城塞都市アルクス
草原から西へ歩いてくると高い壁が見えた。道中、ヘスト達に街の事を軽く聞いたが、アルクスの街は城塞都市と云われているらしい。名の通り、東西に壁が伸びきっていて、恐らくは壁は円状となっていて、中に街があり、栄えてるのだろう。
「物珍しそうに見てるけど、初めて来たの?」
「あ、ああ。そうだな」
そりゃそうだろ、お前らと出会う数分前に目覚めたんだから。
「じゃあ、とりあえず酒場へ行こう。そこで話をするよ」
酒場? 子供がそんなとこに行って大丈夫か? まあ、俺は大人だから心配ないが。
そういえば、あの少女は無事だろうか。
───────◆──────
「いらっしゃいませ!」
「三名で」
まだ昼だというのに、酒場【ムーランルージュ】には、多くの客が来ていた。酒場には、大半の客は酔っ払っているのか大騒ぎしていた。
ちなみに酒場は街の南部地区にある。
俺達は女性店員に案内される形で席に案内された。
席には、ヘストとラルムが俺の向かいの席に座り、俺とヘストが向かい合う形となった。
「とりあえずオルジス酒を三つ」
「オルジス酒を三つですね。かしこまりました。では、少々お待ち下さい」
女性店員は注文を請けると席から離れていった。
オルジス酒とは、一体?
「そういえば、サトルはいくつかな? 成人だとは思うけど」
「いくつとは、年齢のことか?」
「そうだね。ちなみにボクは15歳でヘストは、ボクの2歳上になるかな」
ミラドは15歳……で、ヘストはラルムの二つ上……ってことは、17歳くらいか?
「──って2人とも、まだ未成年じゃないか!」
「なに言ってるんだい。僕達は成人だよ。確かにラルムは成人に成り立てだけどね」
「まあ、確かに人間族に比べれば、ボクは子供かもしれないけどさ。もう十分大人だから」
何かがおかしい……。成人の規定が緩すぎる。確かに日本でも18歳で成人と定めるようになったが、飲酒や喫煙などは二十歳を越えてからと決まっている。
「ボクの予想だと、ヘストと同い年か一つ上くらいかな?」
「──いや、俺は22歳だ」
「「へっ?」」
年齢を答えたのにおかしな顔をされた。
「サトル、キミは冗談が上手いね♪ 人間族で20歳を越えた人っていうのは、ああいう人のことを言うんだよ?」
ラルムに指摘され、彼が指した方向を見ると、見た目は30代位のおっさんが酒を呑んでいた。
いくらなんでも年取りすぎだろ。
「すまん、冗談だ。ちょっと名前以外のことを忘れてな」
「それは大変じゃないか!?」
そこまで驚かなくても……。
「じゃあ、ちょっと占い師の所へ行こうよ。有名な占い師がこの街にいるし」
フォーチュンテラー? なんだ、それ。
「そうだね。彼のことを占って貰おう」
占う? ああ、フォーチュンテラーというのは、占い師のようなものか。
「オルジス酒三つです」
「あ、ああ。ありがとう」
ヘストが酒を持ってきた店員に礼を述べた。
「とりあえず、お酒も来たことだし乾杯しよっか」
俺達は酒が入ったガラスのコップを持つ。
「そうだね。では、この出会いに乾杯!!」
「「乾杯!!!」」
掛け声と共にコップをコツンと軽く当てると自分の許へコップを引き寄せ、酒を口に含んだ。
オレンジの風味があり、アルコールの度数が少し弱めな感じがする。カクテルみたいなものか。飲みやすく美味しい。
「そういえばオルジスとはなんなんだ?」
「オルジスを知らないの!? オルジスといえば、アルクスで有名な柑橘類でしょ」
「ラルム、彼は記憶が無いんだから知らないのも無理は無いよ」
記憶喪失って意外と便利だな。
「オルジスはこんな形で橙色の柑橘類だよ」
ラルムが手で形を表現していた。楕円形でオレンジ色。やっぱり、オレンジか。
「ありがとう。おかげで理解できた」
俺達は酒の他に軽めの食事を摂り、酒場を出ると占い師の許へ向かった。




