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霊感少女の助け舟  作者: 夜桜ルナ
1/2

後悔少年への助け舟

―私は物心ついた時から霊が見えていた。

別に霊が見えるからと言って困ることはあまりない。強いて言うなら霊と話していると頭のおかしいやつと思われる事ぐらいだ。

まぁそういうわけで私の周りの人はどんどん離れていくわけだ。

だからよく霊と話していた。人がいないからな。意外と楽しいものだぞ?

人と違ってSNSで陰口叩いたりしないからな。

そんな感じで高校生になっていって現在17歳な訳だが、やはり生きていくためには働かなくてはならない。親がいないのでな。だが霊とばかり話してきたせいで人の感情がわからず面接で失敗しまくりだ。なんとか面接を突破しても変人扱いを受けてクビだ。それで私は思ったのだよ。バイトもなにも出来ないなら会社作ればいいじゃんと。それで私はこの霊感を使って死んだ人に対しての後悔などを助ける会社「助け舟」を作ったわけだ。おっと、高校生なのに会社って質問は野暮だぞ。色々したんだよ。まぁちょっとやり方があれだけどね。

「…で、私の身の上話はこんなものでいいか?依頼主さん」

「え、えぇ…大丈夫です」

「それにしても珍しいな、霊関係じゃなく私の身の上話を聞きたいという輩は」

「いえ…少し気になったもので…」

「まぁいい。それより依頼内容を聞かせてもらえるか?」

「あの…もう1つ質問してもいいですか?」

「ん?なんだい?」

「本当に幽霊が見えるんですか?」

「見えるとも。と言ってもわからんよな…よし、それじゃあ1つ証拠を見せよう」

「証拠…?」

「今から霊に君の秘密を聞く。当たってたら素直に当たってると言ってくれそれが証拠だ」

「わ…わかりました」

「それじゃあいくぞ?それじゃあ…」

「なぁ、そこの君。違う君だ。そうそう君だ。今こいつの見てるエロ本のタイトルを3つと冊数を見てきて教えてくれるか?そうか、助かる。ありがとうな。」

「なんてことを知ろうとしてるんですか!?」

「何って普通の男ならこれが秘密だろ。特に女に対してはな。」

「そりゃそうですけど…」

「ほうほう、タイトルはそれで、冊数はそれか、助かったよ。」

「で、分かりましたか?」

「お、潔いな君。そういうの嫌いじゃないぞ。ではではタイトルから隣の人妻と〇〇、幼なじみと✕‬✕×、近所の〇〇と××だな?そして冊数だが7冊持ってるな?それも3冊が押し入れで残り4冊がベッドの下だ。」

「…せ…正解…です」

「これで信じて貰えたかな?まだなら他のも…」

「分かりました!信じます!だからもうやめてください!」

「そうか、それじゃあ今度こそ依頼内容を聞いてもいいかい?」

「はい。その…2年前に妹が…麗奈が…父に殺されたんです」

「ほう…?父に…」

「それでその時に僕は何も出来なくて…その事を謝りたいんです。」

「すまないが、その話もう少し詳しく教えてくれるかい?」

「分かりました…」

3年前の夏、母が交通事故で亡くなったんです。不慮の事故でした。その日は酷い雨で、タイヤが滑ってぶつかったんです。運転手の人は悪くない。悪いのは天気です。でも父は母の死を受け入れられなかった。その日から父は酒に溺れ始めました。酔いが冷めると八つ当たりをするように物を投げ、僕たちを殴りました。近所の人も誰も助けてくれず、そのまま過ぎ去る日々。そんな辛い日々の中、ついに2年前の冬に、麗奈が逃げようとしたんです。

僕はその時怯えて逃げ出せず部屋の隅で縮こまっていました。

そしたら外で麗奈の叫び声がしたんです。麗奈は父に見つかって、殴られて、蹴られて、家の中に入れたかと思えば犯されて、僕はそれを部屋で見ることしか出来なかった。殴られるのが…怖くて。そして叫び声を聞いた人が通報をして父は警察に捕まりました。僕と麗奈は病院に運ばれて、しばらくして麗奈の死を伝えられました。父が殴った時に当たりどころが悪く、死んだと言われました。その時に僕は部屋で縮こまっていたことを後悔しました。殴られても、父を止めるべきだったと。唯一ずっと一緒に居てくれた、たった1人の大切な妹。そんな簡単なことに麗奈が死んだ後に気づいたんです。

「だから僕は麗奈を助けられなかったことを謝りたい…!無力で、弱虫で見殺しにして…本当にごめんって…!」

「そうか、ならそれは君自身が伝えるべきだと私は思う」

「伝えるって…どうやって伝えるんです…麗奈はもういないのに…」

「簡単さ…なんのために墓参りがあると思ってるんだ?」

「なんのために…?」

「本来はあの世に安心して行けるようにというものだが、それともうひとつ。本来霊は霊が見えない人の声が聞こえない。だが霊感のない人間でも墓参りなら霊に言葉を伝えることが出来るというものだ。」

「そうだったんですね…でも無理です…僕に妹の墓に行く権利なんて無いですよ…」

「墓に行く権利だと?そんなの誰が決めた」

「だって妹を見殺しにしたんですよ?そんなの墓参りに行ったところで麗奈は嫌がります…きっと麗奈は僕のことがもう嫌いなんですから…」

「お前…嫌がると誰が決めた!妹さんがお前のことが嫌いだと!?それはお前がただ自分の弱さを見ないための言い訳だろう!言わせてもらうが妹さんはお前のことを大好きだ!今でもお前の横にいる!それなのに嫌われている?それは自分を卑下してるんじゃない!妹さんの感情を代弁した訳でもない!ただのただの自分勝手な決めつけだ!お前は自分の口で!足で!墓まで行って手をついて謝れ!それがお前にできることだろう!?妹さんはもうお前に謝ることが出来ない!墓参りは人から霊へ伝えることは出来るが逆は無理だ!出来ても一言なんだぞ!?それなのに!それなのに!お前は!」

「妹が…横に…?僕のことを大好き…?見殺しにしてしまった僕を…?」

「そうだ!そう言ってるだろう!」

「そう…なんだ…横にいるんだね…麗奈…分かりました。墓参りに行きます。そして妹に自分の口で謝ります…!」

「そうか、なら早く行け。早いに越したことはない。君は妹さんを2年も待たせてるんだから…」

「っ!分かりました…!依頼料ここ置いときます…!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

墓…どこだっけ…たしかこの辺に…

「まさか墓を忘れたのか?」

「なんでここに!?」

「一応ついてきただけだよ。万が一妹さんとなんかあったら嫌だろう?」

「…そうですね。でもこれは僕がやるべき事なんです…あとは大丈夫です!」

「うん…その調子なら大丈夫そうだな。あとは頑張れよ…!」

「本当にありがとうございました!」

「あぁ…おっと、名刺を渡すのを忘れていた。締まらなくてすまないが貰っておいてくれ。」

「は…はい。」

会社助け舟社長:夏凪結衣

〒〇〇ー〇〇〇〇 東京都××市△△町×××ー〇〇

××××ー△△ー〇〇〇〇

「それでは今度こそさよならだ。妹さんにちゃんと伝えろよ」

「はい…!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「麗奈の墓…これか…」

(麗奈…本当にすまなかった…僕がもっと勇気を出していれば麗奈を助けられたかもしれない…僕は麗奈に嫌われていると理由をつけて僕自身の弱さから目を背けて墓参りに2年も来なかった…本当に…本当にすまなかった…謝ることしか出来ないけれど…僕は麗奈を大好きで…大切に思ってる…それだけは信じてくれ…今までずっと一緒に居てくれて…ありがとう…!)

(大丈夫だよ…お兄ちゃん…私もお兄ちゃんの事大好きだよ…!)

「今の声…麗奈…なのか?…最後に麗奈と話せて…良かった…ありがとう…!」

「…結局心配で遠くから見てしまったが…妹さんも成仏する前に一言とは…洒落たことするねぇ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

数日後

「すいませーん!」

「なんだ…?こんな朝早くに…依頼か…?ちょっと待ってろ!」


「どうしたんだこんな朝早くに…ってお前か。何の用だ?妹さんとは上手くいかなかったのか…?」

「いえ、おかげで麗奈に謝ることが出来ました。その節はありがとうございました」

「じゃあ何の用だ…?まだほかの依頼が…?」

「いえ…!僕も結衣さんの手伝いをさせてください!」

「ふふふ…!」

「な!何が面白いんですか!」

「いやいや…まさか手伝いとは思わなくてな…!」

「弟子でもなんでもいいです!結衣さんのお手伝いをさせてください!」

「あいにく弟子も手伝いもを取るつもりは無いんだ…すまないな」

「え…そんな…」

「ふふふふ…!冗談だよ!冗談!」

「からかわないでください!」

「わかったよ…それじゃあ名前と年齢を聞かせてもらえるかな?一応バイトとして雇う形にして貰うからね」

「はい!僕の名前は佐藤春樹です!年齢は17です!」

「同い年だったのか…てっきり年上かと思ってたよ…それなら敬語はいらない。話しにくいからな」

「えっと…わ…わかった!」

「よし、それじゃあ早速…よろしく頼むよ?」

「任せてくれ!」

「…君口調変わった?」

「そういうのは触れないでいい事なんだよ!」

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