占い師 エヴェレット
酒場から少し西の方へ歩いた所に占い師の館があった。見た感じ、大きめな家だが見た目は豪華というよりは質素な感じに見えた。
「ここが占い師 エヴェレットの館だよ」
「過去や未来を占ってくれて百発百中という有名な占い師なんだよ」
百発百中? なんか、胡散臭さが……。
「さあ、入ろう」
こちらの意志は無視なのね。仕方ない、覚悟を決めよう。
「ここはエヴェレット様の館でございます。申し訳ありませんが、ご予約はしておりますでしょうか?」
有名な占い師なら、予約しないと出来ないか。そりゃそうだ。
「すぐ終わるからさ、少しだけ割り込めない?」
「ダメです。規則なので」
断られたラルムはケチ! と文句を言っていた。ケチって……。
「当然だよ、ラルム。予約していた人達に失礼じゃないか。で、今予約するとどれくらい待ちますか?」
「少々お待ちを。……今からですと、そうですね……ざっと3ヶ月後となります」
さ、3ヶ月!?
「うーん、3ヶ月は難しいね。どうしよう」
「まあ、難しいなら仕方ないさ。これも運命ってやつだろうし」
このまま待ってても面倒だから、終わらせた方が良いだろうし。
『……ケルナー、そこの黒髪の方をお通しなさい』
「──っ! しかし、予約していた方に……」
突然、奥から女性の声が聞こえてきた。黒髪とは、俺のことだろう。ヘストとラルムは黒髪じゃないし。
『……ケルナー、私の言葉が聞けませんか?』
「……エヴェレット様のお言葉であれば」
なんかよく分からないが、占ってくれる……のか?
『黒髪の方、こちらへ』
「黒髪ってことは、サトルじゃないかな。ボクやヘストは黒髪じゃないから」
やっぱり俺か。仕方ない。諦めて行くとしよう。
奥へ進み、幕を上げて占い部屋? に着くとそこには1人の女性が座っていた。
見た目は、二十代後半のように見える。
「ようこそ。私がこの館の主 エヴェレットと申します」
「あ、ああ。佐神原 悟だ」
お互い自己紹介を交わす。まあ、社会人というか人としては当然だろう。
「サトル様、不躾で申し訳ありませんが、アナタはこの世界の方ではありませんね?」
「やっぱり、ここは俺がいた世界とは違う所か。今までの事から、そうだろうな。ということは薄々、気付いてたけど、まさかな」
俺の住んでた所にあんな化け物や鎧を着た人なんて見たことないし。最初は何かの仮装とも思ったけど、巨大な化け物に魔法使う人間がいれば、どんなに鈍感なやつでも気付く。
「アナタはこの世界とは違う文明の栄えた平和な世界。そこで命を落とした」
えっ!? 命を落としたって、俺は死んだのか?
ということは、ここは……地獄には見えないから天国か?
「アナタはこの世界 ニルバーナへ転生した者よ」
ニルバーナ? 聞いたことが無い。それと転生!? やっぱり異世界転生か。
「……マジっすか」
「ええ、マジ」
まさか小説の中であった異世界転生を自分が体験するなんて。ないわ……。
「自分の名前以外の事が知りたいんだけど。年齢を言ったら、驚いたからさ」
「ええ、そうね。アナタは転生前が22歳だったけど、転生後は16歳になってるわ」
俺が16歳……未成年じゃないか。
「それとこの世界では、15歳で成人になるから。それとお酒とかも成人になれば、飲めるわ」
まさか、酒臭いか!?
「あとは……そうね。特に言う事はないわ」
「あ、ありがとう……」
このエヴェレットという女、何者なんだ? それにいくつだかも気になる。いや、女性に年齢を聞くのは野暮か。止めておこう。
「19歳の占い師よ」
「ああ、そうか──って! アンタは心が読めるのか!?」
エスパーか何かか!
「顔に書いてるわ。コイツは何者なんだ。歳いくつだろう?ってね」
なんてこったい。そこまで分かりやすく顔に出ていたか。今後、気を付けよう。
とりあえず今の時点で分かったことは、
・この世界は俺が住んでた日本ではなく、それどころか地球でもなく、名前はニルバーナという異世界。
・俺は一度死に転生したこと。
・俺の年齢は16歳であること。
つまり、俺は若返り異世界転生した。
ということだ。俺の異世界冒険はこうして始まったのだった。




