新たなる旅立ち~後編~
「くそっ……こんな事してる場合じゃねぇのに……フォルツァ、シャロン!!」
「随分とご機嫌ななめじゃないか、ティルド」
「い、いや……」
このパーティーはこういう感じなんだな。なんか、カカア天下って感じ。
「ティルドさん、おめでとうございます。またフォルツァさんと一緒にとして冒険が出来ますよ!」
「シャロン、すまねぇな。洞窟内に置いてきちまって」
「気にしないで下さい。あれは仕方ないです」
そこは怒っても良いと思うんだが。
「フォルツァ、シャロン。ありがとう」
「礼を言うなら、この人達に言いな。この人達が助けてくれなけりゃ、アンタも今頃は職無しのままだったよ」
確かに。俺達が行かなかったら、二人はミノタウロスに殺されていた。
「そうだな。あんた達、フォルツァ達を助けてくれてありがとな」
「いや、当然の事をしたまでさ」
「礼を言わなそうな人からありがとうなんて言葉が……明日天気大丈夫かな?」
ラルム……余計なことを。
「それもそうだな。だが、予想外の事とはいえ、ろくな説明もしてない俺も悪いからな」
「余裕が無いときはそういうときもある。後で謝れれば問題ない」
「……ありがとう。恩に着る」
やはり、なんか気色悪い。
「では、ティルド様。冒険者以外の職業での新規登録となりますが、宜しいでしょうか?」
「あ、ああ。そうそう、あんた達。また機会があれば、宜しくな」
意味深な言葉を残して奥に消えていった。
「さて、僕らも行こう」
「そうだね」
あれ? 何処へ行くのか?
「行ってしまうんですか?」
「寂しいなら、一緒にく──痛あっ!」
ラルムの頭にヘストの拳がクリーンヒット! いやぁ、お見事!
「ハーミンバードさん、僕らは東のラーディスルトへ向かう途中だったんだ。申し訳ないけど、ここでお別れだ」
「ててて……ヘスト、冷たくない? シャロンちゃん、寂しがってるのに」
いや、単に驚いてるだけだと思うけど。出会って間もないし。
「ラルム、キミは単にハーミンバードさんと一緒に居たいだけだろ」
「それの何が悪いんだよ!」
あっ、開き直ったな。コイツ。
「僕らと一緒に行くのはレベルの差がある。せめて二桁くらいはないと」
「そこは守りながら──」
「コホンッ」
いつの間にかネフィリムさん登場。
「ギルド法第……」
「さあ、行こう! ヘスト!」
「ん? ああ。またね、サトル。そしてハーミンバードさん」
ラルムは慌てながら、ヘストを連れて去って行った。
こうなるなら、喧嘩なんてしなきゃ良いのに。
「サトルさんは、これからどうするんですか?」
「えっ、俺?」
そういえば、知らない内に異世界に転生し、ここまで来たから忘れてたけど俺に目的も目標もない。唯一の目的である助けてくれた少女も、安全を確認出来た。
「改めて聞かれると何もないな」
「それなら、一緒に行きませんか?」
一緒に行く? 何処へ?
「私、ここから南にあるメルカトールに行こうと思ってるんですが、一人よりは誰かと行ければ寂しくも無いですし」
ああ、護衛みたいなものか。
「ああ、構わない。よろしく頼む」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
俺はふとしたきっかけで異世界へ転生し、一人の少女と出会った。その少女と俺は旅に出る事となった。何事もなく、無事に南にあるメルカトールという街へ着ければ良いけど……。