冒険者ギルド
占い師エヴェレットの館で自分が異世界転生をしたことを知って一夜が経った。
ちなみに俺はヘスト、ラルムの3人で宿屋に泊まり、3人部屋が宛がわれた。
「昨夜は楽しめましたか?」
某RPGの台詞みたいな事を言うな。男3人で何を楽しむんだ。
「昨日は寝かせてくれなくて~」
「「なにも無かった!」」
コイツ、俺達をからかって楽しんでやがる。
「それはそうと、サトルが助けた人はどうなったんだろうね」
そういえば、何処に行ったんだろう?
「初耳だ。どういう事だい?」
「あれ? ヘストは知らないんだっけ? サトルが女性をアブゥから守ったんだよ♪」
話に尾ひれが付いてるな。守ったというよりは逃げるための時間稼ぎをしただけだし、助けられたの俺だし。
「人助けか。その心意気は良いことだけど、もう少し実力も付けないといけないよ」
分かってるよ。俺だって逃げたかったよ。逃げられるなら。
「それはそうと、冒険者ギルドに行かない?」
「冒険者ギルド? ……なるほど、名案だね。行こうか」
冒険者ギルド? 名案? よく分からないが付いて行こう。
いきなり捕まる。って事は……無いだろう。
──────◆───────
冒険者ギルドは、街の西部地区中央に建てられている。
ギルドは大きく、屋内には受付カウンターが多くの設けられており、大体10くらいはあった。
「受付では仕事請負、状態確認、職業登録、その他諸々出来るんだ」
「へぇ~それは凄いな」
受付している人も大変だな。
「まずサトルの職業登録、状態確認。次に女性の情報を得る。だね」
「うん。丁度席も空いたようだし、行こうか」
2人に促される形で、受付カウンターの席に座った。
受付は女性かと思ったら、ひ弱そうな男性だった。いや、女性じゃなきゃダメって訳じゃないけど。
隣を見ると女性が受付しているから羨ま……いや、やめておこう。
「冒険者ギルドへようこそ。どのようなご用件でしょうか?」
「んとね、この人の冒険者登録と状態確認をお願いしたいんだけど」
ミラドは俺を指さして、受付の青年に告げる。
「分かりました。では、まず御名前と年齢をお願いします」
「名前と年齢ね。名前は佐神原 悟。年齢は16歳」
本当は22歳なんだけど、転生して若返ったらしいから。間違いともいえない。
「サガミハラ・サトル様、16歳……」
「ああ、そうそう。名字が佐神原で名前が悟ね」
言っておかないと悟という名字に間違われるからね。
「ああ、なるほど。では、サトル・サガミハラ様、16歳……これでお間違いはありませんか?」
「ああ、間違いない」
受付の青年は、「承知致しました」と答え、紙に俺の名前と年齢を記していく。パソコン無いから面倒な作業だな。
ということは登録完了まで時間を要す事になるわけだ。ああ、面倒臭い。
「登録が完了しましたので、状態確認の為、第三講室へお向かいください」
「へっ? もう終わり?」
本格的な登録は同時並行でやる感じなのか? いや、でもさっき登録は完了したって言ってたし……。
「さあ行くよ、サトル」
「あ、ああ……」
ホントに登録完了したのなら、早くない?
受付で案内された第三講室へ入ると老婆が待っていた。
「サトル・サガミハラ様ですかな?」
「あ、ああ。そうだ」
名前くらいなら、知ってて当然か。まあ、早いのは変わりないけど。
「さあ、ここに座りなされ。ああ、このバンドを着けて、の」
促された場所は病院のベッドのようなもの。そこに座ると、黒いリストバンドのようなものを渡される。
なんだろう、これ。とりあえず言われた通り、着けてみよう。
「着けましたの。では、確認しますの」
老婆が俺の手を握ると目を閉じた。婆さんと手を握る趣味は無いんだが……。
「…………」
「…………」
ホントに大丈夫なのだろうか? 起きてるよな。
「……終わりました、の」
「えっ? 終わり!?」
何も変化は──
名前:サトル・サガミハラ
職業:万能師
種族:人間族
LV:1
HP:30 MP:0
STR:6 DEX:4 VIT:3
AGI:3 MND:4 LUC:2
ページ2
剣:LV1 槍:LV1 斧:LV1 杖:LV1
短剣:LV1 弓:LV1 拳:LV1
火:LV1 水:LV1 風:LV1 地:LV1
氷:LV1 雷:LV1 光:LV1 闇:LV1
聖:LV1
自分の状態が俺の前に映像になって現れた。なんだ、この技術!?
それに職業がオールラウンダーってなんだ?
「オールラウンダー!?」
「まさか、こんな形で見ることになるなんて……」
なんだなんだ? 二人して驚いてるぞ? そんなに驚くものなのか?
「オールラウンダーとは珍しい、の。おぬし、この世界の者では無い、の?」
「えっ?」
何故分かった……。この婆さん、エスパーか? それとも占い師って奴か? それとも……。
「サトル。オールラウンダーっていうのは、遙か昔に現れて以降見た人が居ないくらい珍しいんだ」
「遙か昔に異世界から来た人間が居た。という伝承がありますのう」
なるほど。だから、俺が異世界から来たことが分かったのか。
「まあ、そんなわけで珍しい職業なんだ」
「それはそれとして毎回ここに来ないとステータスは見られないのは不便だな」
ゲームなら、ボタン一つで見れるのに。
「ああ、それなら大丈夫だよ。このバンドを触ると……」
名前:ラルム
職業:魔術師
種族:ハーフエルフ
LV:11
HP:190 MP:104
STR:5 DEX:14 VIT:10
AGI:9 MND:21 LUC:8
ページ2
杖:LV4
火:LV7 水:LV6 風:LV5 地:LV6
流石というか、レベルも俺と比べると断然高いし、ステータスも魔術師ならではのステータスだ。
「ところで種族のハーフエルフって事は人間とエルフの?」
「ん? そうだよ、ボクは人間族と耳長族の混血児だよ」
なるほどな。
「それは置いといて、こうやっていつでも表示出来るんだ」
「ということは、今回はいつでも確認を可能とするための登録ってわけか」
「あっ、それは違うよ。バンドには今のステータス情報が入ってるだけで、レベルアップしたらギルドへ状態確認しに来ないと更新されないからね」
バンドに情報がって、中世程度の文明で近代程度の技術が使われているとは……。よく分からん。
「状態確認も終わった。あとは君が助けたという女性について見つけないとね」
「ああ、そうだな」
危ない危ない。危うく忘れる所だった。




