」

他にも、と説明をしていく結衣に春樹はやっと気づいたように聞いた

「てことは…親友の人の霊は耳が聞こえなくて、聞きたい、聞こえるようになりたいと強く願ったから聞こえるってこと…!?」

「その可能性が高いな。だが本当に願いが叶うことは稀だ。きっとそれほどまでに聞きたいものがあったのだろう。」

春樹は少し身を乗り出し聞いた

「その聞きたいものって…?」

「憶測になるが…きっとそれは――――」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

その頃女性は家で考えていた。結衣に言われた事は間違ってはいないと女性の中で思っていたからだ。

(…曖昧なままだと親友に自分の本当の気持ちを伝えられずに終わっちゃう…でも…でも…!本当の気持ちなんてわかんないよ…!自分のせいで親友を失っちゃって…!自分の中でも整理出来なくて…!せめて会えればと思ったのに…!ねぇ…どうすればいいのかな…誰か…教えてよ…!)

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