仕事-クエスト-請負
「ゴホン。では、私受付のゲイルが改めてご説明致します」
ああ、先程の青年か。ゲイルという名だったのか。
「まずはCランクの仕事となります。ナトゥーラ洞窟の最奥地でアンノウンの討伐と治癒師の救出。これが主な内容となります」
「あの男達が請け負った仕事はなんだったんだ?」
確かにあの男、狼狽してたな。
「はい。ナトゥーラ洞窟の調査と魔物の討伐が仕事内容でした」
「それなら、Dランクの仕事だね」
そんなものか?
「あの洞窟にはレベルが低いスライムやコボルトくらいしかいないからね。彼もそう考えて請けたんだと思うよ」
聞いた感じだと、弱い魔物しかいないイメージだ。
「その治癒師ってのは、どんな子でした?」
「あれぇ? もしかして、何か下ごこ──痛ぁぁっ!」
あっ、ヘストがラルムに拳骨をお見舞いした。
「痛いなぁ! なんで殴るのさ!」
「変なことを言おうとした罰だよ。僕は同じ冒険者を助けに行くだけだ」
ヘスト、意外とそういうのは苦手なのか? 本気で怒ってるし。
「ほんと、ヘストは頭固い! そんなんじゃ、女の子にモテないよ!」
「別に構わないさ。僕は困っている人を助けたいだけだから」
異性にモテたい。というのが無いとは……ソッチの人なのか?
「そんなんだと、ボクもそういう類いと思われるから嫌なんだ!」
「そういう類いとは、どういうことだい?」
「とりあえず2人とも落ち着け」
このままだと厳罰とかありそうだぞ。
「僕は落ち着いているよ。ラルムが興奮しているだけだから」
「ボクだって冷静さ。ヘストが分からず屋なだけだよ」
はぁ、誰かなんとかしてくれ。
「レーヴェン様、ラルム様。ギルド法第四項です」
「「──っ!」」
ゲイルが発した言葉に2人の背筋がピーンと伸びた。何かあるな?
「わ、分かっているさ。僕達は仲良しだ。なあ、ラルム」
「そ、そうだね。ボク達はな、仲良しだよ」
ぎ、ぎこちない……。余程、あのギルド法第四項が怖いと見える。
「なあ、ゲイル。ギルド法第四項ってどういう内容なんだ?」
「はい、サガミハラ様。ギルド法第四項【ギルド内での仲間同士で争い事は禁ず。守られぬし時は一ヶ月の謹慎処分を申し付ける】です」
ああ、やっぱり。
「あ、争い事はしてないよ。ボク達は話し合いをしてるんだ」
「すみません。反省しています」
ああ、言い訳を重ねようとするラルムに素直に謝るヘスト。また喧嘩になるぞ。
「……ごめんなさい」
あれ? 素直に謝った。
「いえいえ。私は何も見ていませんので。それより先程の答えですが、名は分かりません。どなたかは分かりませんがパーティに組み込まれてましたね。多くのパーティがおりましたので詳しくは分かりせんが、見た感じでは自発的に付いて行った風には見えませんでした。先程お答えしたとおり、名も知りませんので、容姿しか答えられませんが宜しいでしょうか?」
自発的ではない。つまり無理矢理か。先程の件を見る限りだと有り得そうだ。どのパーティーに組み込まれたかは分からないが。
「それで、容姿はどんな感じでした?」
「はい。まず肩まで伸びる金髪に瞳の色は蒼色でした。背は低く白色の法衣という服装です」
俺が出会った少女と容姿や服装が似ている。もしかしたら、あの子かもしれない。
「分かりました。では、すぐに向かいます」
「よろしくお願いします。どうぞ、あなた方の旅路に幸あらんことを」
これは絶対に帰らなければならないな。俺達は一路、ナトゥーラ洞窟へ向かった。




